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読書履歴 1

私の人生に色濃く存在している作品、印象に残った作品を3作ずつ挙げていく。
小説、画集、教科書、雑誌など、本の形になっていれば対象とし、ジャンルを限定しない。




1. 蛇にピアス/金原ひとみ

本を読むのは好きだったが、文学というものは不真面目なことを書いていても根本が真面目な感じがして、加えて小難しい、よく分からないことしか書いてないもんだと思っていた。

そんな子供の私をぶん殴り、多大な影響を与えた作品である。

いま私の耳に複数のピアスホールがあり、うちいくつかが拡張されているのは間違いなくこの本の影響だ。
砕けた口語体で書かれ、危なくて、生々しくて、痛くて、気持ちよくて、苦しい。中沢ルイという名前が完璧すぎて困る。

初めて読んだ頃はシバさんよりアマの方が好きで、どう考えてもアマといる方がルイにとっていいし、シバさんの魅力とか全然わからないし、アマがいるのにシバさんとも関係を持つルイが理解できなかった。

今はちょっと意見が変わってきている。



2. アニマル・ロジック/山田詠美

文庫も出ているが単行本の装丁が好きでそちらを持っている。
国語辞典みたいに分厚く、ひときわ存在感を放つ本だ。
裏表紙が一面著者の写真になっていて、当時の私は子供ながら「自己顕示欲の強い人だな」なんて思っていた。

厳密にいえば当時の私の語彙に自己顕示欲なんて言葉はなかったので、「すげーしゃしゃってくんじゃん笑」あたりの感想だったと思う。

主人公はヤスミンという黒人女性で、語り部はヤスミンの中に棲む謎の生命体である。ヤスミンの自由奔放さや刹那的で快楽主義っぽい感じが読んでいて心地よく、ヤスミン周りの状況を身体の中から観察しあれこれとコメントしていく謎の生命体という構造が面白い。

謎の生命体は血液に乗って移動したりしているのでかなり小さな存在だと思われるが、どう考えても体長に見合わない知能を持っているし、喜怒哀楽や主義主張みたいなものも持っている。

人種差別の起こるシーンが度々描かれ、当事者たちが身を裂くような思いで気持ちを吐露し、悲しみ、怒り狂っている一方で、ヤスミンの中の生命体は不思議そうに「なんか大変なんだね」みたいな感じで傍観している。

視点も興味深く、登場人物たちの会話から差別の根深さを垣間見ることもできるが、そういう部分に関しての私はヤスミンの中の生命体に近い立場なのだろうなと思ったりする。



3. メイド イン ジャパン/黒田晶

高校の頃、図書室でこの本を見かけた友人が「あ、これうちらの小学校に置いてあったんだよ、ウケる」といって教えてくれた本である。
個人的には好きな本だが、小学校の図書室に置いてはダメな本です。

"Hi, kids! Do you like violence?"
ビデオレコーダーがかすかに軋みながら、ビデオを飲み込む。機械は自ら異物を自分の中に招き込む。他の存在を吸い取って、その動きはまるっきりてめえのマタグラに自分から突っ込もうとするslutみたいな感じで、おれたちの、突っ込んで吸い取られたい欲望にぴったり。

メイド イン ジャパン:p.5

EMINEMの引用から始まる全編横書きの本書は、日本語をベースにしつつ英語やその他ウエスタンカルチャーを織り交ぜて記述されている。

治安の悪いエログロにインモラルな日常。初っ端からスナッフビデオやペドフィリアの描写が続き、(私は平気だったが)人によっては読み進められないかもしれない。

当時は何か外国のスラングっぽいのが書いてあるくらいの認識で読んでいた箇所も、今見てみると治安の悪さにしっかり拍車をかけている。

全137ページとライトで"読みやすい"本といえるが、やはりどう考えても小学校の図書室に並んでいていい内容とは思えない。

18歳の頃だったか、本の最後にある著者の写真を見た当時の恋人が「分かんないけど、こいつヤバい感じするわ」と言っていたのを覚えている。
本の中身は読んでおらず、単純に写真を見た印象での話だ。

彼も比較的治安の悪い人ではあったので、何か通じ合うものでもあったのかもしれない。私にはそのヤバい感じは読み取れなかったが、この本を書くような人なのだから多少はヤバいんだろう。