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vol.35 3人のDNAを持つ赤ちゃん

「3人のDNAを持つ赤ちゃん、イギリスで初めて誕生」

最近、気になった記事のタイトルです。3人のDNAとは、どういうことなのでしょうか?

イギリスで生まれた赤ちゃんは、約99.%のDNAは両親のものですが、約0.1%、別の女性のDNAが含まれています。なぜ別の女性のDNAが含まれているのかというと、ミトコンドリア病から赤ちゃんを守るためです。

ミトコンドリアは、私たちが運動したり、食べ物を消化する時などに必要なエネルギーを作ります。 ミトコンドリアが機能しなかったら、失明や脳損傷、筋力低下、心疾患の原因となります。そしてミトコンドリアDNAは、母親からのみ、子供に受け継がれます。

この母親は、ミトコンドリアDNAに問題があり、母親からこのDNAを受け継いだ赤ちゃんは亡くなる可能性が高くなります。ミトコンドリア病は治療法がありません。唯一の手段として、別の女性から健康なミトコンドリアDNAを両親に提供し、赤ちゃんがそのDNAを受け継げば、ミトコンドリア病にかかりません。そのため、約0.1%の別の女性のDNAが必要でした。

3人のDNAを受け継ぐ赤ちゃんが生まれるのは、SFだけの世界だと思っていましたが、この技術は2016年から使われています。複数人から健康なDNAを受け継ぐということは、最強な赤ちゃんが生まれるってことですよね!夢があるな〜と思いつつ、今後この技術が一般的になったら、倫理的な問題に直面しそうです。誰が本当の親なのか、赤ちゃんの苗字はどうするのか、育児はどう分担するのかなど…。

《Shared Baby》赤ちゃんを親同士でシェア?

長谷川愛さんの《Shared Baby》は、これらの問題をテーマにした作品です。映像作品には、複数人が一人の赤ちゃんの親となったと仮定して、親権や子育てについて話し合っています。

長谷川愛 《シェアード・ベイビー》
(2011 / 2019)
ワークショップ、写真、プロダクトデザイン、ダイアグラム

また、短編小説「Shared Baby and Your Arm」は、《Shared Baby》の世界観を描いています。複数の親が一人の子供を育てる楽しさと辛さが書かれていますので、ぜひ読んでみてください。ここから読めます!
(情報処理 特集別刷『AIの遺電子』に学ぶ未来構想術」(2020 年 1 月号)

もし《Shared Baby》な世界観が当たり前になったら

もし、3人以上のDNAを掛け合わせた子供を産むことが当たり前の世界になったら、皆さんはどのように思いますか?

私は、仕事と育児の両立ができそうですし、育児について相談できる仲間がいるので、みんなで楽しく育児ができそうだなと思います。ただ、生まれてくる赤ちゃんが複数人の親のDNAを受け継ぐことになるので、親同士で「誰のDNAを何%子供に渡したいか」話し合いが永遠に続きそうです。

《Shared Baby》な世界観が一般的になったら、親同士でこのような会話が繰り広げられるかもしれません。

A:「私のこの黒髪ストレートヘアーの特徴は最高だから、子供に受け継いでほしい!」
B:「いや、僕の天パも可愛いから譲れない!」
C:「じゃあ間をとって、私の茶色のストレートを!」

そして、このようなやりとりがYahoo知恵袋で見れるのかもしれません!

質問者:
次、生まれる子供に私たち3人の親のいずれかの髪の毛の特徴を受け継いでほしいです。どれがいいと思いますか?

1. 黒髪ストレート 
2. 愛らしい天パ  
3. 茶色がかったストレート

回答:
君たち次第じゃん!

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もし、生まれてくる赤ちゃんのDNAを自由にデザインできる時代がきたら、「親」という役割をチームで行うことが当たり前になったら、皆さんはどのような生活を送ってみたいですか?


【参考】
Ai Hasegawa,「シェアード・ベイビー (2011) (2019)」, <https://aihasegawa.info/shared-baby>

BBC News Japan, 2023.05.10,「3人のDNAを持つ赤ちゃん、イギリスで初めて誕生」, <https://www.bbc.com/japanese/65541479>

技術書典14 オンラインマーケット, 2020.01, 「情報処理 特集別刷「『AIの遺電子』に学ぶ未来構想術」(2020 年 1 月号)」,<https://techbookfest.org/product/4838650827243520?productVariantID=4951389289578496>

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