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日本の神様の話。

 母方の人間が神棚に向かって祈るときの言葉を、現代語訳してみた話。

 母の実家は仏教の他に神道も信仰しており、神棚に参る時に周りの大人がいつも呪文のような言葉を並べていた。仏壇に向けて参るお経はパターンが多いが、神棚への音の羅列はひと種類だけだったことも覚えやすかった理由の一つだろう、幼い頃から一緒に音を並べているうちにいつの間にか覚えて、神社に赴いた時や神棚に詣るときは一人で心の中で唱えることもあった。このStayHome期間に不意に思い出して、あれは神々の名だろうかと検索をかけてみたがあまりスッキリしない。折角時間はあるので、ひとつずつ紐解いて行こうと思う。

1.覚えてる音

 まず記憶している音を並べてみる。

。。。

タカミムスビノオオカミ
カンミムスビノオオカミ
イザナギノオオカミ
イザナミノオオカミ
アマテラシマススメオオミカミ
ウブスナノオオカミ
トオツオヤ
サキツオヤ
ヨヨノオヤガミタチ
モモヤヨロズノ
アマツオオカミ
クニツオオカミト
オオミナハタタエマツリテ
オオアマテラシマススメオオミカミ
オオカミオオカミ
ミイツカガヤクトオトシヤ
オオカミオオカミ
ミイツカガヤクトオトシヤ

。。。

 まあまあ覚えてた。言葉ではなく音として覚えているせいか、字にするのに意外と時間がかかった。民謡の採集もこんな感じなんだろうか。頭の中のいつもは使わない部分を使った気がする。

2.音を紐解いていく

 神様の名前が多い気がするので、一体ずつ検索かけていこうと思う。できたらあとで振り返りたいし親戚にも共有したいので参考にしたページのリンクも貼っていく。

◯タカミムスビノオオカミ:高御産巣日神(タカミムスビノカミ)日本神話の中で二番目に生まれた男神様。高木の神格化らしく背が高く命を生み出す。↑このページ、神道とキリスト教との関連もあって面白い。

◯カンミムスビノオオカミ:神産巣日神(カミムスビノカミ)三番目に生まれた女神様。名前の意味は高く神聖な生成してやまぬ太陽、らしい。大地母神で創造の神。一番最初に生まれたアメノミナカヌシノカミ(天之御中主神)とタカミムスビとカンミムスビは合わせて造化三神と呼ばれすぐ消えちゃったらしい。

◯イザナギノオオカミ:伊邪那岐大神(イザナギノオオカミ)日本の土地を作った火の男神様。

◯イザナミノオオカミ:伊邪那美(イザナミ)日本の土地をイザナギと作った水の女神様。小学生の時まんが古事記読んで黄泉の国で過ごしてる姿が怖すぎて覚えてる。

◯アマテラシマススメオオミカミ:天照大御神(アマテラスオオミカミ) / 天照坐皇大御神(アマテラシマススメオオミカミ)割と有名な太陽の女神様。天の岩戸の話とか聞いたことあるひと多そう。イザナギが黄泉から帰ってきて左目を洗った時に生まれたらしい。そんな花粉症の時みたいな感じで神生まれるのね。ちなみに一緒に洗った右目と鼻からも神様生まれてる。

◯ウブスナノオオカミ:産土神(ウブスナノカミ)特定の誰か、と言う訳ではなく、その土地の神様、と言う意味らしい。

◯トオツオヤ:遠つ祖(トオツオヤ)先祖、祖先のこと。文章ぽいの始まった。

◯サキツオヤ:先つ祖(サキツオヤ)同じく先祖、祖先のこと。日本書紀からの言葉や読み方が多い気がしてきた。

◯ヨヨノオヤガミタチ:世世の親神たち。かな。

◯モモヤヨロズノ:百や万の。全然わかんなかったけど、閃いた。

◯アマツオオカミ:天津大神。高天原にいる神々、または高天原から天降った神々の総称。

◯クニツオオカミト:国津大神。地に現れた神々の総称。

◯オオミナハタタエマツリテ:大御名は湛たえ奉りて。かな。このページの言葉すごい参考になった。神事の祝詞なの?これ。のりと、だったのか。

◯オオアマテラシマススメオオミカミ:天照坐皇大御神(アマテラシマススメオオミカミ)まさかの太陽神二回目の登場。神事の時には天照大神をこう言う呼び方するらしい。

◯オオカミオオカミ:大神大神

◯ミイツカガヤクトオトシヤ:御稜威輝く尊しや。まさかの一発変換でミイツが出たんだが。御稜威(ミイツ)ってそんな今も生きてる言葉だったのか。神のご威光。

◯オオカミオオカミ:同上
◯ミイツカガヤクトオトシヤ:同上

3.ここまでの所感

 まず、なんで二番目から始まっとん…?調べてみると一番に生まれた神様はどうやら、アメノミナカヌシノカミ(天之御中主神)と言うらしい。まさに天界の中心人物なのになんで抜けてるんだろう。なんとなく生まれた神を順番に言ってるのかなって思ってたけど、要所要所の人たち、かなり絞られて名前呼ばれてることに気付いた。個人的には、神の名前以外の部分、トオツオヤ、サキツオヤ、とか、ミイツとかの意味が思ってた以上にスッキリ分かったことに震えた。神が天津神と国津神に属性分けられることも発見。これが多分祝詞(のりと)っていうものだってことにも改めて驚いた。口語訳してみようかな。

4.完成!カタカナと漢字と口語訳ならべてみよう

タカミムスビノオオカミ
カンミムスビノオオカミ
イザナギノオオカミ
イザナミノオオカミ
アマテラシマススメオオミカミ
ウブスナノオオカミ
トオツオヤ
サキツオヤ
ヨヨノオヤガミタチ
モモヤヨロズノ
アマツオオカミ
クニツオオカミト
オオミナハタタエマツリテ
オオアマテラシマススメオオミカミ
オオカミオオカミ
ミイツカガヤクトオトシヤ
オオカミオオカミ
ミイツカガヤクトオトシヤ

高御産巣日大神
神産巣日大神
伊邪那岐大神
伊邪那美大神
天照坐皇大御神
産土大神
遠つ祖
先つ祖
世世の親神達
百や万の
天津大神
国津大神と
大御名は湛たえ奉りて
大天照坐皇大御神
大神大神
御稜威輝く尊しや
大神大神
御稜威輝く尊しや

たかみむすびのおおかみ
かみみむすびのおおかみ
いざなぎのおおかみ
いざなみのおおかみ
あまてらしますすめおおみかみ
うぶすなのおおかみ
先祖
祖先
世世の親神達
数多の
天の神
地の神と
そしてその御名を称え奉る
おおあまてらしますすめおおみかみ
大いなる神々
その威光輝く尊さよ
大いなる神々
その威光輝く尊さよ

5.まとめ

 県北の山奥で伝わる神への祈りの言葉は、この世が誕生した折の創造の神、日本を作った神、そして太陽の神と、それに纏わる神々を崇め祀る祝詞でした。

 この口伝は、広島東照宮に務めたとされる曽祖父に端を発したのではないかと個人的には予測しています。そこまで我が家に古くから伝わるもの、と言うわけではないのではないかと。ずっと神職についていた家系というわけではないし。ちょっとそのあたりも検証してみたいです。

 現在祖父母は仏壇にはよく参っているものの神棚は家の最奥、客殿に設置されているため、そこに至るには段差も多く、高齢な二人はそこへ連日参っている、と言うわけではない様子。今この音と言葉を覚えていることも貴重なのかも。ここまで読んでくださって、ありがとうございました。



余談

 神楽を観るのは幼い頃から大好きで、特に八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の話を気に入っていた。八岐大蛇をスサノオノミコトが退治する話。スサノオノミコトはアマテラスオオミカミの弟で暴れん坊、と言うことしか知らなかったけど、イザナギが鼻を洗った時に生まれた神だという知識が今日加わわった。あとは紅葉狩りとかも好き。夜の神社は興奮する。あの空気と灯りがたまらない。寺とは違う神事の凛とした空気、人と神の境目が無くなる感じがぞくぞくする。

 宗教音楽と言う言葉がほぼほぼキリスト教のミサ曲や賛美歌などを指すように、日本古来の宗教音楽はあまり音楽として体を成していないような印象さえある。それでも、まだ仏教賛歌は多いかな。でも、神事の歌がないのはどうしてだろう。横の旋律があまりに多いからだろうか。間宮のエチュードlからは何故だか神事的な雰囲気を感じる。ミステリアス日本。これ、理解できたら音楽作る時に強みになりそう。

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