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俳句

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不定期更新の俳句作品です
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記事一覧

呪文、こはして

呪文、こはして

ぼくら幽霊的、息つぎが動画になる 

歌忘れてもつつじの風が感光する

つつじに僕らはじめから幽霊の器だ

ひかる耳鳴り薔薇の雨ならふえるだらう

銀光音楽からだで濾過されたことば

呪文、こはして ねむりすぎる茉莉花の夜も

煮えたつ遠さ

春は底ぬけみんなむらびと品川に
 ◎
鬱血の踵をもてば燕来る
紫木蓮こゑ出すときの喉濡れて
ほぼ夢の羽虫の浮かび肥る枇杷
やまひつつ茉莉花となり夜を過ごす
ねむたさの晴れてこはれた蛾の模様
 ◎
機器の熱浴び虻に漸近する僕ら
布を広げて五月は腹ばいで来るよ
ぶあつさを虹になれない攣る蹠
夏柳人に人凭るすごい速さ
あじさゐに木曽は煮えたつとほさして
上野からけはひの鳩も灼けてゐる
 ◎
帰る燕にうす

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花の諸相/擬く・ではない・象る

花の諸相/擬く・ではない・象る
青本瑞季

花位として薄い汽水の字は歌ふ
伸びる歯に花言のうつる虹びかり
木の退花塩のきらめく沼に浮き
花忘れ忌日ののちに張る皮膚も
蝋燭のこゑ花鹿のゐない橋
えれくとろにか千々の夜とて花構せよ

*

薄玻璃のふるへに亜木の保つ闇霧
火ざかりの夜を亜名に呼びかはす

*
俳句を書き、読む人にとっての共通の言葉としての季語。繰り返し使われて来たからこそ俳句におい

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藻のいつか

藻のいつか



藻のいつか

梅咲いて関節を私語するちから
花は首のうしろで睡る雛祭
灯の渦に君らがゐない花曇
花篝風の世水の世袖を振る
むなしくて布は瞼になりかはる
百千鳥光量があなたのうろで
こゑの層辛夷の空のみなみより
花はぬけがら楽器の方へ人は寄る
絶景は皮膚にあかるい水位まで
麦粒腫わたしが晴れる藻のいつか

麦粒腫…ばくりゅうしゅ。読みは「ものもらい」ではないです。
#俳句 #作品  

光る花期――Inspired by 長谷川白紙

光る花期――Inspired by 長谷川白紙

光る花期――Inspired from 長谷川白紙

青本瑞季            

長谷川白紙「ユニ」
鬼籍せず月日ぷらちなして冬は

長谷川白紙『エアにに』「ニュートラル」
繭しては裡へむかしの燃えつもる

花譜「蕾に雷」
銀光の花期を感電する皮膚は

長谷川白紙『夢の骨が襲いかかる‼︎』「シー・チェンジ」
somewhere nice,sometime,痛む潮が聞こえたら

長谷川白紙『

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白い嵐が明けて

白い嵐が明けて

白いあらしが明けて

青本瑞季   

花の世を水面うつしに撮り古す

虻の野へ臓器を淡くともだちも

かがやきの歯の輪をすれて訃はめぐる

潮の部屋白いあらしに手が満ちて

踵から鳥の季は明く水喩抄
#俳句 #作品

light like ghost

light like ghost

野に肺は白磁の波を吹きさらす
息だつた虹を着流す千々の花樹
のすたるじあ出会ふといかづちは燃えて
薄墨に吹かれて玻璃のみやこへ帆
light like ghost うたごゑかよふ玻璃と玻璃
身は莢で蚊帳のむかしはうつろして
夢の雹からだを深くぷらずまし
蹄して雨の鏡へ連れもどす

*

2句目と4句目の初出は好書好日のこの記事になります(https://book.asahi.com/article

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花樹に憑くこゑ

花樹に憑くこゑ

骨を鳴らして四月は淡い火をもらふ
眩み聞こえる暦の遺児へ沸く花が
恍雨ほら、踵は芽ばえなくて熱い
遠く木を燃やして映絵が歌ふ
血はあばら満たして花樹に憑くこゑの
春は鳥らに銀の水域、胸をひらく