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被災地のサプライチェーン

今回は被災地でボランティアをしていた時にモノの供給に課題を感じていましたので、何かの参考になればと思い記載します。

専門家ではありませんが被災地がどのような状況になるのかイメージだけでも持って貰えると支援の助けになると思っています。

阪神大震災の経験


私が神戸の大学に通っている時に阪神大震災が発生しました。その時は運良く練習船に乗っていたので特に怪我などもありませんでした。その練習船から大学周辺へ支援物資を輸送するなどの支援活動を行いました。
1月の震災だったため早い段階で船からの温かい食事の提供に、被災者の方達から感謝をされたのが記憶に残っています。

大学は目の前の高速道路が横倒しになった場所に位置していました。よくテレビでも取り上げられていた場所です。大学は岸壁を持っていましたが、この港周辺の施設は完全に破壊され使用不能になりましたので、練習船からの物資輸送は着岸せず沖から救命艇で運びました。壊れた岸壁の隙間に人がよじ登れる場所を見つけ、そこから物資をバケツリレーで運搬しました。

幸いにも大学の主な建物や体育館、寮には大きな被害はありませんでした。大学の周辺は倒壊・被災した家屋が多かったため、大学の体育館や寮の食堂などが周辺住民の避難所になリました。

学校も当面休校となったため練習船の実習が終わるとそのまま大学でボランティア活動に従事した経験があります。

その後、大学の場所は大阪からの道路復旧が1番早かったため、支援物資の最初の受入れ場所になったり、各復興関連工事の拠点にもなり、支援の物流を目の前で見ていました。

被災初期


まず全てが不足し混乱します。電気、水道、ガス、通信、道路、鉄道が使えません。携帯も基地局自体が壊れたり、電源喪失で使えなくなります。そのため情報も思うように集められないことが多いでしょう。インフラが無いと思うように情報もモノも供給は出来ません。

どこに避難所があるのか、それぞれに何人いるのか、それぞれどういう状況なのかも1ヶ月程度は正確に把握できません。状況を把握する自治体の職員も被災していますし、事務所もまともに使えないからです。

また報道で毛布が足りないと流れると、全国から山のように大量の毛布が届きます。野菜が欲しいとインタビューが出ると、野菜が避難所に積み上がります。不足するモノは不足し、過剰なモノは更に過剰になる状態です。生産管理の経験者はどこかで経験した事のある事象でしょう。それが全くコントロールできずにプッシュ方式で流れ込んで来ます。

ところが受け入れた後に配布が出来ません。避難所は多数設置されているので、別の車両に積んで各避難所に向かってもそのまま帰って来る車ばかりです。これは道路が寸断されている為です。それも道路が昨日まで使えたのに、新たに家屋が倒壊して道路が使えなくなったり、電線が垂れ下がり通行止めになったり、橋の強度不足が判明したりと刻一刻と状況が変化します。

避難所の人数も日々変わっていきます。生活出来ないと判断したり別の避難所の方が快適という話を聞くと移動していくのです。寝る場所が狭い、食料や水が足りない、トイレが使えないとなれば当然、何とかしようとする人が多数出てくるのです。

そうなるとモノがより滞留し、最後は外に保管せざるを得なくなったりします。食べ物だと残念ながら廃棄量が増えていきます。玉子や野菜などのナマモノを送ってくれる方が全国には多数いらっしゃるのですが、滞留することを想定して保存食が最初は安全な訳です。

必要なものを整理できませんし、それを要求するのも、供給するのも難しいのが初期段階です。

初期の供給物


初期の供給に必要なものを整理します。もちろんこれ以外にも多数物資が必要ですが最低限必要ではないかと思うものです。冬場を想定していますし、単なるイメージとして捉えて下さい。

  1. 毛布

  2. 暖房、燃料

  3. 保存食料

  4. 食料(カンパン、パン、弁当)

  5. トイレ

  6. 照明

  7. 簡易トイレ

被災中期


まずは電気が1番早く復旧します。地下に埋められた水道、ガス、下水はその後です。道路も主要な所、被害の少ない所から順番に開通していきます。道路は橋、高架の復旧には特に時間が掛かります。

ここからは避難所や輸送路がある程度、安定してきて支援物資も安定して供給されるようになります。ここで必要になってくるのはマンパワーです。被災者も自ら参加しますが人が不足しますのでここでの支援は有効だと個人的に思っています。

例えば水道が使えませんので水は全てタンクやペットボトルを何十も毎日運ぶ必要があります。食料についても同じです。これは、かなりの労力です。これも水タンクが設定されるまでの辛抱になります。

そして、ここで無理をする被災者もいます。家族も家も全て失う人は少なくありません。自暴自棄になる人も多いですが、前向きに避難所の運営に関わってくれる人もいます。しかし喪失感を埋めるために無理してしまい、過労で倒れてしまう人もいます。いきいきと頑張っているように見えて夜中に1人で泣いているなんて事もあります。こういう方は戦力としてはかなり貴重なのですが、頼り過ぎないようにケアをしながらの対応が必要でしょう。

そして仮設住宅も供給され始めます。
最初は抽選で争奪戦です。皆さんプライバシーの無い避難所を早く出たいと思うからです。これも災害対策で準備をしている自治体も多いので早目に供給されるでしょう。とは言え簡易なものです。長期で過ごすと不満は色々出てきます。壁が薄く防音性が低い、夏場の冷房の効きが悪い、狭い、グラウンドや公園に密集しての生活ですので、生活の再建をしたいと思うようになります。

最後の復興期にはサプライチェーンの課題は解消していると思いますので、状況の解説はここまでにしたいと思います。

サプライチェーンは何をすべきか?


以上の通り被災後にどのような状況になるのか説明しましたが、救援物資の所要量と供給場所特定出来ないので供給が難しいのです。ただ人口は把握できているので、必要なモノと量はある程度試算できる筈です。

この計画を元にプッシュ方式で送り込むしかありません。供給は予定通り出来ないことを想定して供給できる最前線の場所でのストック方法も検討すべきでしょう。1番良いのはコンテナではないかなと思います。これも走行できるのか、クレーンが使えるかなどの課題もありますので、簡易のテントハウスも良いかもしれません。これらも準備しておくべきでしょう。

またこれの指揮系統も事前に決めておくべきです。被災した自治体には基本的にこれをコントロール出来ない状況に陥ります。外部の機関が一時的にイニシアチブを取り供給計画と調整をする事で安定的な避難所運営が出来る筈です。

もちろん既に実施されてる所もあると思いますが、物流関係者に被災地がどの様な状況になるのか、課題や解決策は何かを予め共有しておく事は大切ではないかと考えました。

また企業のBCPにも応用できると考えています。各事業所が被災してから考えるのではなく、あらかじめ、ここが被災したら?とシミュレーションをしておくべきでしょう。迅速に供給すべきもの、ストックしておくべきもの、そしてストックする場所など検討事項はいくらでもあります。社員と事業を守るために事前に準備すべきことは何か考え直す良い機会だと考えています。

是非こちらのアイデアにコメントやアドバイスを頂ければと思います。

以上、今回はここまで。
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