物流の領域
今回は物流の領域について整理していきます。
物流の改善が求められる際、気になる点だけを指摘され、一律の見当違いな対策が始まり、軌道修正に時間と労力を使ってしまうことがあります。
そうならないために、物流の領域を理解して適切な対策が早期に打てるようにして貰えればと思います。
物流の領域とは
物流の領域とは以下のものです。
調達物流
生産物流
販売物流
この他にも回収物流やリサイクル物流などもありますが、今回は上記3つに絞り詳細を見ていきます。
なぜ領域を分けるのか?
物流と言っても、その領域で様々な機能や特徴があります。重視しないといけないポイントが大きく違います。
ポイントが異なる物流を同時に考え、同じ対策を実施するとオペレーションが混乱してしまう可能性が非常に高いです。
例えば、費用削減のために国内トラック全てを無理に統一して、海外向けの貨物もトラックを変更してしまうと、空港や港での接続が悪化して、納期遅延やそれによる追加請求が発生したりします。費用削減が目標だったのに、遅延で売上を落として、結果的に損益が悪化するなんて事も残念ながらよくあります。
以下の表を見てください。
各物流領域では基準となるオーダーが違うのです。これをひとまとめにするのは無理があります。
調達物流
生産の最初の工程の物流です。時には受注より先行して始まります。
調達物流のトリガーになるのはPO(Purchase Order=注文書)です。サプライヤーとの契約により、物の流れが決まります。
主な目的は買った物を集める事です。サプライヤーの拠点が広範囲になり、POとインボイスはn:nの関係になるなど、出荷管理が難しくなる特徴があります。
通常は安全在庫や標準手持ちがあり、そこへの補充が一般的で納期については販売物流と比べ緩やかです。そのため出来る限りまとめて低コストでの輸送が望まれます。
一方で在庫欠品になると工場のラインストップのリスクで超緊急対応というケースもあります。
生産物流
生産物流のトリガーはMES(Manufacturing Execution System)からやってきます。主な目的はある工程が完了した製品を、次の工程に送り届ける事です。製造工程に合わせての輸送になります。
そのため安定生産されているモノであれば、その他の領域に比べ、物流計画が立て易い特徴があります。とは言え生産トラブルにより緊急対応は少なからず発生はします。
また製造拠点が集約されている場合が多く、輸送費圧縮のためのミルクラン、定期便がよく活用されます。
積み合わせ、ルート、時間設定をどうするかがこの生産物流での議論のポイントになります。
販売物流
販売物流の主な目的は販売した製品を納入する事です。
トリガーは調達物流と同じくPOですが、受注者として立場的に不利になり、思い通りに輸送出来ないケースが多いです。
また納期がもっとも重視される物流です。これは顧客との契約義務があるからです。契約によっては納期遅延による求償もあり得ます。更に販売機会自体を損失するリスクもあります。
そのため物流費の抑制よりも、売上維持や利益の最大化に重点が置かれます。営業部門との密な連携が重要になります。
まとめ
領域によってポイントが大きく変わるという事がご理解頂けたでしょうか?
物流の将棋盤で言うと、相手の陣形が大きく変わるので、打ち手をそれぞれ変えていかないといけません。将棋盤がそれぞれ違うのです。
物流の改善を行う時は、この領域を分けて実施する事をお勧めします。
こちらの記事もご参照ください。
以上、今回はここまで。
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