物流は買い物ではない
今回は物流購買について整理していきたいと思います。
荷主から見た物流(今回は輸送)は購買としての側面があります。
輸送自体を荷主自身が行うことは非常に稀で、基本的には輸送業者に委託する事になります。この時には契約を結び、注文書、依頼書などを発行し依頼します。
輸送は依頼項目が他の購買とは異なりますが、荷主の仕事としては購買プロセスと変わりありません。
そこで輸送の特性を理解し購買との違いを解説します。
物流の集中購買
プロジェクトからコストダウンの要請がやってくると、必ず集中購買の話が上がってきます。たくさん発注すればボリューム・ディスカウントが得られるという購買部門の一般的な発想です。モノを買うのであれば、その通りですが物流(輸送)の多くは、そういう訳にはいきません。
それはなぜか?詳しく解説していきます。
輸送はインフラ
輸送はインフラと捉える事ができます。
品質マネジメントシステム JIS Q9100でも輸送はインフラと定義されています。
陸上であれば道路がインフラですが、海や空は?
海と空には整備された道は存在しないので船や飛行機がそれに相当します。あと鉄道は線路と車両がセットの輸送システムですのでインフラのイメージが強いですね。
鉄道がシステムであれば、トラックも道路とセットの輸送システムと解釈できます。
つまり輸送は全てインフラと言えます。
前項ではインフラの集中購買をしようと言ってる訳です。
集中購買の話があると私は必ず
「それなら出張も集中購買でもします?JRしか出張に使わないとか。ローカルのバスとか地下鉄は集中購買にならないから使用禁止です。もちろんタクシーもです。」と返します。
これだと誰でも集中購買が無理だとイメージしやすいですよね。
JRに集中購買なら飛行機も使えなくなります。仮に旅行代理店を選べば飛行機、新幹線、ホテルは1社にまとめられるかもしれないですが、バスや地下鉄、タクシーは不可能です。
輸送の地域性
輸送業者は各国、各地域で活動していて、どうしても得意、不得意な場所があります。世界の大手であっても地球の全ての地域で競争力がある会社は存在しません。
船や飛行機はアライアンスを組んで、世界中の港や空港をカバーしようとしますが、港と港の間だけの話であって、その前後の輸送を考えると、やはり100%にはなりません。
更に運べるものにも各社の個性が出ます。設備投資の差です。
その地域で小さいものは運べても、大きいものは不可能だったりします。大型だと設備投資が大きくなりますし汎用性も落ちるので、その地域の大型輸送の仕事を一定量、持っていないと維持できません。
小さいものであればどの会社でも運べそうですが、集配施設を用意して集荷能力が高くないと価格競争で負けてしまい現実的には事業が出来ないのです。
こういった背景もあり輸送業者は地域性が強くなる構造にあります。
輸送はネットワーク
国内でもグローバルでも各地域の最適な輸送業者を組み合わせて運ぶしかないという事になります。
見方を変えると輸送はネットワークで最短、最小コストで運べる物流パートナーとルートを選択していく作業と言えます。
更に考慮すべき事項として、インフラが使えなくなる場合も必ず発生します。災害や事故、政治的な問題などでこれまでの最短ルートが使えなければ迅速に迂回していく必要も出てきます。ルートは1つではダメで、ネットワークの柔軟性も求められる訳です。
今あるインフラ、ネットワークをうまく組み合わせ、時には組み換えて活用するしか方法はありません。その中で入札や契約等でコストダウンを図るしかないのです。
大手フォワーダーならある程度対応は出来るでしょうが、実際にはクーリエや郵便なども組み合わせになるのでやはり100%は難しいでしょうし、フォワーダーへの一括委託も細かく価格を見ると高いエリアも出てきます。
輸送はオペレーション
もう一つの輸送に求められる要素としてオペレーション性です。
将棋の駒でイメージすると、目的地に向けてそれぞれの特徴のある駒を配置して進める作業です。
集中購買を駒で例えると全ての駒を安い「歩兵」で統一すると言った所でしょうか。これだと横への移動は一切出来なくなり物流の戦略性は著しく低下します。
その時の状況によって適材・適所の駒を配置しないと事業では勝てません。
まとめ
これまでの内容をまとめると
輸送は購買の一部ではありますが
地域性があり一つでは成り立たない
ネットワークである
オペレーション性があり戦略的運用が求められる
と結論づけられます。
もちろん地域や種類を分類しての戦略的な集中購買は必要でしょうが、単なる買い物という発想を持っているなら、一度見直すきっかけになればと思います。
逆に輸送業者の方であれば荷主側では買い物意識を持っている人が一定数いると認識しておいた方ががいいでしょう。
物流は状況に合わせ、戦略的に、柔軟かつ迅速に対応する事で、円滑な調達活動や生産サポート、販売サポートが出来ます。安易なコストダウンだけを考えるのではなく、事業発展のために物流がどのようにサポートしていくのかを議論しながら、最適な費用低減を検討することをオススメします。
以上、今回はここまで。
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