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ざっくり学ぶ、在庫管理のきほん

今回は在庫管理について話したいと思います。

物流業者で倉庫で保管はしているけど、荷主の在庫管理まで行っている会社は少なく、何をしているのかよく分からない方も多いと思います。

物の流れをどうするかに関わる内容で、この上流で何が行われているか分かれば、物流のサービス・レベルを格段に上げられると思います。

それでは在庫管理には、どのようなものか確認していきたいと思います。

在庫管理とは


在庫には3つの種類があります。
・原材料在庫(調達物流)
・仕掛在庫(生産物流)
・製品在庫(販売物流)

物流の領域で説明した領域別に対応した在庫です。
製品によって持つべき在庫が異なります。受注生産方式なら製品在庫はゼロです。生産設備を決して止められない製品であれば、原材料在庫をより多く持つ事になります。

在庫管理は、これらの在庫を管理していく業務です。
在庫管理と聞くと保管を管理していると思っている方もいるかも知れませんが、そうではありません。

在庫管理は
・どれだけ使い(出庫数)
・どれだけ持っているから(在庫数)
・どれだけ入れるか(入庫数)

を把握する仕事です。
資材整備業務とも呼ばれます。

現状から入庫数を計画し、それを手配(購入と納入)をするのが主な目的です。

在庫レベル


安定供給を考えるならば単純に在庫を厚く持てばいいのですが、簡単な話ではありません。在庫を持つにはお金が掛かります。たくさん在庫を持てばそれだけ購入費用が発生する訳です。購入費用だけでなく、保管費用も付随して発生します。製品が売れ残ると在庫分だけ損害になり事業リスクになります。

これを回避するためジャスト・イン・タイム(JIT)、カンバン方式など様々な手法で在庫を減らす努力がされています。このマインドを促すためか「在庫は悪」としつこく言われています。

しかし、この言葉を信じて、在庫を減らし、逆に損害を出す企業は少なくありません。

在庫レベルは以下の図のように推移します。

在庫線

倉庫に納入がされると一旦在庫数は増えますが徐々に減り、減り切ったところで次の納入が入るので在庫線は工場の三角屋根のような線を描きます。

この在庫線がゼロになってしまうと供給が出来なくなります。原材料、仕掛在庫であれば工場の生産ラインへの供給が途絶え、生産が停止してしまう訳です。

工場で働く多くの人達の仕事が突然なくなります。高額な設備も休ませてしまいます。その損害額は計り知れません。

また製品在庫を減らして販売機会を逃したり、顧客との契約を守れず求償を受ける、というのもよくある話です。

そのため安全在庫を設定してレベル管理する事になります。図は以下の通りです。

安全在庫ありの在庫線

この場合は安全在庫2個が常に保たれます。1ヶ月単位の納入だとすれば次の納入遅延は半月以内であれば許容されます。もちろん納入だけでなく搬出が急に増える場合もありますが、この安全在庫線を維持するようにモノの流れが作られていく訳です。

在庫線が緩やかに落ちていくのであれば、製品生産終了のために計画的に在庫を減らしているのかも知れません。逆に在庫線が急に増えているのに、搬出が少ないのであればトラブルか、手配をミスしている可能性があります。

在庫レベルで荷主の事業状況の予想が出来る筈です。

安全在庫


では安全在庫はどの様に設定されるのでしょうか?
これは事業や在庫の種類により異なりますがサンプルとして挙げると
・不良品率
・納期遅延率
・出荷数の振れ幅率

などを補う数量を安全在庫として保管しておく考え方で設定されます。

また一般的な在庫理論だと
出荷数の実績から標準偏差を算出し
正規分布等で何%の確率に該当する範囲に
数学的に在庫数を設定する方法もあります。

しかしながら、どれも過去実績に頼る方法が多いので、突発的なトラブルがあると在庫過剰と不足で苦戦をします。

私が個人的に妥当では無いかと考えるのは、供給遮断時の供給維持期間分だけ在庫を持つ方法です。

例えば、海外から調達する原材料在庫で、トラブル時、サプライヤーと調整して航空便でリカバリー出来るのが、おおよそ1か月であれば、維持期間を1か月と設定して、1か月の安全在庫を持てば良いという考え方です。

棚卸


在庫については決算の賃借対照表に反映されます。在庫数が間違っていると決算が狂ってしまいます。上場企業であれば、投資家に誤った投資情報を提供してしまい、社会への影響が大きくなります。在庫管理が会社の経営上、非常に重要な訳です。

また在庫については人が管理していますので、入出庫のミスはつきものです。いくらシステム管理、バーコード管理をしていても、操作ミスや登録忘れは避けられませんので在庫数は間違っているのが当たり前と言えます。

これを解消するため棚卸が義務つけられています。少なくとも年に1回は棚卸をして在庫が正しいか確認します。棚卸は決算の正確性を担保するもので非常に重要な業務なのです。

まとめ


在庫管理の重要性について認識頂けたでしょうか?

在庫管理は物流への影響も大きいです。
特に倉庫で働いている方は、在庫の大幅な変動で翻弄される事もあると思いますが、何が起きているのか予想して、荷主に対して的確なアドバイスが出来る立場にあります。私自身も倉庫担当者からのちょっとした気づきの連絡で救われる事も多いです。ぜひ荷主と在庫管理について議論してオペレーションに活かしてみて下さい。

以上、今回はここまで。
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