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【心臓リハ】眠りの知識|眠りの本3冊(まとめ)ーその2

2.何時に寝て、何時間眠るのがよいのか

🔹 眠るべき時間数
眠りやすい時間は、体内時計によって決まっている。実は、ある人にとって眠りやすい時間は、かなり固定されている。各人の体内時計は、大きな影響がある遺伝子によってきちんと制御されている。体内時計を調節する主要な遺伝子は10数個特定されていて、クロック・ジーン(時計遺伝子)と呼ばれている。ただし、体内時計の周期はひとそれぞれで、平均も24時間ちょうどではない。(②)

🔹 人間の生体リズム
人間の生体のリズムは、約24時間のサーカディアンリズム(概日リズム)(地球の自転に伴う環境変化に適応するために生物が獲得した生理システム。睡眠・覚醒リズム、血圧、体温、ホルモンの生成・放出などを司っている。さらに短いウルトラディアンリズムは、1分以内の周期の心拍、呼吸、腸の蠕動運動、数十分から数時間のリズムのもの。ノンレム睡眠とレム睡眠の周期など。
サーカルナルリズム(概月リズム)付きの満ち欠けに依拠する。女性の月経周期、産後の産卵など。
サーカニュアルリズム(概年リズム)鳥の渡り、植物の開花、動物の冬眠のような季節変化。一年の単位のリズムによるもの。季節性感情障害も同様。(③)

🔹 眠りのリズム
眠りは概日リズムに従っている。光の要素は前述と同様。必須アミノ酸のトリプトファンが神経伝達物質セロトニンに合成され、セロトニンが松果体でメラトニンに合成される。メラトニンは夜間に合成され、蓄積できないため、生成されるとすぐに放出される。メラトニンの血中濃度が高くなると、体温が下がり、眠くなる。メラトニンは光により生成が抑制される。朝になって光を感じると、網膜にあるメラノプシンという受容体が信号を視交叉上核に送り、この情報が松果体に伝達されるとメラトニンの分泌が抑制される。(メラノプシンは1998年に発見された視覚に関係しない光感受性受容体でヒトでは網膜に存在する。(③)

🔹 8時間寝ていなくても気にするな
理想の睡眠時間は8時間には根拠がない上に事実に反している。年齢ごとの平均睡眠時間(実験室で脳波測定をしたデータ)(②P112)
10歳8.71
15歳7.74
20歳7.44
30歳6.85
40歳6.46
50歳6.34
60歳6.20
70歳5.90
80歳5.52


🔹 睡眠は小刻みでも良いのか
睡眠には、一日の中でコアな睡眠の時間帯(メジャースリープ)を作る必要がある。ここには徐波睡眠がまとまって出る等の構造が必要。日中に一定時間以上眠ると徐波睡眠が出てしまい、メジャースリープの構造が崩れてしまうため、日中の睡眠は30以内が良い。(②)

居眠りも二度寝もいい。本来の睡眠が不足しているから。本来の睡眠の課題の方が大切。(③)


病気の時や過剰な疲労の時は、自分のメジャースリープの時間帯に長く寝ることは必要。(②)

睡眠不足の蓄積が、がん、糖尿病、高血圧などの生活習慣病、うつ病などの精神疾患、認知症などの発症リスクを高めることがわかってきた。(③)

生理的に必要とする睡眠時間は、個人差はあるが概ね8時間で、下回ると睡眠負債となり、継続するとパフォーマンスが低下し、かつ自覚ができない。アメリカの平均睡眠時間は7.5時間、6年の追跡調査で最も死亡率が低かったのは、睡眠時間が7時間の人だった。(③)

3.寝起きが悪いのはなぜか

🔹 眠りの単位は90分ではない
眠りのリズムや時間等については、世間で言われる噂の間違いも指摘している。例えば、レム睡眠からノンレム睡眠の第四段階までを睡眠単位と呼ぶが、「睡眠単位は90分なので、4時間半、6時間等1時間半の倍数が寝起きがすっきりする」とよく言われる。これは間違いで、睡眠単位は60分~120分の間でまちまちなので、まったくそのようには言い切れないという。(①)


🔹 改めて眠りの構造
徐波睡眠は、最初の2回目のレム睡眠までに出ることが多い。これは「砂時計型」と言われ、最初に出てしまえば、後は出てこない。

若年者では入眠後約90分毎にレム睡眠が訪れ、その間にノンレム睡眠が挟まっている。
高齢者ではレム睡眠の周期は約90分で同じだが、ノンレム睡眠が浅く短くなる傾向がある。また入眠後3時間未満で中途覚醒し、概ね5回中途覚醒するというように睡眠が浅い。これは若年者の方が基礎代謝が高くてエネルギーを多く消費しているため睡眠が必要、という理由による。高齢者は赤ちゃんに比べて体重あたりのエネルギー消費が約3分の1なので、眠る必要性が低い。(②)


🔹 寝起きが悪い理由
実は、ぐっすり眠れたかは主観である。薬を飲んで高齢者が深い睡眠をしても、「全然眠れなかった感」の場合もある。中途覚醒や、理想の睡眠時間のイメージが強いと、「眠れていない」印象を持つこともある。

一般的に、眠りはじめの深い睡眠中や、明け方の最も体温が低い時に目覚めると、残眠感が強く出る傾向が強い。
普段の起床時間近くになり、眠りが浅くなり脳温が上がり始めるタイミングで起きるとすっきり目覚められる。
ここでもう一度二度寝をすると深い睡眠が出てしまって残眠感が出る。長い昼寝の後の目覚めの悪さも同様の理由である。(②)

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文:©青海 陽

出典:
①『眠りの悩み相談室』 粂和彦 ちくま新書
②『8時間睡眠のウソ。――日本人の眠り、8つの新常識』
 川端裕人(文筆家)、三島和夫(国立精神・神経医療研究センター部長)日経BP 2014
③熟睡の習慣 西野精治 PHP新書

読んでいただき、ありがとうございます!☺ かつての私のように途方に暮れている難病や心筋梗塞の人の道しるべになればと、書き始めました。 始めたら、闘病記のほかにも書きたいことがたくさん生まれてきました。 「マガジン」から入ると、テーマ別に読めます(ぜんぶ無料です)🍀