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#シロクマ文芸部

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小牧幸助様が企画されている「シロクマ文芸部」への参加作品を纏めます。 お題によってエッセイ、ショートショートなど。
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記事一覧

掌編小説|S.S.S.新橋|シロクマ文芸部

「風の色……白い……」  講堂の中を吹き抜ける風さえも白い、そう錯覚してしまうくらい、こ…

青豆ノノ
6日前
115

掌編小説|ジェラシー|シロクマ文芸部

 月の色っぽい声が聞こえてくる。夜の十一時を過ぎた頃から、もう三十分も続いている。 「匕…

青豆ノノ
13日前
111

掌編小説|アバンギャルド・ネ申|シロクマ文芸部

 懐かしいね、くらいは言われると思ってた。  示された位置に両足を置く。 「立てないかも」…

青豆ノノ
2週間前
102

ショートストーリー|あなたのレモンを聞きたいの。|シロクマ文芸部

 レモンから何を得ようとしたのだろう。 「レモンはきっかけに過ぎない」と一人は言う。 「レ…

青豆ノノ
3週間前
137

掌編小説|流れ星|シロクマ文芸部

 流れ星の夜には百発百中なのだと、俯いていた妻が更に頭を垂れ、真剣に訴える。和室の中は、…

青豆ノノ
1か月前
106

掌編小説|この町の星|シロクマ文芸部

 花火と、手持ち無沙汰でしきりに指の関節を鳴らしている康太を交互に眺めていた。打ち上がる…

青豆ノノ
1か月前
147

掌編小説|怪物|シロクマ文芸部

風鈴と我が子を交互に見比べた。まん丸い様子が似ている。 風鈴をぽんと放れば割れてしまうのと同じように、今胸に抱く我が子をぽんと放ってみたらどうなるのだろうかとしばし考えてしまう。 真夜中。 ベランダから近隣の家々のあかりを眺める。まだ起きている人間が私以外にいることに安堵する。 二階建ての家が多い地域で、ボロ屋でも三階まである集合住宅の最上部に住む私は、こうして時々ベランダに立ち、赤の他人の暮らしを眺めている。 時折なまぬるい風が吹いて、娘の頼りなく細い髪を揺らした。風鈴

掌編小説|透明ドロップ|シロクマ文芸部

 夏は夜のうちに済ませたいことが多いのだと、本田は申し訳無さそうな、だけど見ようによって…

青豆ノノ
2か月前
88

掌編小説 | 手紙というもの | シロクマ文芸部

 手紙には重さが無かった。  しっかりと封をして、裏面にシールを一枚貼った。それから、今…

青豆ノノ
3か月前
105

ショートストーリー | ラムネの音 | シロクマ文芸部

 ラムネの音がしたら目を開けろと言われてから三日経っている。  その間、どんなに耳を澄ま…

青豆ノノ
3か月前
94

掌編小説 | アジサイ移植 | シロクマ文芸部

 紫陽花を移植したと聞かされたときは驚いた。目を開けるとそこには、僕を覗き込む知らない二…

青豆ノノ
3か月前
114

掌編小説 | 雨を聴き、穴を覗く | シロクマ文芸部

「雨を聴く!」  と言われて、何事かと背筋を伸ばした。 「あー、ちょっと。顎、離さないで」…

青豆ノノ
3か月前
117

掌編小説 | 赤い欲望 | シロクマ文芸部

 赤い傘を二人仲良くさして帰った日、あなたたちは幸せでしたか、と書かれていた。  渡され…

青豆ノノ
4か月前
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掌編小説 | ニセモノ | シロクマ文芸部

    金魚鉢、ではなくてホルマリン漬けの瓶だ。     生きた金魚を悠々と泳がせる、それこそが金魚鉢の役目であり、あるべき姿なんだ。死んだ出目金を晒す容器と一緒にしちゃあいけない。     だいたい、どうして古着屋にこんなに沢山の出目金の死骸を並べているんだろう。その前に、これは本物?    それとも偽物なの? 「ナニコレって思ってるでしょ」     若髭のオーナーが声をかけてきた。若髭って言わないか。オシャレ髭?    なにそれ。 「ホンモノ?    ニセモノ?