見出し画像

拝啓、ワタクシ、事故りました。/⑤

⑤6日目午前中:物品破損とアンガーマネジメント

5日目の昼食配膳中に事は起きた。

その日部屋担当だった男性看護師が昼食を配膳してくれた時に、テーブルの端に置きっぱなしにしていたシェーバーが押し出されて落ちてしまった。

「あっ」『あっ』

落ちたシェーバーを拾い、軽く見まわした後、看護師は何食わぬ顔で荷物棚の方にシェーバーを置いた。
この時私が確認しなかったのが悪かったのだが、打ち所が悪くシェーバの刃が欠けてしまったのだった。

午後にそれを確認して、夕食の時の夜勤担当の看護師に経緯を話すと
「上長に報告しますので、進捗を報告しますね」と言ってくれた。
またその人の見なりを聞かれたので素直に「ちょっとチャラい感じの男性介護士」と伝えると「あぁ、やっぱりね」的な苦笑が返ってきた。

そして6日目の午前中に上長が訪ねてきたので、事実ベースで事を伝えた。
ただ看護師の名前までは憶えていなかったで、断定はできないが部屋の担当看護師で男性はあの人しかいなかったので、ほぼ確定な状態だった。

「改めて確認を取りますが、気分を悪くさせてしまってごめんなさい」

その言葉を聞いたときに、私の怒りが急にこみあげてきてしまった。

この上長が来る前、トイレに行く途中のナースステーション内で例の男性看護師と上長とのやり取りが聞こえてきて、男性看護師は「私がやってしまったのかもしれないが、覚えていない」的な発言をしていたのだ。

【白を切り通せれば、そうしてしまおう】

それを思い出して、私は上長に十中八九、あの男性看護師だと思っていることや、先日のCTでのホウレンソウについても不快であったことをぶつけてしまった。

ただ、事前に「アンガーマネジメント」について勉強をしていたので、なるべく感情的にならず、「アイ・メッセージ」として「私はとても不快に思った」と伝え、少し頭が冷えた所で「上長さんが悪いわけではないが、どうしても伝えたかった。申し訳ない。」と謝った。

そうしたら上長さんは「いえ、現場の責任者として改めて申し訳ないと感じている、ごめんなさい」と優しく謝ってくれた。

何故、素直に謝れないのか?
何故、人の痛みを思いやれないのか?
何故、ホウレンソウができないのか?
何故、私は気持ちを上手く伝えられないのか?

上長さんが立ち去った後、色んな感情が混ざってしまい、声を押し殺して泣いてしまった。

仕事、作業の対象が「生き物」である此処と、「生き物でない」私の職場。
しかし、それを扱うのは同じ「生きている人間」。

難しいけど簡単で、簡単だけど難しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?