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拝啓、ワタクシ、事故りました。/③

③3日目:「イ」動と「イ」圧

眠れぬ長い夜が明けて日が差し込んでくる。
ICUの天井は少し高めで、空間がとても広く感じ、そして白が目にきつかった。

相変わらず傷は痛み、寝がえりはろくにうてず、37度台の高温が続き、思考はずっと単純化され続けている。
時間の経過を気にするか、痛まない体勢はどうした良いか?くらいしか考えられなかった。

水分を取るようになってから「尿瓶」を使って「小」をするようになった。
初めての体験だ。
看護師さんが男性だろうが、女性だろうが今の私はろくに動けない怪我人、加えて思考単純化により羞恥を感じるより不快な状態を如何に短時間で脱するかくらいしか考えなかった。

「ちょっとトイレ行ってみましょうか?」

男性の看護師さんに提案され、これも人生初の「車椅子」に乗り、広めのトイレに到着。
車椅子って押してもらう分には楽だなぁ・・・と思いつつ、不自由な身体で用事を済ます。

戻ってから、この後ICU(集中治療室)からHCU(高度治療室)に移ることになったが、説明を聞いている段階で気分が急激に悪くなりちょっと戻した。

たかだか1.5日だが、事故により相当体力が落ちているのと、痛み止めの副作用が結構出てきていて辛かった。

そしてお昼前にICUからHCUに移動。
6人部屋に通されて、担当看護師の交代、情報の引き継ぎが行われ、昼食の時間になった。

やはり半分くらい食べると気分が悪くなってきて完食はできない。
昼食後、女性の看護師さんにその旨を相談すると

「当たり前でしょ、この点滴の痛み止め使っている限りは気持ち悪さはなくならないよ、止める?」

と怪訝な態度と威圧感のある口調で言われた。
心身ともに弱っていたのと、この時初めて「痛み止めの副作用」を知ったため、痛みと気持ち悪さをどうトレードオフしたら良いかを回らない頭で考えていた。

これを見かねた男性の看護師が

「まぁ、いきなり止めて、痛みに耐えられなかったらきついから、点滴の量を減らしてみましょう」

と提案してくれたので、藁にも縋る気持ちで頷いた。
そして同時にこの女性看護師がとても怖くなった。

何故、この人は相手のことを考えない(思いやれない)のだろう?
あなたの常識は私の常識ではないし、そんな副作用説明されてないよ・・・。

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