アンヘドニアは心理療法で良くなるか?【論文紹介】

うつ状態のイメージとして気分が落ち込む、悲しいなどのネガティブな気持ちが出てくることがあると思います。実は、うつ状態のポイントはネガティブな気持ちが出てくることに加えて、ポジティブな気持ちが低下すること、アンヘドニアと呼ばれる状態が歩かないかです。

ポジティブな気持ちには、喜び、興味、幸福、高揚、熱意などがあり、これらのポジティブな気持ちが低下することで、行動するモチベーションが下がってしまい、周囲からのプラスのフィードバックを受ける機会を減らしてしまいます。

このポジティブな気持ちが低下する、アンヘドニアに焦点を当てた心理療法が行動活性化です。行動活性化は認知行動療法の一部であり、認知行動療法から考えを柔軟にするモジュールを省いた心理療法ともいうこともできます。

今回紹介する論文では「認知行動療法と行動活性化ではアンヘドニアが改善するのか?」について、COBRA研究という研究プロジェクトのデータを活用し、分析されました。

COBRA研究ではうつ病患者さん440名が、行動活性化または認知行動療法のどちらかを受けました。

Snaith Hamilton Pleasure Scaleというアンケート調査を使用してアンヘドニアが評価されました。

分析の結果ですが、行動活性化と認知行動療法の両方で、治療後にアンヘドニアが改善することがわかりました。一方、治療終了から6 か月たった時点で、アンヘドニアは健康な人の平均を上回ったままでした。

この結果から言えることは、認知行動療法や行動活性化といった心理療法でアンヘドニアは改善するのですが、その効果は十分ではないということかもしれません。

さらにいうと、研究以前の予測ですと、行動活性化を行う方がアンヘドニアが改善するだろうという予測が経っていましたが、認知行動療法との間に差はありませんでした。

うつ病の心理療法は話を聴くことを中心にしたものよりも、なんらかのアクティブな働きかけをする心理療法の方が効果があることが知られていますが、アクティブな治療間では効果は同等であることもわかっています(例えば、精神分析、認知行動療法、対人関係療法など)。

今回の研究で、その謎がさらに深まることにはなりましたが、アンヘドニアを改善する方法についてはさらに探究していくことが必要そうです。

それでは最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。

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