見出し画像

効果ありとは?【研究者日記】

福島県の医学部で学生教育をしながら、心理カウンセラーをしたり、研究をしたり、YouTubeの運営をしたりしてるあおきしゅんたろうです。

突然ですが、効果があった!というのをカウンセリングではどう判断したらいいでしょうか?

クライエントさんが「元気になった!」と言っている、あるいは前向きな言葉が増えた、笑顔が増えたなどなどいろいろな見方があると思います。

ただ、どうやったら元気である、あるいは前向きであるということを知ることができるでしょうか?

ゲームのなかでの効果あり


みなさんがやったことがあるゲームを想像してみましょう。

とあるゲームではヒットポイント(HP)のメーターがあって、敵から攻撃を受けると減っていきますよね。

そうしたときに、「薬草」を使うとHPのゲージがあがっていって、2/100が78/100まで回復した!などということがあると思います。

一方、他のキャラクターも傷ついているにもかかわらず、「薬草」を使わなかったら、HPは2/100のままです。

あるいは「課金」することでライフが♡♡❤が❤❤❤になった。「課金」をしないとライフは♡♡❤のままです。

効果ありとは?


ここで重要なことが2つあります。1つは「メーターが目に見える形にされている」ということです。

HPの場合、0-100の間で体力が目に見える形になっているので、この人の数字が上がっていた場合、体力が回復した、いわゆる効果があったことを目に見える形で理解できます。

もう1つは「効果がある道具が何かがわかる」ということです。

今回の場合、HPの場合は「薬草」、ライフの場合は「課金」です。

上に書いたメーターを使うことで、薬草を使えば体力が回復し、使わなければ回復しない、という道具の効果がわかります。

これをこころの病気に置き換えて考えてみましょう。

こころの病気の効果ありとは?


こころの病気のメーターとなるものはなんでしょうか?

糖尿病なら血糖値が下がった!高血圧なら血圧が下がった!ならば効果ありということができそうですよね。

例えば、うつ病だとしたら、うつ症状が改善したかどうか、パニック症ならパニック症状が改善したかどうかが1つのメーターになります。

日常生活をしていて、ああ、うつだあ、不安だあ、顔色が悪いなあという私たちの目で見えることもありますが、これらが改善したかどうかを目で見て客観的に理解することは困難です(もしかして病気かも?の判断材料にはなるかもしれません)。

そこで使われるのが心理検査です。例えばアンケート票を使うと、うつ症状に関連する質問項目が並んでいて、それらの質問項目が週にどれくらいの頻度で起こっているか?にチェックをつけてもらい、数値化します。

その数値が高いほどうつ症状が強いよというメーターを作っておいて、その数値が治療によって下がったかどうかを判断します(例えば、18点だったうつ症状のメーターが2点になった)。

そうすると先ほどのHPの話と同じように、抗うつ薬を飲むことで、うつ症状に効果があったかどうかを判定することができますね。

これをカウンセリングにも応用します。たとえば、認知行動療法という心理療法がうつ症状の改善に効果があるかを調べる場合、

片方のうつ病のひとには認知行動療法を行い、その治療によってうつ症状のメーターがよくなったことを確認し、片方のひとには認知行動療法をおこなわずうつ症状のメーターがよくなっかを確認します。

そうしたときに、認知行動療法を行った場合にうつ症状のメーターがよくなり、行わなかった場合にうつ症状のメーターがよくならなければ、認知行動療法に効果があったということができます。

ですので、真にカウンセリングに効果があるかどうかを調べるには、なんらかのメーターがカウンセリングの前後でよくなったかどうかを調べることが必要なのです。

これからのカウンセリングの効果について

ここまでうつ症状の話を中心にしてきましたが、少し違和感があったかもしれません。

というのも病気の症状を治すことに焦点をあてて、患者さんを見ていないんじゃないかという議論があります。

病気の症状がよくなるだけではなく、患者さんがより良い生活が送れているか、つまりウェルビーイングがある生活ができているかという視点が大切です。

うつ症状と同じように、より良い生活やウェルビーイングについて測定するメーターも整備されてきていて、カウンセリングによってそういったメーターがよくなるのか?という視点もだいじなように思います。

加えて、一番最初に話した笑顔や前向きな発言がカウンセリング前後で変化したかというメーターを作っていくことも大切なことです。

仮にうつ病であっても、良くなるの基準やその考え方は人によって違います。

例えば自然言語処理という言葉を分析することで、本人の前向きな発言が増えてきたというのをメーターにできるかもしれません。

あるいは表情の解析によって、面接中の笑顔が増えたことを客観的に解析する技術も現在開発されてきています。

テクノロジーの進歩を活用して、その方にとっての効果ありを知るための客観的なメーターをたくさん増やしていけるといいんじゃないかなと思います。

ミヤガワRADIOさんでも数学と心理学についてのお話があがってますのでよかったら!

それでは最後まで読んでいただいてありがとうございました。

もし記事に共感していただけたら「スキ」ボタンを押してくれたらうれしいです。サポートしていただけたらもっと嬉しいです、サポートいただいたお金は全額メンタルヘルスや心理学の普及や情報発信のための予算として使用させていただきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。

そのほかのあおきの発する情報はこちらから、興味がある方はぜひご覧くださいませ。
Twitter @airibugfri note以外のあおき発信情報について更新してます。
Instagram @aokishuntaro あおきのメンタルヘルスの保ち方を紹介します(福島暮らしをたまーに紹介してます)。
YouTube ばっちこい心理学 心理学おたくの岩野、とあおきがみなさんにわかりやすく心理学とメンタルヘルスについてのお話を伝えてます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?