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コミュニケーションがうまくない学生にどうやって医療コミュニケーションを教えたらいいかについての論文

こんちは、あおきです。案外、医学教育系の論文紹介が好評なので、今回も抄読会でテーマに上がった論文についてご紹介します。

今回は、2020年に公表された、コミュニケーションに難しさを感じる学習者への再教育方法についてのシステマティックレビュー(考えうるデータベースからテーマに該当する適切な論文をまとめた論文)です。

結論を言うと、コミュニケーションがうまくない人にどうやって医療コミュニケーションを教えたらいいかについては、じゅうぶんにわかっていません。ただ、使える要素はたくさんありますので、現段階での参考にして下さい。

レビューの対象となった論文

約1,500編の論文から、16編の論文が抽出されました。対象者には、医学生、看護学生や研修医などが含まれていました。MERSQIスコアという研究のレベルが十分に高いかどうかをあらわす指標では、研究のレベルはじゅうぶんに高くないこともわかりました。米国で8件、英国で3件、カナダで2件、ベルギーで1件、オーストラリアで1件、韓国で1件の研究が実施されました。

評価方法

コミュニケーションのうまくなさは、どのように評価されたのでしょうか。

このレビューで包括された研究では、ほとんどが客観的技能試験(OSCE)の形式で評価されました。ざっくりいうと、模擬患者さんと学習者が実際に模擬面接を行い、その様子を評価者が評価するという方式です。ビデオを見ながらあとで評価を加える場合もあります。

もう1つは、360度評価です。これは、例えば、教員からの評価だけですべてを評価するのではなく、教員、ピア評価(同級生の評価)、模擬患者さんの評価、自己評価などを総合的に評価しようとする試みです。

再教育方法

1対1のコーチング/メンタリング、チュートリアル、個人およびグループでの作業、フォーカスリーディング、SP演習、ロールプレイ、ビデオテープのレビュー、カウンセリングなど、幅広い介入戦略が含まれていました。

1対1でのコーチング、メンタリング(メンターによる指導)、カウンセリングなどでは、個々人の特性に合わせて、どのようにコミュニケーションを改善していくかを話し合っていきます。

SP演習、ロールプレイでは、実際の場面に似た模擬的な面接の場面を設定し、そこでの経験を自己省察したり、周囲やSPさん、教員からのフィードバックによって修正点やできているところを学んでいきます。

ビデオテープのレビューはさらに踏み込んで、自分自身の面接の動画を見ながら、どんな様子だったか、どうしていったらいいかを自己の振り返りとともに、他者からもフィードバックを受けていきます。

介入内容の評価

カークパトリックの4レベルモデルでは、教育に関する介入のアウトカム評価を以下の4つに分類しています。

レベル1:参加者の反応(学習者の満足度)

レベル2:参加者の学習内容(知識とスキルの変化)

レベル3:参加者の行動の変化(現実場面への応用)

レベル4:結果(施設での実践と患者の転帰の変化)

レベル4に近づくほど、社会実装に近い形でのアウトカム評価ができていることになります。このレビューで取り上げられた研究では、レベル2の参加者の知識とスキルの変化に言及した研究のみにとどまり、ほとんどの研究は参加者の感想についての言及、あるいはアウトカム評価がないという結果にとどまっていました。

あおき考

この論文は、しっかりとここまでしかわかってないよということを誠実に述べているのが良かったです。

コミュニケーションスキルアセスメントについては、学習者の自己評価だけではだめで(自己評価もだいじだけどね)、客観評価が必須かなと思います。OSCEの評価も確かに良いですが、動画解析やプロトコル解析などをおこなって、どんな非言語的コミュニケーションやどんな発話が患者さんに良い影響を与えるかを考えていかないとなあと思います。

介入内容については、マスを対象にするのか、個人を対象にするのかでずいぶん変わってくると思うのですが、コミュニケーションがうまくない個人を対象にするので、そのうまくなさって人それぞれだいぶちがうとおもうんですね。やはり、個々人のスキルアセスメントをしっかりおこなって、それに合わせたスキルを伸ばすような個別最適化した介入をするのが必要かと思ってます。

最後に、アウトカム評価は教育研究の永遠のテーマで、スキル評価まではかろうじてできても社会実装まではなかなか難しいですよね。時間がかかっても、少しずつ教育研究を進展させていきたいですね。

最後まで読んでいただいてありがとうございました!!!

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