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教育に心理学は必要か?【研究者日記】

福島県の医学部で学生教育をしながら、心理カウンセラーをしたり、研究をしたり、YouTubeの運営をしたりしてるあおきしゅんたろうです。

先日医学教育学会に参加したときのシンポジウムにて、「医学教育にも心理学の観点を取り入れていくことが必要です」という話を聞いてきました。

質問させてもらったところ、以下のようなポイントで心理士・心理学者の方に教育に入ってきてもらいたいというところをあげてもらいました。

わたしも医学教育の分野で心理士・心理学者として参画させてもらっていて、実際に感じていることなどもあります。そういったことも踏まえて、「教育に心理学は必要か?」ということを考えてみます。

まず誤解されること


大学教育の中で、教職員の方々が心理学に対して抱いているイメージとしては、精神分析のような人間の深層心理を明らかにしていくというものが多いです。

加えて、カウンセリングをするひとというのが大枠のイメージです。

まず心理に携わる人間の中にも、学者・研究者と心理カウンセラーは全然違います。ですので、心理学者の場合はカウンセリングができないことも多くあります。

逆に心理カウンセラーが研究できるの?というのもありますが、わたしなんかは研究方法や実験計画の方法についてみっちり叩き込まれてきたので、統計も含めてそこそこできます。

深層心理について理解するかどうかについては、そういったことに精通した心理カウンセラーや心理学者もいれば、精通していない人もいます。

わたしなんかは行動科学がどちらかというとバックグラウンドにあるので、そういった観点から理解しようとします。あるいは認知心理学的な観点から人間の思考パターンやパーソナリティーを考えたりします。

心理士・心理学者といっても、人によってスペシャリティがだいぶ違うということを押さえておくといいと思います。

そのうえで、下記のようなことが教育現場でできそうです。

現象を心理学的に説明する


教育現場では、先生方がうまくいった過去の経験や事例を利用して、教育が行われることが多いように思います。

教育では知識を知ることが一つ重要な点ですから、思考法や記憶法を科学的に理解することは重要なように思います。そのメカニズムを知るには認知心理学や知覚心理学がかなり役に立つでしょう。

あるいは学級運営なんかでは、いろいろな問題が起こったりもしますが、そういうときには社会心理学的な観点から、なぜそういった事態が起こるのか?を知ることもできます。

原因がわかると、対処方法が自ずと出てきます。そういった心理学の知識を日常の中に応用していくのが心理学者や心理士のスキルなのかなと思います。

メンタースキル


困りごとを抱えやすい学生さんもいると思います。教員の方で、どう対応したらいいかわからないというときに、コンサルテーションしたり、面談を担当したりということはできそうです。

メンターのスキルの中でも、本人の困りごとを言語化したり、まとめていったり、そして困りごとがなぜ続いているかをアセスメントしたりというのは心理学が得意としているところでしょうか。

インクルージョンの観点で、発達障がいをもつ学生さんへの合理的配慮などで、応用行動分析や環境調整の発想を活用することもできそうです。

コミュニケーションのトレーニング


臨床心理学や社会心理学では、コミュニケーションの研究や、コミュニケーションを身につける方法などが研究されています。

傾聴や共感の技術や、相手の行動変容を促す会話のテクニックは心理学が強いです。

人と関わる仕事の場合は傾聴や共感などのコミュニケーションスキルは重要です。日常の中でも、コミュニケーションスキルがあれば、良好な対人関係も築けますし、メンタルヘルスも良くなることがわかっています。

小学校から大学まで、具体的なスキルを学ぶコミュニケーション教育はカリキュラムにないと思うので、組み込めたらいいなと思いますね。

教育の研究


心理学を勉強していると、必ず統計手法や実験デザイン設計などを組むスキル、つまり、研究をするスキルは自然と身につきます。

教育分野でも、その効果を科学的に検討したり、実践に効果があるか?を確認し、ブラッシュアップしていくことは大事です。

あまり知られていないのですが、心理学を学ぶ人はそういったスキルに長けている場合も多いです。そういったお手伝いも心理士や心理学者はしていくことができるのかなあと思ったりもします。

キャリアプランニングと価値の明確化


教育でなかなか重要なのがそのひとがどのように生きていきたいか?を明確にしていくことです。カール・ロジャースの来談者中心療法も教育現場で多く用いられる発想です。

就労するときには「キャリアプランニング」を考えて、人生設計してたりもします。そのときにだいじなことは、どういう方向で人生を過ごしていくことです。

その人の思いを聞いていって、その人の大切にしたいこと「価値」を明確化して、人生の方向を考えていくお手伝いを心理士はすることができます。

といったところが教育に心理学を活用する方法なのかなあと思います。

来年の学会では「教育に活かす心理学・心理士」なんかのシンポジウムをやりたいなぁという話も出ていて、今日お話しした内容を活かして企画していきたいかなと思います。

それでは最後までお付き合いいただいてありがとうございました。

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筆者 あおきしゅんたろうは福島県立医科大学で大学教員をしています。大学では医療コミュニケーションについての医学教育を担当しており、臨床心理士・公認心理師として認知行動療法を専門に活動しています。この記事は、所属機関を代表する意見ではなく、あくまで僕自身の考えや研究エビデンスを基に書いています。

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