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聴けてない /ファシリテーション一日一話 6

我が家の桜が見頃になったので、七輪で焼き鳥を楽しんだ。家族だけではもったいないと思って、近隣の友人に声をかけたら、ぶらりと来てくれた。持参いただいた日本酒を堪能して、うとうとしたころに、彼が人生を語りはじめた。自分が中高生のころあまり勉強ができなかったこと、そのせいで周りからひどく馬鹿にされたこと。社会人になってから自分の得意分野を見つけ、そこを深掘りすることで、周りから頼られるようになったこと。日々の仕事との向き合い方や、若手を育てる喜びなど、たんと語ってくれた。どの話もとても面白く、示唆に富む内容で、伺えて本当によかった。

同時に、十年来のお付き合いがありながら、これまで彼の話をまったく聴けてなかった自分に愕然とした。ファシリテーターの仕事は、人の話をきくことだ。そこにつきる。なのに、僕はまったく聴けてなかった。なぜだろう? 宴席を閉じた後、布団にくるまって、そんなことを思って寝た。

翌朝、朝日に映える桜を見て、わかった。なんのことはない。17才になる娘が、大人の飲み会に混ざって座っていたからだ。彼女は関心を持ち続け、焚き火を眺めながらじっと彼の話を聴いていた。飲むとすぐに眠くなってしまい、うとうと舟を漕ぐ父と違って、彼女はちゃんと最後まで関心を向けて聴いていた。だから、彼はそこまで話してくれたのだと思う。

ファシリテーションを仕事にしていると「人の話をきくコツはなんですか?」と質問されることがある。僕はよく「その人の発言を、ひとつの情報として受け取るだけじゃなく、その方の人生をきくつもりで、伺うこと」と答えている。発話者がどういう人生を歩んできたのか、なぜ今この発言をするにいたったのか、をトータルできいて、それらを場が受け取ることができると、話し合いはうまくゆきやすい。偉そうにそんな質疑応答をしているくせに、まだまだ僕は聴けてない。娘の姿勢を手本に精進したい。

うん、これはおさらいが必要だな。今夜も夜桜に七輪を出すとするか。


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