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この街に雨が降る
急な雨が降れば
迎えに来てくれた
おかあさん

ちゃぷちゃぷと
水たまりで跳ねながら
『こら、おかあさんも濡れるでしょ』
ほほえんで

この街に雨が降る
急に雨が降ったら
迎えに行った
おかあさん

ぽたぽたと
汗かいて拭きながら
『ほら、あんたも濡れるでしょ』
あたま撫で

この街に雨が降る
急の雨が降ったら
迎えに行った
おとうとを

ぎこぎこと
自転車こぎながら
『ほら、あかんは濡れてるよ』
二人乗り

この街に雨が降る
涙の雨降らせたら
散歩にいった
三人で

ランランと
歌うたいあいながら
涙やむまで

この街に雨が降る
急に雨が降っても
ふたりでお留守番
二人で待つ

ぴとぴとと
雨が降っても待つ
ちょっとだけ手伝い
おかえりなさい

この街に雨が降る
急な雨が降っても
一人 街の中へ
仲間とたむろう

ザアザアと
雨が降っても待つ
おかえりを言うために
おかんは待って

ありがとう
おかあさん
ありがとう
おとうと
ありがとう
おかん
ありがとう
おふくろ
ずっと
ありがとう

おふくろがこし痛くても
はたらいて
はたらいて
やがて
おれも
はたらいて
はたらいて
おとうとも
はたらいて
はたらいて

おとうとも
はたらいて
はたらいて
はたらいて
おとうとが
腰悪くして
みまもって
見舞うなかで
立ち上がって
見舞って
はたらいて
見守って
おふくろは
はたらいて
みまもって
はたらいて
みまもって

やがて
俺が
やみついて
病みついて
病み続けて
見守られて
見守られて
おふくろは
はたらいて
はたらいて
見守って
見守って
立ち上がって
つまづいて
立ち上がって
つまづいて
立ち上がって
おふくろは
みまもって
みまもって

おとうとが
ひとり立ち
ふたりで
三人で
四人で
おふくろと
はたらいて
みまもって
はたらいて
みまもって
おふくろと
はたらいて
みまもって
はたらいて
みまもって

俺は筆を
執りはじめ
おふくろと
はたらいて
みまもって
はたらいて
書いて
たがいに
みまもって
はたらいて
たがいに
みまもって
はたらいて
書いて
はたらいて
書いて
たがいに
みまもって
書いて
たがいに
みまもって

おふくろ
病みついて
はたらいて
はたらいて
病みついて
病みついて
治したくて
治したくて
歩いて
書いて
見守って
つきそって
見守って
つきそって

おふくろ
病みついて
看取りに
書いて
見守って
書いて
看させてもらって
書いて
見守って
書いて
看させてもらって

おふくろ
雨が嫌いって言ってたよね
俺は
雨も好きだよ
おふくろのこと
おとうとのこと
雨で思い出す
冷たい雨は嫌だけど

この街に雨が降る
急なしとしと雨
まだいかないで
おふくろの手
そっと握りしめ

じゃあじゃあと
音たてながら
『嫌いな雨の日に・・・』
ほほえんでよ

この街に雨が降る
そんななかで
おかあさんが
おかんが
おふくろが

この街に雨が降った
晴れたよ
おかあさん
おふくろ
軽くなった
おふくろかかえて

めそめそ
寝ていても涙流す
おかえり
おかあさん

おかあさん
おふくろ
冷たい雨に腰痛む
でも雨は好きだよ
思い出す
沢山のこと
沢山の日々

この街に雨が降る
冷たい雨が降る
腰の痛みに
おかあさん
おふくろ
思い出す

でも
泣かなくなったよ
おかあさん
おふくろ
俺の仕草が
似てるらしいよ
だから
雨が降る日
雨の日に
思い出に包まれる

冷たい雨に思い出した
腰の痛みと一緒に思い出した
おふくろの苦労
だから
おかあさん
おふくろ
ありがとう

雨の日に
思い出に
やさしい母に
雨の日に
思い出す
生きること

雨の日に
思い出すから
生きることを
忘れない
おかあさん
おふくろ
ありがとう

Copyright 2023(C)Kazuya Aoki(碧木和弥)


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