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学生時代をふと思い出すとき、記憶の中の天気はどっちだろう。

学生時代をふと思い出すとき、記憶の中の天気はどっちだろう。

晴れか、雨か。あるいは雪でも。

僕は雨だった。

夢に出てくる時も、電車に乗っている時も、漫画を読んでいる時も、仕事をしている時も、決まって思い出すのは雨の日の学校。


夏の、ぬるい風に吹かれた細い雨粒が頬を撫でる。


僕は制服で、水色の学校指定のワイシャツで、濃紺のネクタイをゆるくしめ、袖をまくっている。

昼休み、よく図書館に行っていた。

中庭を、本が濡れないように屈んで、でも決して急がず。

夏の暑さと、それを宥めるかのように吹かれる水滴が僕の心を落ち着かせた。「大丈夫、クラスに馴染めなくても大丈夫」と。

雨は好きだ。陰鬱極まりない学生時代。一人でいることが悪とさえ思えたあの空気。教室では思うように息ができなかった。

休み時間はひたすら机を見つめたり、本を読んでいるふりをしたり、出たばかりの課題に取り組んでいた。

昼休みになると逃げるように図書館に駆け込んだ。そこでやっと息ができた。


昼休みが終わりに近づく頃、雨は本降りになった。

傘はない。このまま休んでしまおうか。でもクラスで目立ちたくないから帰る。でも傘はない。いいや、そんなこと大した問題ではないし、むしろ濡れたい。

ざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーと、雑音をかき消す雨音が好きだった。

雨だけが僕を受け入れてくれていた気がする。

本当は友人もいたし、自意識過剰だったのもあるはずだけれど、記憶に強く存在するのは、激しくも優しい雨だった。


生活費になります。食費。育ち盛りゆえ。。