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雨の夜。淡々と流れる時間と海に乞い。

雨が降った。


いつもよりぬるめにお湯を張って、水着に着替えて風呂に入る。
雨の日はいつもと違って水着で入る。


そして風呂に入る前に家の電気を全て消す。

築50年のボロアパート。
天井はダダダ、と強く雨に打たれる。


ぬるめのシャワーを浴槽に。雨のように。
真っ暗な浴槽、夜の海。ぬるいシャワー、夏の雨。淡々と流れる時間と雨。


この時間が好きだった。


僕の脚の間に彼女が座って、僕はいつものように手を自分の頭にやる。


「触れても気にせんて、しかもなんか今日水着じゃし」と彼女は笑う。多分、意地悪い顔をして。



雨の夜。彼女は僕の方を向いて抱きついてくる。何かを確認するように、首を傾げたり、力を入れたり、あるいは僕の顔にほおをすり寄せて。


その”儀式”が終わって10秒くらい待ってから聞くのだ。「今日はどう?」と。そして彼女は言うのだ。「さっぱりじゃ」と。


そして僕は言うのだ。「よかった」と。
そして彼女は言うのだ。「君にとってはね」と。


「知らないから、余計綺麗に見えるんだよね」と彼女は寂しそうに呟いた。
「俺もそう思うよ」と言った。


雨はやまないし、僕らは互いに欠落した何かを求め合って海に乞う。

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