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現代カワイイ展(2021)アーカイブ

現代カワイイ展 ステートメント

「カワイイ」とはなんだろう。

広辞苑では①いたわしい。ふびんだ。かわいそうだ。②愛すべきである。深い愛情を感じる。③小さくて美しい と説明されている。しかし、現代において「カワイイ」はこの辞書的な意味を超えて存在している。「かわいい」や「可愛い」のように表記を変えるだけでもニュアンスが変わることからもわかるように、「カワイイ」がカバーする範囲は広い。さらに「Cute」ともまた違った概念として「Kawaii」が2000年代初頭に広まり、現在では既に世界共通語として定着している。

我々はその「カワイイ」文化を現代アートからアプローチし考察することにした。
表層をなぞった通俗的な「カワイイ」ではなく、我々にとっての「カワイイ」とは何だろう。
身近な日常生活から。または空想の世界から。
様々な角度から自分だけの理想の「カワイイ」を見つけ出す。
本展では、我々にとっての新たな「カワイイ」の定義を発見し、提示する。

見てほしい。これが私の「カワイイ」だ。

(あおいうに)

【参加作家】
あおいうに
阿部泉
イチタン
神谷QQ
さくらわだ
野上真希
Yas

「現代カワイイ展」あおいうにスペース展示風景
まるのある風景
ピンクのまる
まるの親子
まるい雪だるま
素朴なまる
たまたま
丸丸丸丸
まるくて小さい



作品解説

私が最初に「カワイイ」でイメージするものは、「まるくて小さい」と「凹凸のある絵肌」である。

今回のカワイイ丸シリーズ第一作目は、そのままタイトルが「まるくて小さい」だ。
この作品が本シリーズの指標となった。

凹凸の激しいマチエールに、複雑性を帯びた色合いの筆致が乗り、そこには小さな丸がいくつか描かれている。
私の思う、「カワイイ」そのものだ。

二作目の「まるいゆきだるま」は雪だるまというファンシーなモチーフを用いて、子供らしさのある「カワイイ」を表現している。どこかノスタルジーを感じる色合いで、鑑賞者の思い出にアプローチを試みた。

三作目の「まるの親子」は実は一番気に入っている。絵肌や筆致が複雑でとても「カワイイ」からだ。
親子というモチーフもどこかほんわかとして鑑賞者の心を揺さぶる。
右上に筆致溜めているのは、画面としてのバランスを取るためだ。

私はこの技法をよく用いる。これを、「窓際のグミ」と呼んでいる。
いつか、「窓際のグミ」というタイトルの展示がしたいものである。
また、画面中央に散りばめられた点々は桜の花が散る様子を彷彿とさせる。

「ピンクのまる」は最もストレートに「カワイイ」という課題に答えたのではないだろうか。
ピンクと言ったら、誰もが「カワイイ」と感じる。
そこにグリーンで差し色をして、メリハリをつけた。
更にぼかして背景にグラデーションを作ることにより、空間を生み出した。

「丸丸丸丸」は、たくさんの丸で構成された、いままでとは少し違う作風である。
しかし、単調にならないように余白を意識して粗密感を出した。
重曹を混ぜ、こってりしたマチエールもまた「カワイイ」。

「素朴なまる」は、私の思う「カワイイ」を大変よく表している。
私は素朴な色合いにとてもそれを感じるのだ。
素朴でかつ、小さく控えめな丸。
これ以上、「カワイイ」ものはないのではないんじゃないかと思うぐらいだ。

「まるのある風景」は比較的大きめの作品なので、一番、気合を入れて制作に挑んだ。
今回は唯一、油絵素材の作品である。
丸たちが画面上で踊るように風景のようなものを形作っているのは、「カワイイ」と感じさせる。
全体的なブルーの色合いに、イエローの差し色がうまくいった。
とても気に入っている作品である。良い買い手が見つかることを祈る。

ラスト、「たまたま」は水玉の模様をモチーフに描いた。
玉の位置関係を工夫して描いている。

作品ごとの解説は以上だ。

私が「カワイイ」と絵で感じるのは、コッテリ盛った美味しそうなマチエール、互いに混ざり合った複雑な色合い、キャンバスの側面に付着したはみ出し、かすれたような儚いタッチ、流れるような潔いタッチなどである。
他にも挙げればキリがないが、主にこのような項目だ。

自分にとっての自分だけの「カワイイ」。
その答えが本展示で出たようだ。

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