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楽しい推敲(備忘録)@急ブレーキ編20230408sat294


625文字15min

 ぼくはパソコンで執筆する。ログはどんどん消去される。推敲の過程は残らない。今回、試しに残してみることに。

スケッチの文章(推敲前)

 キーッ。
 急ブレーキをかけたので、重心は男の頭に移動して車両は前方につんのめった。やばいっ、このままでは倒れる。と思って男は硬くにぎった右手ブレーキをはなした。すると前輪は前方にすすんで重心は後退する。ジャックナイフのようにもちあがった後輪は、ぶつかるように地面に、
 ジャリ。
 着地をした。道は渇いた砂利のあぜで、土埃が立った。

第一稿(推敲後)


 キーッ。
 男は急ブレーキをかけた。ロードバイクは前方につんのめった。後ろのタイヤは太陽を隠した。
 やばいっ、このままだとひっくり返る。と思った男は、硬くにぎった右ブレーキをはなす。男の腰は宙に浮いた。腰は、どこの空間にも時間にも所属していない。そんな奇妙な感覚に陥った。そこから時間はみょうな速さですすんだ。倒立のようにあがった後輪は、ゆっくりと、地面の砂利を踏みつけて、バウンドして着地した。砂利のあぜに、渇いた土埃があがった。

 茶色の長い布のような影だった。イタチだ。それが目の前を横切ったのだ。九州ではサイクリングロードを走っていると、頭部の目の辺りが黒ずんだイタチの死骸が潰れているのをいくつも見た。みな車に跳ねられていた。
 男はサドルに尻をつけたまま両脚をハの字に広げて、そのままの格好であぜに立った。
 まわりは一円、田んぼ。風は無風だった。


 


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