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800字日記/20221108tue/122「深夜の太鼓」

昼の執筆がもたつき、外には出なかった。執筆中にネコがぼくの膝にじゃれてきた。まるで一歳児のように。心を鬼にして無視を決め込むと寝床に入った。

一息ついた頃、畳に座って猫じゃらしを振るとネコは膝をわざと踏んでベランダに出る。日向ぼっこ。たしかにいい天気だ。

夕方、イギリスのペンフレンドから手紙が届く。ウチのネコをモデルに想像力あふれる竜の絵を描いてくれた。インスピレーションが沸く。そのまま文章スケッチを書く。割としっかり書けているのに驚く。

絵、Matthew Evan Atkinson マシュー・エヴァン・アトキンソン

夕飯を食べた後、夜の八時になった。鬼門の刻である。読書をしていると、来た。この時は睡魔が襲う。井戸から出てくる貞子のようにやってくる。原因はわからない。次は丑の刻だ。深夜一時から三時。頭が冴え返るはずだ。さすれば執筆をここに当てるべきか。

やはりだ。沼に沈むようなまどろみから突如、霧が晴れたように頭が冴える。時計を見るといつもの丑の刻だ。だがこの頃にはもう体力はない。睡眠導入剤を飲んで寝ようかと迷うが時間がもったいないと思って本を取って読み始める。

腹が鳴って読書の手が止まる。散々「もう寝ようよ」と頭を擦り付けてきたネコは押入れで丸まっている。ぴぃ、とうっすらイビキが聞こえる。

湯を沸かし、インスタントラーメンの袋を破く。どんぶりに粉末、おろしニンニク、ベーコン二切れを入れて、麺を茹でる。袋に付いている炒りゴマをふりかけて、生卵を割ってごま油を回し入れる。夜食を作るとき、最近ネコは起きてこない。少し寂しい。

「どんどんどんどん… 」

来た。今度こそ、アレだ。

和太鼓の音だ。耳鳴りか、わからない…

六年前の京都の時代では耳元でオルゴールの鼓笛隊が鳴ったが結論として耳鳴りと判断した。大分に来てからこの「どんどんどん… 」和太鼓の音。ここでは小中学生は公民館などで川舟祭の太鼓の練習をする。夕方によく耳にしたが、川舟祭は夏だ。

ラーメンを食べ終える頃に、太鼓は止んでいた。

(800文字)

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