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800文字日記/20220306sun/002

おひさ、です。
じつは、あまり赤がない。だから読者の為になるような記事にはならないと思い、アップは止めていましたが、ぼんやりアップ再開します。

今回の提出原稿も一箇所のみです。



正午の時報で目覚める。猫がいない。開いたカーテンが風に揺れていた。二度寝だったか。掃除を終えた床に綿棒を放ると猫が咥(くわ)え戻ってくる。カリカリをやって外にでる。

春一番か、すごい風だ。快晴。青を水に溶かした水彩画のような水色の空。風で飛ばされぬようキャップを手で押さえ体を斜めにして畦をあるく。小麦の濃緑の絨毯が太陽に照って漣(さざなみ)たつ。突風が畑を走る。浄水場の向こうの竹藪(たけやぶ)がなんどもお辞儀をする一団の影絵にみえる。川にでて風上へ。橋を渡る。右へ曲がって土手沿いを歩く。左頬が風に叩かれる。芒(すすき)の湿地から鴨が三羽、空高く飛びたつ。川向こうのさらに丘の上に赤と白の鉄塔が。電波塔か。そこでぼくは澄(す)んだ空の青の調和の美しさに愕然(がくぜん)とする。


ぼくは見上げる。濃い緑の稜線の上に帯のように沿う白、淡い水色、スカイブルー、濃い青は宇宙へと伸びる。山際から天空へと重なるグラデーション。鳥肌が立つ。


十七羽の大家族の川鵜がまるで浴槽に浮いたおもちゃのアヒルのように寺の敷地で茂った木々で影になった影へ笹舟のように流れていく。風が凪ぐとまた各々ばらばらに上流へゆっくり移動する。ときたま首を水中に入れる。まるで添水(そうず)のようだ。漁場があるようで八羽が一塊(ひとかたまり)になって、交互に首を水中に突っ込み、浮かんだ尻から水掻きで水を蹴りあげる。

上流へくると河原の真ん中に巨大な岩がある。洪水があったのだろう。河の端には中くらいの岩が重機できれいに退けられていた。大きな岩の上は鳥のフンで白い。


民家が現れ始めた。ゴミ置き場を右に曲がり、最後の橋をわたる。欄干のない橋、いわゆる沈下橋だ。河の流れにさまざま波紋があるのに気づく。亀の甲羅、蛇の抜け殻のような水紋だ。


上流の堰では川幅いっぱいの水流が暖簾(のれん)のようだ。農協を抜け図書館につき、入り口で体温を測る。一服。図書館を後にする時には風は止んでいた。(780文字)



以上です。

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