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もっと怒れ! 憤怒せよ! 

2201文字・15min


一月三日(水)曇り。体重91.8kg体調は悪い。腰はまだ痛い。

「アンタにいったい何ができるの? 働いてもいないのに」頭がぐるぐる。「アンタにいったい何ができるの? 働いてもいないのに」悪夢で目覚めた。七時四十五分。これから一生、この悪夢に苛まれるのだろうか? 完全なトラウマだ。執筆にも不安が翳る。去年の年末の十二月の一ヶ月は執筆を安定させるために、庭の重い石を移動したり、第二執筆部屋や読書スペースを作ったりした。だがそれらがみな無駄に思える。いや。まだ間に合うはずだ。不安だ。いまは一時的にでもすべてを忘れて読書をしよう。黙って読書をしよう! 頭が思考で満杯になったら書き殴れ! おれがいったいあいつに何を言ったっていうんだ! 祖父の家の土地の権利書や借金の問題を聞いただけだ。おれはあいつの人間性にはどこにも触れていないのに。どんな謂れがあって「おれが無職」をあげつらうんだ?それにやつは医療従事者だろうが? うつ病患者のうつ状態の辛さやストレスや将来が真っ暗としか思えない恐怖感、それと躁状態になったとたんにおそう病魔へのあせり、さらには、また警察に捕捉されて、三度目の閉鎖病棟にぶちこまれるんじゃないか、という凄まじい恐怖感と戦う躁うつ患者への無理解さ… わすれろ! わすれるんだ! やつにおれが無職で何もできない社会的不具、社会不適格者と言われる筋合いなどない。忘れるんだ。一生、わすれることなどできない。嫌な不吉な「予感」が頭を横切る。原爆級の、ばかでっかいうつが、おれの頭に落っこちたら、今年一年は灰と化す。一年丸々一巻のおわりだ。安定剤が欲しい。アッパー系だ。向精神薬が欲しい。合成麻薬でも麻薬でも覚せい剤でもなんでもいい。死にたい! 少なくとも奴らより早く死にたい。俺は奴らより早く老いてこの世をさっていくべきだ。死ぬまでに悪魔が(怯える)ような物語を書きたい。まずはカーテンを開けよう。二階のカーテンをすべて開けて部屋に太陽の光を入れるんだ。九時十一分。尿が茶色だった。読書をしよう。頭のなかに恐怖や煩悩が湧きでたらメモ帳に書き殴っていこう。読書とは自分のためにやるもんだ。他者に自分の知識を開陳するためや自己承認欲求を満たすための手段なんかじゃない。今の生きづらさや地獄の苦しみの穴から自分を逃避させ一時的にでも癒すために物語はあるんだ。オウム真理教の元信者は限界を越える死ととなり合わせの苦しい修行のなかでもなぜか「小説」だけは手放さなかった。小説にどっぷりと浸かる。時空を超えて苦しみを忘れる。自己を癒す。それが読書だ。また執筆でもある。十一時三十四分。気だ! 気力だ! 気力が落ちる。気力が落ちると行動に移せなくなる。おれ!起きろ。起きるんだ! 散歩だ。もっと怒れ! 憤怒せよ! おれが一年をダメにしても奴は「やはり無職が何もできなかった」と、せせらわらうだけだぞ。奮起せよ! 「ほらやっぱり、仕事もできないで家に居るだけの人間のクズじゃないの!」 常識人には勝手にいわせておけ! 常識人は弱者の心のいたみなど「常識」を頭ごなしに押しつけて、「常識」で勝手に他者を評価して、他人を見下すことではじめて自分を確認する。他人を軽蔑して自分を安心させている人間なのだ。常識人は人間の心の弱さや苦悩を「常識ができない不具者」と一括りにする偏見の塊なのだ。家をでよう。散歩だ。十一時四十五分。力が出ない。飯を食っていないんだ。赤飯を弁当に詰めて外に出かけよう。公園で食べよう。


以下、散歩。

風はない。温かく感じた。だが体温はどんどんと下がる。駒形神社の前で女性に「こんにちはー」と挨拶される。「おめでとうございます」と応えると。「あけまして、おめでとうございます」と返された。家族よりも人間味を感じてしまい感極まった。公園で赤飯を食べる。七人の三世代家族が孫に凧揚げを教えている。なんて幸せそうなんだ。赤飯を食べても体は温まらない。向こうのグラウンドで親子がキャッチボールを始める。十四時十分。家に帰る。孤独とは自分が誰にも理解されないことだ。これから、おれが階下の仏壇を破壊したら、おれは一生、人を殺めた殺人犯のように悔恨に苛まれるだろうか? うつは、牙を剥いておれに襲ってくるだろうか? 自分の手で一年を潰してしまうだろうか? 人を殺せば刑務所に入ることは事前に想像できる。刑務所は嫌だ。被害者家族を想像できるし加害者の身内も想像できる。想像できる人間は人を殺したりなんかしない。殺人ができない人間は仏壇を破壊できるだろうか? おれはこの土地に居られなくなるだろうか? 

百日紅

想像はできない。十五時二十三分。仏壇を壊した。ナイキの木製バットで。粉々に。現実は何ひとつ変わらなかった。おれは狂っているのか? が、不思議なことが起こった。俺の体内に渦巻いていた凄まじい熱が手や足の先からすぅっと消えた。頭が狂うほどの怒りがどこかに消えた。これでいい。創作意欲が消えたなら大問題だが。まだ、ある。おれは俺の道を歩む。だれに馬鹿にされようが、これからもおれはひとりで小説を書いていく。いや、ひとりじゃない。猫がひざに頭をぶつけてくきた。十五時二十五分。「(仮)家族の血」冒頭(書簡形式)を、スケッチする。夜は読書。「タイタンの妖女」読了。「カラマーゾフの兄弟(下)」に取りかかる。「火宅の人(上)」も同時進行。



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