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小説『ゴッド・マザー』全取材ノートvol.1 有料マガジンのご案内 / 20230322wed

6057文字


マスター(73歳)中国料理『喜ちゃん飯店』の創業者、キッチンの責任者
オカミ(71歳)マスターの妻、ホールの責任者
リョーマ(34歳)マスターの長男、チャーハン、ご飯類を担当
ミホ(28歳)リョーマの妻
ナオ(32歳)マスターの長女
アキラ(34歳)ナオの夫(水道設備会社勤務)
タツ(46歳)キッチン(既婚)あんかけ、かた焼きそば、八宝菜を担当
ナオキ(36歳)キッチン(独身)ラーメン、ぎょうざを担当

シゲ(YouTuber)
ヤマ(63歳)パートの女性
ヒカル(34歳)リョーマの同級生
ハル(16歳)アルバイト、地元の女子高校生(昼メイン)
ケンイチ(17歳)アルバイト、地元の高校生(夜メイン)
マミ(25歳)妊婦(妊娠6ヶ月)

アキ(36歳)、喜ちゃん飯店のアルバイト

3月17日金曜日(創作日)

■序

  1. 男は道端で自転車に乗ったまま倒れていた。起き上がる。

  2. (この物語が小説であることを読者に提示)

  3. だが男はなぜか自分でこれから何をすべきかを知っている。

  4. 物語の男は筆者(蒼井瀬名)と同化している。これが私小説である根拠。

  5. 男の背景(対人恐怖症、躁うつ病、性根など)は描写(苛立ちの態度など)で小説の裏側で起こっているが文章(文字)には現れない。

  6. 5.はヘミングウェイの氷山の一角理論(下記)だ。

  7. 「書き手が熟知していることだったら、わかっていることは省略してもよい。読者は残りの部分についても書かれている感覚を受けるはずだし、その省略は作品に力を与える。しかし筆者が知らないという理由で省略してはならない。それをした場合、そこに残るのは空虚だけだ」

◉序に登場する道具(レジュメ)。


男。ロードバイク。地図アプリの音声ガイダンスの女の声。季節。春。ポカポカ陽気。畑。道。県道。信号機。青空。遠くに見える景色(赤城山、榛名山、JAビル、北関東自動車道の側道、連翹(れんぎょう)、菜の花、黄梅(おうばい)、白木蓮(はくもくれん)、辛夷(こぶし)、水仙、桜、藤棚のある公園。

序(冒頭)で書くべき(削除できない)プロット(構成要素)

⑴男は道端で目覚めた。記憶がない。
⑵アルバイトの出勤途中だったはずだ。
⑶アルバイトを始めて二日目だ。
⑷この時点でバイト先が中華料理屋であることは男は知らない。

★注意★

⑴〜⑷以外のメインプロットが付帯的に膨らんでしまう出来事や風景や心象などの要素はすべて排除する。

■レジュメやプロットに対して具体的にどのような形で登場すべきなのか? を考える。安易に(これが重要だ)そのままそれら固有名詞を登場させて、特別な筆者の意図がないかぎり、ダラダラと読者に説明しない(どんなに書いても本稿に採用されなければ無駄な文章だ)。

◉例えば、物語の舞台が戦争中とする。窓の外から大砲の音が聞こえる。来客が「外では外国の戦車が走りまわってる」のセリフ。だが「戦争」「ウクライナ」「ロシア」「ゼレンスキー」「プーチン」の言葉は本稿には書かない。だが「戦車」は書く。なぜか?
素人は、物語にレジュメの言葉を安易に登場させてしまう。すると例えば「戦争」「ウクライナ」「ロシア」をだすと、筆者は物語の世界観を強固にするために、それらに関してさらに深掘りした知識を読者に説明する必要にせまられる。その結果、書いていた文章の収集がつかなくなる。ときに筆者の筆が乗って、色々筆者が思い描いたことをつらつらと物語に盛りこんで書いてしまう場合もおなじだ。こうなると執筆は悪循環におちいって、書いてしまった世界はさらに無駄に本来(当初の小説のアイデアでは)書くべきでなかった分野にまで広がって、物語の文脈はだらだらと要らぬ方向へ広がってしまう。結果、筆者はただ長いあいだ無駄な文章を書いていただけということになる。負のスパイラルだ。これらは名作家でもたまに陥る沼だが、だれでも「物語にどうしても書かなければいけない要素・物語を構成するにあたっての必要最低限の知識」を意識すれば、効率よく執筆がすすむ。熟練のプロ作家と素人のちがいは、後にカットする場面の精査と判断が事前(あるいは執筆経験から身についた肌感覚)でわかるということだ。
まずは膨大な量のレジュメ(言葉の断片)をノートの白紙部分に書きだしてみて、そのあとにレジュメの中から必要最低限の言葉(一割だ)をえらんでプロットを組み立てる。それが今般マガジンの小説を作るやり方だ。

■男のキャラの描写についての創作メモ

◉物語の文脈上、その描写は絶対に必要であれば本稿に残す。
例)
⑴心の病がある
⑵男の体型は太っている(心の病の副次的結果)
⑶過食の傾向だ(心の病の副次的結果)
⑷食べると自己嫌悪に苛まれる(心の病の副次的結果)
⑷ほとんど一日中部屋で寝たきりだ(心の病の副次的結果)
⑸着る服(ズボン)がない(心の病の副次的結果)
⑹外に出たくない(心の病の副次的結果)
⑺心の病で執筆は進まない(心の病の副次的結果)

上記の⑴〜⑺の状態は本稿では、直接的なことば(心の病、過食、寝たきりなどの言語)では書かない。風景描写や静物描写、あるいは会話で間接的に示唆する。

物語では男に店の大盛りのまかないがでる。女将から店のロゴが入ったシャツやサンダルを貸与される。制服やサンダルが男の体型に合わない。男は女将に文句を言われる。男は困惑する。この場合も⑵〜⑺は書かない(三人称の外観描写の強みで書く)。

序 Vol.1・スケッチ

目を覚ましたとき、男は菜の花畑に倒れていた。
鼻についた黄色い花粉を手で払い落として、男は顔をもたげた。男が乗っていたロードバイクは道端に、スタンドが立てられたまま、そこにあった。
男は、安堵のため息をついて菜の花畑のなかにあおむけになった。春の青空は菜の花の額に入った油絵のように見える。
「このさき、五十メートルの十字路を、高崎方面へ右折です」
女の声が聞こえる。男はもう一度、頭をもたげる。目の前はアスファルトの道路だ。男は目を瞑って耳を澄ませた。右手で、しらさぎが二羽ばさりと飛び立った。春に湧いた虫の柱が頭の周りでうるさい。それから足元にあるロードバイクの向こうを車が二台、通りすぎた。
「移動手段を、電車と徒歩に切り替えます。逆方向に向かって、そのまま三キロメートルを歩き、左へ曲がります」
女の声は、ロードバイクのホルダーから聞こえる。スマホの地図アプリの女の声だった。男は地図アプリの女の声が完全に沈黙するまで、そのままじっと春の青空を見つめていた。ひこうきぐもが二本、時間をずらして南下していった。
男は首をかしげる。
「妙だな。記憶が落ちてる。」
男は自分の記憶の一部が紛失していることに気がついた。男にはそれさえも自信がなかった。もしかしたら、いま春の菜の花畑に横たわる男の方が、本来の男が落とした記憶なのではないかとも思える。だが男はそれ以上そのことについて深く考えることはやめた。時間が迫っている。バイトを始めて二日目の出勤だった。男はとにかく地図アプリの音声に従って目的地に行くことに決めた。

向かってきた高速の側道を道なりにロードバイクを漕ぎ始めると地図アプリの女はまた案内方向を戻した。このまま走ればあと五分で目的地に到着する距離だった。

序 Vol.1のFB(フィードバック)

  1. 音声アプリの女の声の登場はあった。がメインプロットには関係なし

  2. 男が倒れた衝撃の跡は書くべきか?

  3. 男は自分がなぜ菜の花畑に倒れていたかを動作で確認させるべきか?

  4. 物語のベクトルは中国料理屋

  5. 男の動機は4.によって突き動かされる(寄り道はしない)が、メインプロットを構成する要素は書き加える。後日で構わない。

  6. 男は安堵のため息(なぜ安堵?)カット? 怪我をしていない安堵であれば3.を挿入する。

  7. メインプロット(進行方向)を変えないで、場面を膨らませることは可能か。

序 Vol.2・書きこみ

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