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派遣王女☆ウルスラ / 第13話(4,838文字)

■第13話■


さらば、ファティシマ王国


扉絵


1頁 スノーデル国王のスポット


スノーデル国王登場
…ツカツカツカ……トン
スノーデル国王は読者に深く頭をさげる
「今回はエッダ婆とガルド婆のエピソードじゃ」


2頁 女王の間(1)


舞踏会の後、女王の間
ヒルダ女王の間
テーブルに食事はならぶ
みんなはワイワイと食事をしている
ウルスラはナシゴレンとトルコケバブをほおばり、ルーシーはお子様ランチを食べる。フリードはいくらの軍艦巻きをフォークでさして、サクラに手でつかむか箸でとりなさいと叱られる。ボッチはルーシーの口元についたチキンライスをとって口に入れ、エッダ婆に訊ねる
「これでフリードが火事で赤ん坊を助けられなかった件は解決しました。それで、あの時空にもどるにはヒルダ姫の「わらべ唄」を、ウルスラ嬢、私、ルーシー嬢、サクラさんで奏でればいいんですね」
エッダ婆はもり蕎麦を啜って
「そうじゃな」
突然、サクラはさけぶ
「私、帰らない!!」
そういってサクラはフリードを見つめる
フリードは食事をつづける
ボッチは
「えっ!! 大変なことになりますぞ!!」
ウルスラは訊く
「どういうこと?」
ボッチはおにぎりを噛み砕いて水で流しこんでから答える
「こちらにはこちらのサクラさんがいるわけで、タイムパラドックスが起こり、過去も未来も消滅する可能性があります」
ガルド婆はおでんを食べ終えていう
「わしがエッダに伝えに行こうかの。のうエッダよ」
エッダ婆は蕎麦を啜る箸を止めて
「よろしゅうの、ガルド婆」
ボッチは驚いて
「どういうことですか? おふたりさんは昔からの知り合い?」
エッダとガルドは口を揃えていう
「いつまでも時空をさまよいつづける腐れ縁じゃ」


4頁 エッダとガルド



ひと昔前、スノーデル国王の時代
その辺境のさらに辺境の森の奥地
闇に聳える大魔王城の影

バサッ

ピカッ
雷が落ちる
魔王の間の床に降ろされるふたりの美少女
大魔王
「ほう、また…ワシの嫁候補か…ガッハッハ」

「ひとりはグレナダ王国にあるガイアの滝壺の獣の腹から」
「もうひとりは東の果てにある日出る国の姫でございます」

「名は……奪ってあるのだろうな、ガッハッハ」
「ハッ、記憶から抜いてあります」

「『名』ほど無意味で無価値なものはないからな」
「ハッ」

「宇宙のゴミうんこカスである『魔王』を生むか」
「愛しい我が子である『勇者』を産んでくれるか」
「…あるいは……のたれ死にするか」
「…楽しみだな…ガッハッハ」

「『地下牢』へぶちこんでおけ…ガッハッハ」

「ハッ」

大魔王城の地下には鬱蒼と森が広がっている
その森では世界から悪魔たちに拐われた女たちが村を作って暮らしていた

目覚めるふたりの少女

「あなた……名前は?」
「…わからない…あなたは?」
青髪の少女は赤髪の少女の胸元をみる。名札がある《織姫》
「読めない…」
赤髪の少女は青髪の少女の首にぶら下がるロケットペンダントを開ける
「…読めない」
「どう見せてみて」
自分のロケットペンダントをみる
「…エッダ・Z・マキナ。私きっとエッダだわ」

ある日、女の村に悪魔がふたりやってきた

井戸で水汲みをする女、畑仕事をする女、みな震えた

「おい、そこの機織りをしているお前来い、仕事だ」
「大魔王さまの世継ぎを産みおとしたら出世だぞ」
「バカ、ポチの魔獣ズルタンに喰われちまうだけだ」
「ガッハッハ、痛みや苦痛があるってのは悲しいなあ」
「悲しいってなんだ? ガッハッハ」
「で、ガッハッハってどういう意味だ?」
「そりゃあ、ガッハッハって意味だ」
「ガッハッハ」
悪魔たちは村を見まわし
「哀れな女たちだ」
「哀れってなんだ? ガッハッハ」
「あー悪魔でよかった。って意味だガッハッハ」
機織りをする女は手を止めて家からでてくる
「来い、早く歩け」
「私も行きます」
「なんだ、井戸汲み女か」
「じゃあ連れて行ってやるぞ」
「ガッハッハ」
ふたりの女はふたりの悪魔に連れられていく
「お前たちも、ガッハッハをやれ」
「ガッハッハ」

スノーデル国王の登場
…トン
国王は紙芝居を始める
「大魔王の地下の森からエッダとガルドの大冒険は始まった…まずは村のはずれの森の岩にささる「さびた剣」ゲットしてドワーフが仲間に…それから大盗賊団に潜入「時空の砂時計」をゲットして舞踏家が仲間に…それから空挺機械都市にて「天空のはね帽子」をゲットして詩人が仲間に…消える砂漠の楼閣にて「盗賊の角笛」をゲットして算術士が仲間に…水の都(裏切りの王妃イベント)にて最強デュオ呪文「グラン・デュ・リルデ・ラトバリタ・ウルスラ・アリバルボッチ・バルゴ・ルーシーリール」を覚える…炎の山でファイヤードラゴンを討伐して「烈火の鎧」と「闇力の盾」をゲットして商人が仲間に…闇の教皇ジルダルマ枢機卿を水鏡(みかがみ)の洞窟で化けの皮を剥がして地獄の鍵をゲットしてブラックゴーレムが仲間に…悪徳商人のカジノの街にて「反重力のローブ」「静謐のハゴロモ」をゲットして幇間が仲間に…始まりの酒場のバーカウンターの床を調べると隠し階段を見つけ、そこをおりて盗賊の角笛をふく。すると隠し扉がひらき、魔物たちと隠しイベント酒樽割り大会(賞品は時空の鍵)をやる。優勝して裏ボス《ゴッド》が仲間に…ボスの城が見えるモルデゴーグシュタイン山脈の麓にある時空のひずみの森にふみこみ地獄の回廊の最下層にて、揃えた八つのオーブとともにドワーフ、舞踏家、詩人、算術士、商人、幇間、ブラックゴーレム、《ゴッド》の導かれし八人の仲間がかがやき、裏ダンジョンへの闇の扉がひらく…」


5頁 魔王の資格


大魔王城
雷が落ちる
大魔王
「いつかのオナゴ……」
「小賢しい真似をしおって!!」

魔王城の王の間に聳えるステンドグラスに闇の影あらわる
闇の雲のようなゴッドはしゃべる
「だれが小賢しいのじゃ!!」

大魔王
「ぎゃッ!! ゴ、ゴッドさま!!」
ゴッドは捲したてる
「キサマは日頃はどこでなにをしとるんじゃ!!」
「無能な悪魔にどうとも取れぬいい加減な指示ばかりだし」
「ふたりが成長して仲間も装備も準備を万全に整えてやってくるまで」
「自分だけ大魔王の玉座にのうのうをふんぞりかえって」
「今回は、地下の牢は管理もそうじひとつ行き届かずに…」
「野放図な森状態になっとった…」
「酒場やちょっとした街までできておったぞ!!」
「その間はこのふたりはアイテムをわんさかゲット!!」
「仲間のレベルはもうわしと同等の裏ボス級だぞ!!」
「きさまは魔界経営者失格!! 大魔王級の失格だ!!」
「中間管理職でさえも魔王級の失格じゃ!!」

ゴッドは仲間に
「みんなも言ってやれ」
ゴッドを含めたドワーフ、舞踏家、詩人、算術士、商人、幇間、ブラックゴーレムの導かれし八人の仲間とエッダとガルドは声を揃えて
「大魔王、失っ格ー!!」

大魔王
「ぐあああぁああああ〜!!」

ゴッド
「とは、いうものの。だ」
エッダとガルドのふたり
「え!?」
ゴッドは大魔王の後ろにまわりこんで
「わしは裏ボス、ゴッドだ」
エッダとガルドと7人の仲間は
「えっえ〜ッ!!」
「わしも知らんが、世界はそういうふうに『できておる』んだな」
ゴッドは大魔王の胸に手を刺し、心臓を握りつぶす
「ぐあああぁああああ〜!!」



6,7頁 2頁見開き大決戦



伝説の裏ボスゴッドと
エッダとガルドが率いる導かれし七人の勇者と戦いの絵


スノーデル国王は紙芝居を仕舞い、深いお辞儀をして去る



8頁 女王の間(2)



エッダとガルドは口を揃えていう
「いつまでも時空をさまよいつづける腐れ縁じゃ」
ボッチは驚いて
「…ということはふたりとも…」
「まだ元の時空に戻られていない」
サクラはツッコむ
「でも、途中、端折ってないですか?」
エッダはガルドと見つめ合って、笑う
ガルドは話を継ぐ
「あの物語と最後の決戦はのう……」
エッダはいう
「わしらと七人の勇者の物語なんじゃよ…」
ガルド婆はエッダを見つめ
「ブラックゴーレムがゴッドの攻撃の盾となり」
「ゴーレムの肩に乗った詩人が詩で結界を張って」
「算術士はゴッドの次の行動を計算して」
「幇間はわしらを鼓舞して」
「商人は調達した大砲に銃弾を詰めこんで」
「ドワーフが大砲をぶっ放した…」
エッダはつぐ
「死闘の末、私は勇者の剣を…」
「ゴッドの心臓に刺した」
「それから破滅の呪文を詠唱した」
「だがゴッドはそれを撥ね返した」
「その封印の呪文をガルドが……」
わしの代わりに浴びて…地蔵になった」

「わしらの物語はここまでじゃ
ウルスラは訊ねる
「じゃあ、七人の仲間はまだこの世界にいるんだね」
エッダとガルドは笑顔でうなづいた
エッダはいう
「じゃからわしらはええんじゃ。ここに永住しておる」
ガルドはいう
「わしはこの世界では地蔵の姿で不便しないからの」
サクラはきく
「じゃあガルドさんって、中身はめっちゃ美人の人?」
エッダはいう
「封印されとるからまだ中身は年取ってないんじゃないかの」
ガルドは笑って
「野暮だね。やめなそんな無粋な話は。かっかっか」
エッダはつぐ
「ということで、私らの物語は私らの物語」
「ウルスラたちの物語は自分たちで切り開くんじゃ」

サクラはさけぶ
「じゃあ私もここに永住できるってこと?」
エッダは
「好きにすればいい」
ガルドは
「じゃが、今いるサクラには迷惑かけぬようにな」
サクラは大きな声で
「はいっ」

ボッチはエッダに
「それでパブロさんのことづてですが…」
エッダはハッと
「ああ、手紙の返事だ」
ボッチは
「そうでございます」
エッダは色々なものが入った袋をボッチに渡した
ボッチは
「なんでしょう?」
エッダは
「これから色々と物入りかと思って」
ガルドは
「ふたりであれやこれや入れておいたよ」
ウルスラは
「勇者の剣は入ってる?」
エッダとガルドは
「入ってはおらん!!」

ヒルダとフリードとサクラは笑う



9頁 お別れ



出会いの酒場ののれんの前
翼竜タクシーが止まっている

ヒルダ王女、エッダ婆、フリード、サクラ、ガルド婆
みんな揃っている

ウルスラとボッチとルーシーは翼竜タクシーに乗り込む

ガルド婆は
「吐き出された火山の火口に飛びこむんじゃぞ!!」

エッダ婆は
「こちらでわしらができることはあるな」

ウルスラは
「アリスたちに手紙書いたんだけど、こっから出せる?」
ボッチはツッコむ
「お嬢、滝壺の孤島には郵便が来ない……ん?」
ヒルダ王女は目の前のビルをさす
「あそこ。国際郵便もあります」
ズコーッ
エッダ婆
「滝壺の孤島には郵便が来ないっていうだけじゃ」

ウルスラはエッダ婆に手紙を渡す
「じゃ、これ、速達でお願いします」
「パブロさん所によったらすぐ帰るって」
「じゃあね、みんな!!」

バサッバサッ

翼竜タクシーは月夜の空に舞いあがる


バイバーイ!!



10頁 ダイナソー・キャンプ



グレナダ王国、真夏、かんかん照りの陽射し
ダイナソーズ・キャンプに絵葉書がとどく

エプロンをしたドワーノフは走ってくる
「カテリーナさま!!ウルスラさまから手紙です!!」

カテリーナはエアロビダンススクールをしている
「なに? ドワーノフ!? はいみなさん、ワントゥー、ワントゥー、もうすこし太ももを高くあげてぇ〜」

ドワーノフはスタジオに走ってくる
「キューブリックさま!!ウルスラさまから手紙です!!」
料理番組を収録していたキューブリック女史は
「はは、すみません、みなさん。撮影を止めちゃって…はは……」

ドワーノフは砂漠のど真ん中に建てられた巨大カジノ城に駆けつける
「カフカさま!!アリスさま!!ウルスラさまから手紙です!!」
ふたりは覆面イリュージョンコンビで、象のピラミッドに被せた布を引いた
「え、ウルスラから!?」
階下にあるスロットマシーンの7が、すべて揃った
「ギュウーギュウーギュウージャジャン!!」
「ピロリロピロリロピロリロ!!」


みんなダイナソー・キャンプに集まる
アリスは
「カフカさん、はやく読んで!!」
カフカは封筒をひらき写真を取りだす
みんな顔をのぞく

雪国でウルスラとルーシーが雪合戦している写真だ

「え、なんで雪国?」

手紙を読むみんな

「よし、次はあそこだ」

キューブリック女史は小さく手をふる



第14話へつづく


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