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《語彙の三語三文》:手書き帖 4.16〜4.22

 

2417文字・15min




4/月16日(火)

【不逞・ふてい】
⑴「不逞な輩は根絶せよ! 」
⑵「キサマこそ不逞の匪徒(ひと)だ!」
⑶「勝手気ままにふるまって、アナタ不逞だわ! 」
「毎晩、おれに抱かれるためにそのドアを開ける君は何者だい? 」

【匪徒・ひと】
⑴匪徒・匪賊を根絶やせ!
⑵「だがね、君は澤くんを匪徒だとかいうが、ウチの界隈じゃあちょっとしたモンだぜ」
⑶徒党を組んで匪徒が再来してきた。

【電光石火・でんこうせっか】
⑴電光石火は夏目漱石がつくったことばです。
⑵「あなた、今晩も電光石火でしたわね」
「…… 」
⑶「教授! 今日のオペも電光石火でした。さすが、見事な縫合でした! 」
「ウン」
「教授! 鉗子とガンマナイフと手袋が見当たりません! 」
ガラガラ。
「先生、教授回診のお時間です」
「わかった。チミたち。ちゃんと見つけておきたまえ」
「かしこまりました」


4/月17日(水)

【颯爽たる・さっそうたる】
⑴「これは颯爽たるウンコだ! 」
「どういう意味だ? 」
「勇ましいウンコってことさ」
⑵息子の颯爽たる風姿
⑶おれに平手打ちを喰らわせた彼女は、ふりむき、颯爽と坂道を駆け上がっていった。夕日が目に染みた。

【ルンペン】
⑴「上野周辺にルンペンが一斉取締りだ。あそこに行けなくなった」
「いつの時代の話だ? 」
「安倍公房の《箱男》の冒頭だからたしか……  」
⑵「ルンペンは差別用語か? 」
「そんなの気にしてたら文学なんてやってられねえぜ」
「嫌な世の中になっちまった」
⑶「ルンペン」「アンパン」「逆さくらげ」「赤線地帯」「トルコ風呂」「ヒロポン」みな消えた言葉だ。

【手甲脚絆・てっこうきゃはん】
⑴手甲は武具としても使う。脚絆はすねぬtけて足ごしらえとした紺木綿などの布。
⑵「手甲脚絆と三角頭巾といえば? 」
「関東大震災! 」
「おまえの年齢はいくつだ? 」
⑶出征のとき妻に渡された手甲脚絆をにぎる。
あのとき妻は女学生だった。
今は白寿を迎え、カシミアのマフラーに革手袋。ロングブーツ姿だ。


4月18日(木)

【勾引・こういん】
⑴私の身辺に対する当局の追及の厳しさは明日にでも身柄を勾引しかねぬ状態である(広瀬正《マイナス・ゼロ》87頁)
⑵君の心を勾引したい。
⑶「君のハートに勾引状! 」
「君の瞳を逮捕する! みたいに言わないでちょうだい! 」

【遷延・せんえん】
⑴政府はまた政策を遷延した。
⑵「今の政府じゃなあ」
「政権交代だって遷延だ」
⑶「私は遷延性意識障害なのか! 」
「ちがう! それは植物人間のことだ! 」

【ぎゃふん】
⑴「ぎゃふん! 」
「どうした?」
「あー、すっきりした」
⑵「おれはいつかお前に」
「ぎゃふん!」
「……  」
⑶明日は早苗との夜だ。彼女をぎゃふんと言わせてみたい。よし、これを飲もう!


4月19日(金)

【企図・きと】
⑴「あの女を落とす企図をここで発表する! 」
「こいつ、ぜったいに落とせないタイプの男だな」
⑵再建を企図する。
⑶「君のその企図する目論みの内容の目論みの真の企図はなんだ?」
「ぼくは先輩の日本語がわかりません」

【噛む・しがむ】
⑴銀を噛んでみる。しがめばしがむほど鉄のほうが味わい深く感じる。
⑵酒の肴にスルメをしがむ。
⑶「私あの男嫌い」
「なんで? 」
「いつもしがんできて、貧乏ったらしいの」

【蹌踉う/蹣跚う・よろぼう】
⑴蹌踉いよろぼい、座敷の方へと行ってみると(藘花➡︎思い出の記)
⑵「見ろ! 大門がよろぼいてきたぞ! 」
⑶50年前、前からルンペンがよろぼいてきた。ルンペンかと馬鹿にしていたら、すごい速さで老いた。殴られ、僕の全財産を奪って消えた。だからぼくはいま、このタイムマシンに乗って、取り返しに行くのだ。


4月20日(土)

【坩堝・るつぼ】
⑴さあ、すきな坩堝をひとつだけ選びなさい、騒音の坩堝、異性の坩堝、邪念の坩堝、快楽の坩堝、偽りの坩堝、愛の坩堝……
⑵ガラス製の坩堝
⑶青春の坩堝の中の落とした思い出

【遮蔽物・しゃへいぶつ】
⑴成長の遮蔽物は親だ。
⑵ほんのわずかでもあの遮蔽物を前に押し出してくれ(小松左京《日本アパッチ族》)
⑶遮蔽物は避けたり飛んだりするんじゃない、爆破せよ!

【該博・がいはく】
⑴そのきみの該博さを僕にくれ。ヤダ。
⑵「ママ、明日、伊丹該博くんと外泊する」
「どこ? 」
「該博温泉の♨︎」
「まちこ! あんたって子は!」
「ちがった。♨︎温泉の該博旅館だわ」
「なら安心ね」
⑶君が落としたのはこの「該博の書」かね? それともこっちの「ディズニーリゾートホテル外泊券かね? 」


4月21日(日)

【野次馬・やじうま】
⑴「さあ、野次馬たちが火事場に向かって一斉にスタートしました! 」
⑵その野次馬たちは皆火事場泥棒だった。
⑶「ヤジを飛ばす馬ってのも野次馬ってのかい?」
「いい質問だ。それが小説ならそれでいい」

【四角・しかく】
⑴四角い死角
⑵死角の資格
⑶女の死角。脇。耳元。母性本能。

【割烹着・かっぽうぎ】
⑴割烹を着たヌード撮影会は大盛況に終わりました。
⑵割烹着専門店は二日目で廃業した。
⑶割烹着プレイ。



4月22日(月)

【走査・そうさ】
⑴「おどる大走査線」
「言うと思った。字が違うぞ」
⑵走査周波数はリフレッシュシートとも言います。
⑶「だから、走査の説明はしてくれるんでしょう?」
「……  」
「やなやつだ」
「ふ。」

【立つ瀬・たつせ】
⑴君に断られては立つ瀬がない。
⑵「立つ瀬をくれ」
「課長でどうだ? 」
「もう一息! 」
⑶「はーい。立つ瀬、1000円から! 」
「10000円! 」
「10100円!」
「10200円!」
「10300円!」

「逢ふ瀬もつけるよ! 」
「50000円!

【断固・だんこ】
⑴「断固拒否する!」
「なにを? 」
「あ、まだ決めてなかった……  」
⑵「断固たる決意で君を愛するよ」
「おも!」
⑶「はーい。お笑いコンビ、断固バンコでーす」
「バンコはイタリア語で銀行です」
「断固銀行! 」
「になりまーす」
「今日の福聚苑のおじいちゃんおばあちゃんたちはとても静かですねー。ここでもっと笑っていいんですよー」


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