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800字日記/20221121mon/135「やど探し迷走録(前編)」

やっとこれで宿探しは終わりだ、と全身の力がぬけて机に突っ伏す。目の奥がいたむ。丸二日、パソコンのディスプレイを見つめ、新潟、長野、西東京全域の賃貸をさがした。フリーダイヤルにかけると不動産屋に転送される。あるいはクリックするとすぐに電話がくる。いまの時代は顧客と不動産屋をつなぐ業者が一枚かんでいる。

いっぺんにこんな人と話したのは何年ぶりか。たくさんの人と話をした。自分が正しい前提でぼくの意見を鼻で笑う人、カワボ、イケボ、おっとり系、ベテランセールス巧者、滑舌が悪い若い女、好青年、喋りが早すぎて聞き取れない、やる気のない声の若い男、声が消えそうなほど細い女、さまざまだ。

最後は新潟市の安アパートに落ち着いた。新潟の店舗の女性スタッフの対応も真摯で満足だった。現地の人というので冬の新潟を色々と聞いて、決めた。初期費用が破格だった。他の不動産屋では初期費用が倍もするところがあった。

引越しのサカイに電話をかける。夏に見積もりをしてもらったスタッフは休職中だった。その彼女は東京農大をでて田舎の熊本に戻って牧場で働いた。牧場の経営がかたむくと一族の経営者にリストラにあった。父は外交官でデンマーク生まれだった。

「わかりました。では27日の月曜日の昼にあらためて見積もりにお伺いします。北陸への相乗り便になると価格は八万になります。到着は遅延する可能性があります」といわれ、胸をなでおろす。資金は足りる。

両腕を伸ばしてパソコンを閉める直前、Googleマップをみつめる。瞬きをする。いやな予感が背筋に走った。

新潟の新居は取材地である糸魚川、親不知、白馬、安曇野、松本、塩尻からはあきらかにとおい。兵士が上陸する親不知までは東京から静岡とおなじ距離だ。松本にいたっては東京〜名古屋間とおなじだった。うなだれる。

さらなる事実が発覚する。となりの富山県なら毎日ロードバイクで視察にいける距離だ。椅子から崩れ落ちる。

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ペンパルの舞ちゃんからプレゼント。美味しく頂きました。^ ^

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