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800字日記/20221123wed/137「やど探し・エピローグ」

ネコの鳴き声が聴こえる。朝の四時だ。雨音が聞こえる。ネコの鳴き声はガラス戸を隔てて聴こえてくる。ハッと目覚め、慌てて戸を開けると体を濡らしたネコが部屋に入ってきた。タオルで拭いて暖房をつける。寝ぼけたぼくに締め出されたようだ。ネコが餌を食べる音を確認して、戸を閉めた。

目覚める。八時過ぎ。今日は勤労感謝の日だった気がする。体育の日も天皇誕生日も名が変わった。ググる。まだあった。国民の祝日を祝う法律によれば「勤労をたっとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう」を趣旨とする日だ。

長野の松本と諏訪にしぼって賃貸を探す。ここは取材地の本丸だ。無法地帯の地獄と化す物語のクライマックスだ。

物件は呆気なく決まった。ある興味がわき、スタッフに尋ねる。「長野県は全国に比べ水道料金がほぼ二倍の料金なんだけど、なぜまた長野県は水道料金に下水道料金をふくむのかな」彼は知らないという。

電話を一旦切って、見積もり書を作成してもらう間に「諏訪湖」をググる。諏訪湖は地殻が引き裂かれて生じた断層湖で、地面が陥没して水が溜まって形成された構造湖だ。流入河川が三十一あるが流出河川は天竜川のみのだ。例えが下品だが、排水管が細くてながれがわるい便器に溜まった水のような湖だ。

江戸期には蜆(しじみ)が放流され漁業も行われるほど水質の良い湖だった。が戦後の高度経済成長で過栄養湖へと変化し水質汚染は深刻になった。地形的に長野県は広く人口密度が低い。給水区域が点在して水道の配管は長い。汚れた諏訪湖の浄化費用や朽ちた水道管の補修費を県民に上下水道で負担させているのか?

電話がかかってきてその旨を彼に話し、ひとつアイデアを言う。
「それは僕もやろうとしました。下水道費だけを取るんだったら風呂に溜めた水とかを外に流せばいいと思った。けどメーターは上水道管についている」

ため息をもらす。
「諏訪は都市ガス。それが救いです」
プロパンだったら泣きっ面に蜂だ。
(800文字)

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下記は、今日の写メの備忘録

引越しのぼくのジンクス《引越しと雨》
波の音に吸い込まれるように浜に降りた。
空のグラデーションはきれいだ。
波にはさまざまな崩れかたがあった。
崩れた波が左右からぶつかる。

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