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派遣王女☆ウルスラ / 第5話(7,986文字)

■第5話■


ジャングルスパリゾート(JSR)経営へ


扉絵


1頁 やっぱりナダル王の策略


グレナダ城のさらに地下

コツコツコツコツ
ウルスラたちの牢から伸びる赤い絨毯
そのどんつきを横切ろうとする人影
ドワーノフ王の声
「ささ、おふたり。こちらへどうぞ」
カフカ王子夫妻はドワーノフの後ろにつづく
ドワーノフは満面の笑みで
「こちらが先ほどの食事を料理した地下になります」

ドワーフ王の回想
黒電話にでるドワーノフ
「おお、ナダル王。なに!?それはまことか」
「カテリーナも国に戻ってくると!!」
「ウルスラ王妃とルーシー王妃の抹殺…」
「………」
(…震災や戦時用の炊き出しために地下牢に捕らえ)
(魔改獣化させたキューブリック女史をつかえば…)
「………お引き受け申した」
(ガッハッハ!! ナダル国からの借金はタダになるのだ!!)

「でも、ドワーノフ王だけ粗末な食事でしたわ」
「わたしはダイエットをしとるので」
「ははは」
「ウルスラにも食べさせてあげたかったわ〜」

牢から手がゴムのように伸びてアリスの肩をつかむ
ふりむくアリスは両目を飛びださせる

ぎゃーーーッひ、あふぼ!!

牢側

カテリーナはウルスラにツッコむ
「開いてるわよ!!」
ウルスラ
「あっそっか」

タッタッタッタッタ

「こんわっち!!」
ウルスラは笑顔で手をあげる
「ウルスラじゃないの!!」
アリスはパッとまわりに華を咲かせる
「こんなところで偶然だな!!」
カフカはアリスの吹いた華をさらに煌めかせる
ドワーフ王だけズッコケる
ズコーッ!!


2頁 ドワーノフの正体


ドワーノフは目を飛びださせ
「生きとる!!」

「こんわっち!!」
「お父さま………」
「あら、おひさしゅうでございます。ドワーフ国王」
「改めまして」
ボッチは名刺を取りだしてドワーノフ王に差しだす

なだる=ぐらんでぃあていこく
なだる=ぐらんでぃあないかく
かんぼうしつちょくぞく
いっきゅうしつむしっこうかん
ぼっち


と手書きで書かれてある

カテリーナはドワーノフを睨めて
「どういうことですか!!」
「まさかッ!! あなた、ち父上じゃないの!?」

全員、劇画風のおどろき顔



3頁 影武者アンドロイド 


ドワーノフ国王は両手の指をアゴの下にひっかけ顔の皮を引っ張る

ぐぐぐぐぐぐッ

ウルスラとルーシーは
(どきどき、わくわく……)

ガバッ!!

ピカーンッ

ドワーノフ国王の顔は、クリスタルスカルのようにひかりかがやく

「うぉ〜〜〜!!」
ウルスラとルーシーの目は興味津々
それ以外は
ズコーッ!!

「私ドワーノフ閣下の影武者でありアンドロイドです」
ドワーノフ(以下ドワーノ)


4頁 ドワーノフ王国の没落


「パパは、私の父上であるドワーノフ国王は!?」

ドワーノフ
「10年前、カテリーナさまがナダル国王の第四王妃に嫁がれる前日の5月17日にお亡くなりになられました」

「えっ!!」

カテリーナは泣き崩れる
カテリーナの悲しむ姿にみなうっとりする
「カテリーナさまの泣き姿…」
カフカ王子は見惚れる
「お美しい!!」
バチーン!!
カフカ王子、頬にアリスの張り手の痕がのこる

ドワーノフは語る
(以下、壁画で語られる)

グレナダ王国は元々裕福な国だ
大きな森も湖もなかったが
国民はみな働き者で豊かだった
だがある日
グレナダ国土に沿って高い岩壁が建設された
岩壁は高く空まで届くほどだ
岩壁を建設したのはナダル帝国軍
唯一の軍港だけは海に解放された
雨雲は壁に遮られ国土は砂漠化
軍港と以外の唯一の水は西の壁からの滝だ
西の滝は隣国のベタンパール国だ
ナダル国はベタンパール国を買収し
滝の水量を調節しはじめ
滝の周りだけは緑豊なジャングルとなった
ナダル国とグレナダ国の戦争が始まると
物価が上がり莫大な軍費が嵩み
水不足が深刻になり
電力供給が不足した
ドワーノフ王は同盟国のベタンパール王国に密使を送る
がなぜか態度は冷たい
ベタンパールはナダル王に手懐けられていた
ナダル国が図った兵糧責めだった
ベタンパール国はドワーノフに武器や水を売るようになった

地下王宮でドワーノフ王は
アンドロイド工学に打ちこんだ

カテリーナがナダル王に告白
「私、明日ナダル国に嫁ぎます」
「………」
「お父さま、私がどうにかして見せます」
「………」

「あの時のパパはあんただったの!!」
「ええ、1日違いで」

ウルスラとアリスは
「タッチの差だったわね」
カフカ王子は汗をかきツッコむ
「そういう問題じゃないと思う…」

ドワーノフ
「私、身体こそクリスタルですが」
「精神から魂、性癖に至るまで」
「ドワーノフ王そのものなのだ!!」
「ガッハッハ」

「二重人格かいッ!!」
みんなでツッコむ


6頁 カフカ王子の苦悩


地上。真夏の日差し

王宮の外で、キャンプを張っている
女性陣はみな水着姿で登場

カテリーナとアリスは、パラソルを立ててビーチ用のサマーベッドに寝そべる。ボッチがサマーカクテルを給仕する
カランッ
カクテルのなかの氷が鳴る

「最高の、キャンプ日和だわ〜」

男性陣はせっせとバーベキューやキャンプファイヤーの準備をする
カフカ王子は暗い顔だ
アリスは後ろからカフカを抱きしめる
「どうしたんですの。カフカさま?」
「え、あ。なんでもないよ」
「自然あふれる場所でのキャンプは」
「私とカフカさまが出会った思い出の…」
「違うんだ。ほっといてくれ」
そういってカフカは鉈で薪を割りはじめる

カテリーナはカクテルグラスに刺さったストローをチューチューし
「ガキだわね………」
隣のウルスラとルーシーは真っ赤な顔して酔っている
「お嬢たち、王妃とはいえ、まだ未成年ですぞ!!」
「なにがガキでい!!」
ウルスラはいう
「あんたらじゃないわ!!」
カテリーナはアリスを見る
アリスは無邪気にカフカと戯れる
「カフカ王子は知ってしまったのよ」
「自分のじつの父ナダルが……」
「…このグレナダ国を支配する黒幕だってことを」

アリスは楽しそうにその場を取り仕切っている
「テーブルと椅子はそっちの場所に」
「ランタンに油は入ってる?」
「直火? 替えの金網って何枚必要なの?」
「ルーシーの好物の磯焼きの栄螺と蛤はある?」
ボッチは走りまわる
 


7頁 カフカ王子の決断




地上、グレナダ要塞の外
大きな夕陽はカゲロウのように揺れ、砂漠の地平線へと沈んでいく

「あー食った食ったあ!!」
ウルスラは出っ張ったお腹をさする
ルーシーは目をつぶってウルスラのお腹に聴診器を充てる
ボッチは手板に《けんこう》と書いている

突然、カフカ王子は立ち上がる
「ぼくもやる。みんなの手伝いをするよ!!」
「ナダル王国の皇太子として僕は父を恥じるべきだ!!」

「なに言ってんの、今ごろ」
「へッ!?」
「ど、どういうこと!?」
「君たちも父とおなじように僕を…」
「あなた………」
「私たちの男一点の…」
「チームウルスラの一員ですからッ!!」
ズコーッ!!

ボッチは自分の顔を指さして
「私は………」
悪魔!!」「
ウルスラはツッコむ
「鬼!!」
ルーシーはツッコむ
「デーモン!!」
カテリーナはツッコむ
「あくまでも悪魔です!!」
アリスはツッコむ

ぎゃはははは!!

女性陣の盛りあがりを傍目でみるカフカ王子
「え………」
涙ぐむカフカ王子
「カフカ王子…」
キューブリック女史が現れる
カフカ王子はふりむく
「未来のナダル王さまに………」
「ロイヤルファミリーができましたわね」
「はいっ!!」



8頁 K★POP(カフカ)ダンス産業 



夜。笑顔の満月が手をふっている
広大な砂漠の真ん中
朽ちた恐竜の肋骨のなかでテントを張る仲間たち

アリスの指示で、男性陣のカフカ王子、ボッチ、ドワーノフたちはせっせとノコギリや鉈やビスどめなどを使いDIYをする
女性陣は恐竜のなかにランタンが吊るす
カフカ王子は昼間割った薪をオーブンに焚べ
ドワーノフは七輪に乗る魚をひっくり返し
ボッチは窯のなかにピザ生地を滑らせる
中央では薪がぱちぱちと爆ぜて黄色い炎がゆらめく
料理台でカテリーナとキューブリックはクッキーの生地をこねる
ウルスラとルーシーは掘立てのバーカウンターで居酒屋ごっこ
男性陣は一息入れに休む
「あ、あそこで居酒屋がやってます」
ボッチが指をさす
「ガラガラガラガラ」
カフカ王子、ボッチ、ドワーノフは暖簾をあげる
「大将、やってますか?」
ウルスラは鉢巻をしている
「閉めるところだったんだけどな」
「はいんなよ。仕事で疲れてんだろ」
熱燗をだす
どんちゃん騒ぎが始まる
カフカ王子はふざけてくねくねダンスをする
「ぎゃはははは!! オモロ!!」


「みんな、集まってちょうだい」
カテリーナはいう
中央の料理台にみんな集まる
「お話を整理しましょう」
ボッチはノートを広げて
「お嬢、出番ですぞ」
ウルスラは作戦を発表する
「このグレナダ王国を観光大国にする」
「おお〜!!」
「それで!?」
キューブリック先生とカテリーナは」
「この土地のグルメを作って」
カテリーナは不安な顔で
「でも食材集めは?」
ウルスラはドワーフに訊く
「ドワーフはなにができるの?」
ドワーフは首を360度巡らせて、ゆっくりと恐竜の肋骨内を観察する
突然、両目からレーザー光線を発射する
キューーッイン!!

ドサッ

恐竜の目に隠れていた人影が落ちる

「スパイがいたのね」

「では、ふたりの護衛をおねがいね」
ウルスラはいう
「了解(ラジャー)」
ドワーノフはうなづく

「それとカフカ王子のダンス見て思いついた!!」
パチンと指を鳴らすとボッチが隣に
「ボッチ、カルチョロ王国の文化政策の話を…」
ウルスラはいう
「ぎょい」
ボッチは語り始める
半島の南部に位置するカルチョロ共和国は
おなじ民族である北と戦争を繰りかえした
戦争を繰り返すたびに莫大な戦費に苦しみ
三年前、国家は破綻しデフォルトを起こす
ナダル王国金融基金によって立ち直ったが
国民は、国土も資源のない情勢におびえた
新政府は、田を耕し、車を製造するように
音楽や映画文化産業を国策としてはじめた
今ではネット映画配給Matfilixで独占中だ

「そこでグレナダ文化の草分けとして」
「カフカダンスを売りだします!!」
「世界中にG(グレナダ)-POPを巻き起こす!!」

みんなはカフカを見つめ
「カフカ王子、新たなダンスを開発してください!!」
「カフカ流のポップなやつ…」
「カフカ(K)ポップ(POP)ダンスを!!」
「アリスと組んで覆面ダンスユニット!!」
カフカとアリスは見つめ合う

華を咲かすふたり

「んで、ウルスラはどうするの?」
カテリーナは問う
「ボッチ、あの壁、百魔力で壊せないの?」
「さすがに巨大すぎます、魔王級の力なら…」
「私は、一悪魔なので…」
「仕方ないわ、私はボッチとルーシーと…」
「……ベタンパールへ交渉にいく」
「滝ダムからの水量の調整と」
「ナダル国からの密約のキックバック件」
「私たちが多く払えばダムから水は流れる」
じゃあ、期間は一ヶ月後!!
ここダイナソーズ・キャンプに集合!!

アンドロイドのドワーフの手
アリスのほそく白い手
カフカのしなやかな手
カテリーナの傷のある手
キューブリック女史の皺のある手
ルーシーの小さな手
ボッチの四本指の手

7人の手が中央に重なったその上に
ウルスラの手がのる
8人の合わさった声
「オール・オブ・ワン!!」
「ワン・オブ・オール!!」
「せえっ〜のォ〜!!」
「グレナダァ〜〜〜ファッイ!!」

全員は夜空に飛びあがる


9頁  KCDの食材探し三人旅


カテリーナ、キューブリック、ドワーノフらはウルスラたちが列車で抜けたジャングルを彷徨う
どしゃ降りのジャングルのなかバナナの皮を傘にして、オラウータンから光る木の実を譲り受け、底なし川に出てワニの群れの歯磨きをすると、香り高い生姜と茗荷の植るありかを教わり、黒人の村の老婆たちにはめ込まれた歯の中から伝説の胡椒をみつけだし、死んだはずの極楽鳥を生き返らすとお尻から幻のコーヒー豆を見つけ、中風やみやレプラ患者のヤク中の目の前に極上のヘロインをチラつかせ黄金の牝牛がいるありかを教わる、ナダル大帝国に軍事支配された小国の大統領府に侵入して最高級の酒類すべてをグレナダへ密輸させ、さらにはフランダース産のボウル、九谷焼の刺身皿、七宝焼の食器、銀の箸、クリスタルワインやシャンパングラスなどもグレナダに輸送する、

どこかの宮中
「どこ、ここ?」
「わからないわ」
ドワーノフは両目からライトをだす」
ナダル王が現れる
「ぎゃッ!!」
「カテリーナさま、これはナダル王の像です」
「えいッ!!」
暗闇のなかナダル王の像は倒れていく
ガシャンッ


10頁 G-POP修行譚



カフカ王子とアリス皇女ふたりはいつでもどこでも手を組んで歩いた。闘鶏場の見物の合間でも、おなじスプーンで自分用の蜂蜜を飲むときも、バザーの裏手にある牛舎のなかで牛の糞に火を灯して、真っ暗な中を忍び足でステップの練習をした、中庭で餌をばらまき寄ってくるニワトリを怒らせないようにステップを踏んだ、七面鳥にはトウモロコシを投げるとさらに難しいステップの練習になった、二人で足でペンキを塗り、ステップでマリンバを演奏した、七日間死神に睨まれながら空中ブランコで首、胸、腰、膝、足首をまわすようにロールさせ、絶壁と絶壁に張られたロープを歩きながら後ろ向きで腕、首、胸、胃、足、など様々筋肉の部位を弾くようにムーンウォークしていく、ロボットダンスに似たウェーブ、スローモーション、ヒット、ヴァイブレーションを使いこなし、カフカとアリスは人間離れした不思議な動きを表現し始める。ふたりの影は筋肉を弾き、からだの各部位を別々に動かしたりしながら、一心同体のリズムに合わせて、G-POPを即興的に踊るの術を身につけていった。


「やったぞ!!」
「やったわね!!」
「ついに完成したぞッ!!」
「ついに見つけたわね!!」
「私たちだけの…」
「ぼくたちだけの、オリジナルダンス!!」
「G-POP!!」



11頁 ベタンパール城



ベタンパール城
パラス。宴席の間

……かくかくしかじか……

ボッチは手板をもってホワイトボードにタクトをさして説明する
「ということです」
ベタンパール王
「なるほど……となるとウルスラ様は自分が、ナダル国王の第五王妃であるのをご承知でそのような提案を私にしているので?」

ウルスラはいう
「ナダル王から1500億ガルドで武器や弾薬や部隊を買取り、それをドワーフ国に2000億ガルドでさばく。アガリは500億ガルドのようですが、滝ダムの水量を調節して、ドワーノフ国の水源を干上がらせ、水と戦費の消耗から武器価格を引きあげる」
ボッチはそろばんをウルスラに見せる
「水コミのナダル製の武器弾薬を4000億ガルドでドワーノフ王に売れば、アガリは2500億ガルドです」
「だから!?」
「それはピンハネといいます」
「だから!?」
「よくないことです」
「だから!?」
「………」
「ウルスラ王妃、子どもですなあ」
「がっはっは!!」
「世界はそういうふうにまわっとるのですよ」
「………」
「がっはっは!!」
「………私は、ナダル帝国、国王ナダル…」
「……グランディア国王の第五王妃です」
「ピンハネ。いいつけちゃうから!!」
「そういうこともあろうかとね…」
「ナダル国の提示額より高い………」
「2000億ガルドで武器を買っているんですよ」



12頁 ナダル王、現る



ナダル王現れる。親衛隊長のドグマもいる

「ウルスラ、小娘が!!」
「こざかしいことをやりおって!!」
ドグマ大剣を抜いて

バサッ

ぎゃッ!!

ベタンパール王は倒れる
床が血に染まっていく
ナダルがドグマに視線を送る
ドグマは自分の剣を鞘にいれ別の剣をウルスラにむけ投げる

ウルスラは剣をそれを受け取ると
凄まじいカメラのシャッター音がなり響く
バシャバシャバシャバシャバシャ

ナダルは哄笑する
「明日の記事では貴様は殺人者だな」
「はっはっはっは!!」
「どこへでも逃げてみろ!!」
「ナダル軍が地の果てまで」
「追い詰めてやるぞ!!」
周りにいるナダル兵たちは笑う


14頁 ベタンパールの壁




ベタンパールの滝の縁の岩場
滝はグレナダ湖に流れ落ちる
グレナダ盆地を見おろすウルスラ、ボッチ、ルーシー

ウルスラはルーシーに訊く
「なんでついてきたの?」
「私、明日から賞金首だよ……」
「トホホ……」

ルーシーは答える
「私、お祓いができる」
ウルスラは首を傾げる
「私、魔物ハンターだから…」
ウルスラはおうむ返しをする
「ルーシーは魔物ハンターだから…」
ボッチはビクッと怯える。ルーシーは答える
「魔物を消滅させることができるの」
「ぎゃ〜ッ!!」
ボッチは逃げまわる。追いかけるふたり
「ぎゃははははは!!」

ぜえぜえ……
「で、おふたりはどうなさるんですか?」
ボッチは訊くとウルスラはルーシーから耳打ちを受けている
ウルスラは手を打つ
「なるほど!!」
「な、なにがなるほどで??」
「キューブリック先生を助けたとき…」
「ボッチ…なん魔力だった?」
ギクッ!!
「え、あ、さ300魔力ほどでしょうか……」
ボッチは目をかっ開いて怯える
「ってことは………」
といってウルスラとルーシーと高く聳える壁に囲まれ、窪んだ巨大な盆地のようになったグレナダ王国の国土を見まわす
「ま、まさか、まさか………」
ボッチはおそれ慄く
「10億魔力ってところ?」
「お嬢、そそれはちょっとした魔王が…」
「…ちょっとした国を消滅させるほどの魔力ですぞ!!」

ルーシーは呪詛を唱え始める
「グギガ、レギゴア!!」

「…ヤメロ!!…ダズゲロ!!………」

「…ハ魔王ナリ………ヲ…ダズゲロ…!!……」


14頁 ボッチ、億魔力で壁を破壊


ボッチは夜空に吸いこまれるように透明になって大きく膨張していく
足を投げて岩場にすわるウルスラとルーシーは夜空に透けて映しだされる巨大な魔物を見物する
魔物はひとつ吠えると、衝撃波が、高く聳える壁を揺さぶる

ウルスラはルーシーにいう
「ボッチを殺しちゃダメだよ」
ルーシーはうなづく


透明になった巨大な怪物はうめき、もがき、叫びながらグレナダ盆地の中央に位置する火山の頂に登っていく

ルーシーはさけぶ

圡𡈽恢恢(どどかいかい)!!

ギャあ〜あああ〜〜〜〜〜!!


衝撃波が起こり、空気が歪み、また一瞬にして伸び、円を描いて空まで聳える壁を破壊した



15頁 壁の崩壊



壁は崩れてくる
ウルスラ、自分の鼻を摘む
ルーシーも鼻をつまむ
「ほい、おんぶ!!」
ウルスラがいうとルーシーはウルスラの背中に乗る


「ヒャッホー!!」
滝を落下するウルスラとルーシー

「ごめんね、みんな!!」




16頁 大円団




どこかの国でテレビが流れている
「はい、現地に来ております。今日は世界のダンス界を席巻しております謎の仮面デュオ、デーモン☆クラッシャ〜ズのライブ会場に来ております!!」
リポーターは国が丸ごと一大スパ観光大国を取材している

「この仮面デュオは世界で初のオリンピック、パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、その他276種の世界国際大会のスペシャルソングを歌いことに成功しました」

砂漠は木々は生え始め、森は潤いを増し、観光に来る人は選び抜かれリゾートホテルはすべてスィートだ

「見てください、みなさん、世界の大富豪の方達が寄ってたかってDIYに勤しんでおり、こちらは石油王の第一皇子様一家です!!」

「こちらは、グレナダ国からより集まった、奇々怪界な食材たちを料理、振る舞う、さらには体験料理をする、コーナーです。専任講師に元皇女派遣学院の筆頭教諭であったアンナ・キューブリック先生がおられます!!」

「さあ、始まります、全世界が同時生中継で見守る、仮面デュオ、デーモン☆クラッシャ〜ズの98億人ライブの始まりです!!」

リポーターは語る
入境の検閲は安全に強化され、パンデミックの最中の世の医療体制は整い、貧民層には完全な保障制度が整う
だがグレナダ王国への入口はひとつだ
それはグレナダ王国の最大の軍都イグノア、イグノア=マルケス軍港のみだ
コンテナターミナルに接岸する様々な船、タンカー、豪華客船などを出迎える。それからこの国を救ったある派遣皇女を歓迎するための港だという。


第6話へつづく


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