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一桁違った話20221224sat170

昼。外から帰って届いた封書を開ける。

弊社があなた様に対して有する下記請求権は、本日現在お支払い頂いておりません。先般ご通知のとおり、あなた様は弊社会員規約に基づきリボルビング払い・分割払いの利益を既に紛失されており、各種ローン(キャッシングリボ等)でご利用された全ての未請求残高と合わせて一括払いにお支払い頂かなければなりません。但し、下記お支払い期限迄に下記請求権全額をお支払い頂ければ、従前通りリボルビング払い、一括にてお支払い頂く事になります。つきましては、お支払いについて上記照会先まで至急ご回答お願いします。
お支払い期限 令和四年 一二月二三日。
お支払いがない場合は、未収債券につき債権回収業者等にその回収を委託、又は債権譲渡する場合がございます。

漢字が多い。小説ではないので仕方ないか。それにしてもイブに読む文章ではない。

一九九〇年代。僕が高校生だった頃、バブル景気は弾けた。
山一證券は廃業し、第一勧業など大手都市銀は政府に見放され崩壊した。「不良債権」なる言葉が流行って、回収に躍起になった都市銀は地方銀行に融資の金を貸し渋るようになった。地方銀行は一般の住宅ローンの債務者に対し貸し剥がしをした。
貸し剥がしは債権者が返済の期限前に返済を迫る暴力行為だ。
平成以降は貸し剥がし禁止が金融界の慣行になるが当時は横行した。
父は公務員で三十五年ローンを組みある日突然某地方銀行から貸し剥がしに遭った。
日に日に仏壇の督促状は堆くなった。当時、巷では地上げ屋などの言葉が飛び交い家族は怯えて暮らしたものだ。

ネットで検索した法律事務所に電話をする。
「ええ、それで、負債の総額はおいくらに?」
「百ま、あれ? じゅ、十五万、なんでこんなに少ないんだ?」
「毎月、おいくらでも返済は」
「少しずつですがしています」
「その額なら弁護士費用のほうが高くつきますが… 」
電話を切って、もう一つのカードの負債を足す。五十万か。
こっちのぴ○カードのほうは親会社が買収されて今は大阪を本拠地とする半分ヤクザだ。
空を見上げて、一呼吸おく。
便箋を取りだして遠縁のおばさんに手紙をかく。
(880文字)

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