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はじまりのアレ

 こんにちは。

 ちょっと唐突ですが、私が小説なんぞ書くきっかけになった例のラジオドラマ脚本二つ、載せます。
 何の事かわからない方、こちらです↓↓↓


 というのも少し前に細々やってるTwitterで「脚本今更でも読みたい人いるかな?」と言ったらなんといいねくれたフォロワーさん(めっちゃ少ない)いたので、この機会逃したら一生載せられない気がしたのでここで公開します。
 なので興味無い方はどうぞ引き返してくださいね。

 ほぼ、番組に送った当時の原文のままです。


(女)「バイン、好きなの?」

その一言が彼女とのはじまりだった。

オリジナルの曲をメインに時々カバー曲も入れて月イチでライブをしている。たまたま他のバンドを見に来ていた彼女がオレに声をかけてきた。次のライブに来てくれたり、打ち上げに一緒に行ったり、そのうちに二人で会うようになって、一人暮らしの彼女の部屋に行くようになった。

(女)「傘忘れてたよ」

(男)「あ、やっぱここに忘れてたんだ、昨日雨降ったのに傘無くて困ったよ」

(女)「ワインでいい?」

返事をするより先にグラスにワインが注がれている。彼女はすでにほろ酔いだった。

(女)「次のライブ、何の曲演るの?あれ聴きたいなー、『光について』」

(男)「いいね」

(女)「あの人がよく歌ってたなぁ」

(男)「…、そんなにオレとその人似てる?」

(女)「んー、言うほど似てないかな、普段は。ギター弾いて歌ってる時は、そうだね、あの人が生きてるのかと思った」

オレに寄りかかりながら彼女はさらにワインをあおる。

(男)「ほんとに付き合ってなかったの?」

(女)「付き合ってはないよ、私が一方的に憧れてただけ。私に音楽を教えてくれた人」

数年前に亡くなったというその人にオレは似ているらしい。だからあの日、彼女はオレに声をかけてきた。

(女)「もっといろんなこと話したかったな」

(男)「オレがかわりになろうか?」

(女)「それは、無理だね」

(男)「だよね」

グラスに残っていたワインを飲み干して、彼女の手を握る。

(男)「いつ、引っ越すの?」

(女)「来週」

彼女は来月結婚する。オレとも、オレと似ているらしいその人とも、全く関係のない男と。

(男)「幸せになるんでしょ」

(女)「そうだね…」


明け方彼女の部屋を出た。
駅へ向かって歩いているとスマホが鳴った。

【傘忘れてるよ】短いメッセージに
【捨てていいよ】とだけ返し、夜が明け光に満たされてゆく空を見上げて、溜め息をついた。

 マカロニえんぴつ『恋の中』  



 暑い。なんだ、ここ。なんか、人がいっぱいいて、みんなオレを見てる?どっかのステージに立ってんのかな…。暑いと思ったらオレの髪の毛どーなってんの?アフロ?
ん?隣に誰かいるし…、なにこの、おじさん、…え?!あれ、もしかして、奥田民生?!



(樋口)「おい、はっとり!いい加減起きろや!」

 頭を叩かれたのか、衝撃で顔面を思いっきりぶつけた。

(はっとり)「いってぇ!」

 さっきのはなんだ、夢?

(はっとり)「おい樋口、起こすなよ!今良いとこだったのに」

(樋口)「あほか。授業とっくに終わったで、はよ帰ろ」

 あぁ、たしか数学の授業だったか。頑張って書こうとしていたらしいノートの字は残念ながら一文字も正確に読めない。
 時刻は午後三時半を過ぎていた。 

(樋口)「先行ってるでー」

 教科書やらノートやらをカバンに突っ込みオレは樋口の後を追った。


(はっとり)「腹へったー。マック行こうぜ」

(樋口)「マックちゃうわ、マクドや!何回言たら覚えんねん」

(はっとり)「いいだろ通じてるならどっちでも。何回目だよこのやりとり」


(樋口)「で?さっき何の夢見てたん?」

 ハンバーガーを口いっぱい頬張りながら樋口が聞いてきた。 

(はっとり)「あぁー…、内緒」

(樋口)「なんやねん、あ、わかった。エロいやつや」

(はっとり)「ちげーよ、お前に言ったらありがたみが減るから教えない」

(樋口)「なんやそれ、どうせしょうもない夢やろ」

(はっとり)「まぁ、所詮夢は夢だし、他人からすればつまらないし、くだらない夢だろうな、けど…」

 ついさっき見ていた夢なのに、思い出そうとしたらもう情景があやふやになってきている。けれど、最後に見えたあの人の横顔だけは、やたらとはっきり覚えている。 

(樋口)「けど?」

(はっとり)「うん、オレ、あの夢叶えるわ、現実にする」 

 いつものように茶化してくると思いきや、樋口は少し驚いたような顔でまっすぐオレを見ている。

(はっとり)「何だよ、なんか言えよ」

(樋口)「そっか。じゃそん時はハンバーガー死ぬほどおごったるわ!」

 笑ってそう言ってくれた樋口につられて、思わずオレも笑ってしまった…。



(樋口)「もう帰る?」 

(はっとり)「あー、オレ楽器屋寄ってギターの弦買ってから帰るわ。しばらく触ってなかったし、ちょっと気合入れる」

(樋口)「ほぉー、ほなオレもついてこー」

(はっとり)「来なくていいよ」

(樋口)「ええやん、うれしいくせに…」 

(はっとり)「うっせぇ、もうおまえ帰れよ」

(樋口)「照れんなってはっとり」
マカロニえんぴつ『青春と一瞬』


 一年以上前に短い期間で書き上げたので手直ししたいところ多々ありますが、あえてそのまま載せました。

 二つ目の脚本は名前は伏せてイニシャルにしようかと思いましたが二人とも『H』なので諦めました。まぁたいして読まれもしないと思うので大丈夫でしょう。

 私なりの想いと工夫を込めて書いたので語りたい事もそれなりにありますが、一年も前の事にいまだに縋り続けるのもどうかと思うので(思いっきり縋ってるやん…)やめときますが、本当に良い思い出で、脚本採用していただけて感謝しかありません。

 それとこれも今更ですが、まさか採用されるとは思ってもいなくてあの頃今のTwitterのアカウト作ってなくて(別アカで見てました)、オンエア時たくさんの方が感想呟いてくれてたのに反応出来ませんでしたがめちゃくちゃ嬉しかったのでケズラー(わかる人だけニヤッとして)のみなさん、ほんと今更ですがありがとうございました。

 そして意味がわからないながらも最後まで読んでくれたそこのあなたも本当にありがとうございます。超愛。



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