掴めないアホと4か月付き合った話 #01
高校2年で出会った君は私の初めての彼氏になった。
彼のことを一言で表すと、「掴めないアホ」だった。
やっと掴んだ、と思うと、たちまち形を変えた彼は、私の手の隙間から知らないうちにするっと逃げていく。それを無自覚にやってのける、彼はそんな感じで生きていた。
それを魅力的だと思う女の子は多かった。私含め。だから彼は、若干高校2年生にして元カノが8人もいた。しかも全員お互いが知り合い。気まずいったらありゃしない。彼は最終的には、同じ高校で私を含め11人と付き合うという偉業を成し遂げ卒業した。元カノだけでサッカーチームが作れる。
私が彼と付き合うか付き合わないかの瀬戸際に立っていた時、「元カノがそんなにいる人なんてやめておいたほうがいいよ」こんなわかりきっていることを忠告してくれる友達も、最終的にはこう言った。
「あの人がモテる理由は、なんとなくわかる気がする」
彼は何となく母性をくすぐり、何となくすり抜け、何となく女の子を虜にする不思議な男の子だった。
彼のどこが好きだったかは少し覚えている。彼のまくり上げたシャツから見える腕の血管とか。ただの茶色いリュックを背負って駅まで歩く後ろ姿に、飛びつきたくなったりもした。テストの成績がとてもよかった。人に教えるのも上手だった。なのに成績以外はまるでアホ、だった。深く考えない。やりたいことをやりたいようにやる。そんな精神で、気に食わない部活を途中でやめた。そんな生き方をしていたから、数人の男の子はよく彼の悪口を言っていた。それを知りつつも何とも思わない彼のアホさも強さに見えて好きだった。私は自分と正反対の彼に惹かれた。
彼はわかりやすくて、優しかった。そんなところが、好きで嫌いだった。
◆02へつづく
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