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脳内旅行しよう③

3年半前に北インドを旅した、インド旅行記の続編です。
今日は残りの3都市について。
依然、お腹はゆるゆるです。

砂漠の果て:ジャイサルメール

インドのずーっと西の方。
パキスタンとの国境付近にあるのがジャイサルメールと呼ばれるオアシス都市です。
ケッペンの気候区分ではBWh、つまり砂漠気候に分類されており、タール砂漠の中央に位置しています。

西へ西へと寝台列車を乗り継いでたどり着いたこの地を訪れた理由は、キャメル・サファリに参加したかったから。
ラクダに乗って砂漠を進み、なーんにもない地球の ど真ん中(のように感じる)でテントを張って1泊するという、非常に人気のあるアクティビティです。
私たちは、泊まっていた宿が用意しているツアーに参加しました。

ご想像の通り、夏の砂漠は悲惨です。超酷です。
日焼け止めと帽子とサングラスとタオルとカーディガンに身を包んで数時間ラクダに跨がるという、まるで処刑のようなことを自ら行います。

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が、初の砂漠にアドレナリンが放出されていたのか、フンコロガシを見つけては興奮し、ラクダのダルそうな姿を見ては爆笑し、とても綺麗とは思えないところで火を起こして作られた砂塵の混ざった夕食を、これまた綺麗ではない手を使って喜んで食べたのでした。

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お腹を満たしたあとは、日が暮れてしまうまでにテントを張って、各々夜に備えます。
あれほど何もない空間に身を置いたことはなく、ちっぽけな自分という存在をまじまじと感じた時間でした。

想定外だったのは、夜もめちゃくちゃ暑かったこと。
テントの中まで風が入ってこず、だからといって外は野犬がうろついているので容易に入り口を開けられない。
どうしようもなく、女二人パンイチで夜を明かしました。

サファリから戻った後は、砂岩でできたジャイサルメール城にも足を運びました。
日本の城下町と同じように、お店やレストランも並んでいます。
敷地内にはなんとジャイナ教の寺院もあり、雑多なものがぎゅっと一箇所に集まったような印象を受けます。

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それから、早朝に行ったバダ・バーグ。昔の王家の集合墓地です。
とはいえ墓地とは思えないくらい、ちょこんとしたフォームで並んでいる石碑がかわいい(笑)
朝日に照らされ金色に輝くそれらは、とても神秘的に映りました。

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象のタクシー:ジャイプール

前述した、ジョードプルという街。
これとセットで取り上げられることが多いのが、ピンクシティのジャイプールです。
ずっと旅をしてきたラジャスタン州の州都でもあり、市街地の中央に位置するシティパレスを始め、数々の宮殿があることでも有名です。

特筆すべきは世界遺産アンベール城
郊外に位置する城郭都市アンベールにある宮殿で、16世紀に建設されました。
小高い丘の上に立っており、存在感がひと際目を引きます。

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なんといってもそのデザインが特徴的で、イスラーム様式と伝統的なラジャスタン様式が融合しているんです。
たしかに、去年訪れたトルコのモスクを彷彿とさせる幾何学模様だったり、でも色使いはインドっぽいなと思う部分もあり、なかなか他では見ることのできないデザインです。

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このアンベール城へは、もちろんえっちらおっちら丘を歩いて登っていくこともできますが、ある地点まで来ると、さぁこちらへどうぞと誘導されんばかりに、象のタクシーが用意されています。

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象使いの にぃちゃんが運転してくれ、私たちは荷台のようなところに座って揺られる。
そして料金に対してありえない比率のチップを要求される。
渋る。
こんな感じです。

この料金うんぬんに関してはここだけではなくインドどこにいても根気強い交渉が必要ですが、1週間も滞在していると慣れたもんで、
「○○では△△ルピーしかしなかったよ!」
と事例を持ち出すことで論理的に打破することができました。

ヒトが行き着く地:ヴァラナシ

ガンジス川の流れる、ヒンドゥー教の聖地
ここで人生を終えた者は輪廻から解脱できると考えられているため、毎日毎日インド中から死体が運ばれ、火葬され、ガンジス川に流されていきます。
ガートという沐浴場では早朝から多くの人が雄大なガンジス川で身を清め、お祈りを捧げています。

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そんな"大いなるガンジス川と対岸から昇る朝日のきれいな構図"を心待ちにしていた私は、到着してすぐ、訪れた時期が間違いであったことに気づきます。
雨季ーそれはガンジス川がただの どぶ水にしか見えず、そこら中に排泄された牛様の"おうんち"が雨水によってドロドロになる時期なのです。
(そういえばりっちゃん、たった2週間で3足もサンダル買い替えてたな...)

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不安定な天気の中でも、人々は毎日沐浴をし、夜にはプージャと呼ばれる礼拝儀式を執り行います。
昼間にはとめどなく死体が火葬場へと運ばれ、異臭と言っては失礼かもしれませんが、生身の人間が焼かれていく、一人のヒトの人生が終わりを告げる、なんとも言えない臭いを纏った黒い煙が立ち込めます。
正直、普通に息はできません。
何かに例えようにも今まで嗅いだことのないような臭いでした。

ヴァラナシは細い路地や急勾配の階段が多く、棺を運ぶ人たちに道を譲ったり、牛様が通り過ぎるのをじっと待ったりしながら進みます。

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バザールもあって、雑貨や布を売るお店、またドライフルーツや生野菜を売るお店など、非常に活気のある賑やかな街でしたが、穏やかな人が多いのか、ニューデリーのような暑苦しさはありませんでした。

もしかすると、私がイメージしていたインド像に最も近いのがこの街だったかもしれません。
瞑想を大事とするヨガや信仰心など、精神的な面が垣間見えてしっくりきたのがヴァラナシでした。
インドに行こうと思ったきっかけでもあった、

インドにはヒトの始まりがある気がする

という想いも、この街でうまく昇華されたように思います。

結局、人生観は変わったのか?

人生観というほどたいそうな変化はなかったというのが実際のところです。
ですが、わたしにとっての非日常を日常として生きている人々を見て、

"この地球上にはあらゆる価値観を持った人がいて、彼らの幸せを決して自分の基準で決めてはいけない"

ということを改めて感じたし、
ちょうど卒業後の進路についても決めかねていた私が

"日本という社会で世間からどういうレッテルを貼られようと、自分の心がワクワクする道を信じて生きていきたい"

と強く思ったのも、このインド旅行で様々な生き方を目にしたからです。

この感覚を失わないためにも、きっと私はこの先も、定期的に旅に出るのだと思います。


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