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魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女

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ポピーは魔法の世界に住む少女。その世界では「キャビッチ」という、神から与えられた野菜で魔法を使う――「食べる」「投げる」「煮る」「融合」など。 13歳になったポピーは、新たに「シ…
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2020年6月の記事一覧

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 79

 私は寝る前、ツィックル便でヨンベに、菜園界へもどってきたことの報告と、明日学校でね、というメッセージを送った。
 するとすぐに返事がきて、そこには
「ポピー、お帰り! 無事でよかった! 明日も学校はお休みだから、また二日後に会おうね。ゆっくり休んでね。」
と書かれてあった。
 あ。そうか。
 明日は、今回地母神界へ行くことになった人たちのため、特別にもうけられた休みなんだ――忘れてた。
 私は肩

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 78

 ばさばさばさ

 とつぜん、鳥の翼のはばたく音が聞こえ、私たちはそちらを見た。
 すると。
「まあ」最初に声をあげたのは、祖母だった。「なんて美しいの」
 私たちが見たのは、一羽の鳥――小柄な、ふくろうだった。
 けれどそれは今まで見たこともない、色合いをしていた。
 頭から尾にかけて、緑から黄色、そして金色とグラデーションのように変わってゆき、翼と嘴もベージュがかった金色、そして目が赤かった。

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 77

 席についてあらためて裁きの陣の方を見てみると、陣の中には人間型のアポピス類たちが十人ほどかたまって立っていた。
 森で、火起こし妖精の助けを受けながら私たちキャビッチスロワーと闘った者たちの一部だろう。
 ケイマンはひきつづきそのアポピス類たちに向かい、祈祷文句をとなえつづけていた――ときどき修正されたり、つっかかったりしながら。
 そしてときどき、陣の中のアポピス類たちがうめき声をあげたり、が

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 76

 私たちはまず、森へ向かった。
 母たちに任せてきた“話し合い”がその後どうなっているのか、確かめるためだ。
「あんまり、気がすすまねえな」ユエホワが飛びながらそう言ったけれど、私もおなじ想いだった。
 話し合いは、無事に終わったんだろうか……たぶん、終わってないと、思う。
 へたをすると、またキャビッチ投げ対アポピス類の魔力攻勢がくりひろげられているのかも知れない。
 けれど、森の中はしずかだっ

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 75

 そうか。
 ギュンテは水がめの神さまだから、水が世界のどこにあるかは当たり前にわかるんだ。
 そうだよね、だからさっきみたいに水――というか雲を呼び寄せて雨を降らせることができるんだ。
 そんなことを思い、私はひとり、うなずきながら箒で飛んだ。
 ギュンテの乗る小さな雲を追って。
 私の少し前を祖母の箒が飛び、なぜか私の横をユエホワが飛ぶ。
「泡粒界に行ったとき話したこと、おぼえてるか」ふいにユ

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