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魔法野菜キャビッチ3 キャビッチと伝説の魔女

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ポピーは魔法の世界に住む少女。その世界では「キャビッチ」という、神から与えられた野菜で魔法を使う――「食べる」「投げる」「煮る」「融合」など。 13歳になったポピーは、新たに「シ…
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2019年3月の記事一覧

魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 13

「――」私は首をかしげ、眉をひそめて手もとのキャビッチを見下ろした。

 リュックの上から中に放り込もうとして――もういちど、目の前にもってきた。

 あたりを見回す。

 横幅が一メートルぐらいありそうな、貫録のある木が目にとまった。

 私は手の中のキャビッチを一回ぽん、と軽く投げ上げて、手の平にもどってきたそのキャビッチに向けて、呪文を唱えはじめた。

「シルキワス」その最初のひとことで、た

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 12

「ユエホワが?」思ったとおり父は目を丸くして、「へえー!」となんどもうなずいた。「すごいなあ彼は!」

「ははは」私は苦笑いした。まったく、ほめられるのは私以外の人ばっかりだ、人というか、人と鬼魔だけれど。

 そこは書斎、地下につくられていて、広くて薄暗くて、空間すべてが本に満たされている部屋だ。

 父が、生まれてからいままでに手に入れたすべての本が、ぎっしりと収められている。

 父は、年老

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 11

「じゃあ、もうひとつだけ」ユエホワは、最後の質問をした。「クドゥールグ様は、最期に何と言ったんですか」

「――」祖母はまたテラスの天井裏を見上げた。「彼は『次は負けぬ』と言ったわ」

「次は?」私が訊き返した。

「ええ」祖母はうなずいた。「『おのれ小娘、次は負けぬ』と言って……そのまま、息を引き取ったの」

「――」ユエホワは、息をするのも忘れているように見えた。けれどやがて、はあ……と、ゆっ

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 10

「私がそんな、無茶で無謀なことを続けていると、やがて当然のことながら、鬼魔界にもお触れのようなものが伝えられたのね」祖母はしずかに話を続けた。

「――鬼魔王から?」ユエホワは訊いた。

「おそらくね」祖母は目を閉じてうなずいた。「そしておそらくその内容は、こうだったのだろうと思われるわ――力に自信のないものは、人間界に出るべからず。力に自信のあるものは、人間界へ行き、ガーベラというキャビッチ投げ

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魔法野菜キャビッチ3・キャビッチと伝説の魔女 9

 やがて木々の間に、祖母の丸太の家が見えてきた。

「――ついて来るの?」私は、相変わらず隣を歩いているユエホワを見てきいた。「今からおばあちゃんちに行くんだよ? いやなんじゃなかったっけ」

「一回、ちゃんと聞いとこうと思って」緑髪鬼魔は目をそらしながらむすっと答えた。

「何を?」私はまたきいた。

「――あの戦いの時のこと」ユエホワはまたむすっと答えた。

「あの戦い? クドゥールグの?」ま

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