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不健全な精神は肉体を蝕む④

愛する人とささやかでも幸せな結婚生活を営み子どもを産む

その時代の女性の多くが望み、世間的にもあるべき姿と認知されていた生き方だったと思う

少なくとも私の周りではそうだったし、そんな人生が私自身の希望だった

そして真面目な公務員の家庭に育った夫も当然そう思っていると信じていた

その頃はまだ女性は女性らしく、男性は男性らしくが求められていた時代

私の家庭も父は大黒柱で家族を愛し守り、母も父に全面の信頼を寄せていた

真面目な義父が全権を握って、身体の弱い義母を愛し守り、義両親は息子を過剰なほど愛情いっぱいに育てていた

あまりにも大切に育てられていて自分とはいろんな感覚が違うけれど、8歳も年上で品があり優しい夫

夫も家族を持ったら、当然その両親の姿を手本にして自分の役割を自覚すると思っていた


虫垂炎の手術をした後も、子宮頚部の経過観察のため、定期検診をしていた

子宮頸ガンになる要因は夫と出会ってから8年も経っているんだからある訳ないし、腹膜炎の原因は虫垂炎だ

私は気軽な気持ちで検診に向かった

「そこで無罪放免になって、これから希望の未来に目標をシフト出来る」そんな気持ちで

その結果は「今の状態は4人に1人が子宮頸ガンになる確率の子宮頚部異形成のステージ」「将来的に子どもを望むなら子宮頚部の円錐切除手術をした方がいい」だった

私はその結果を到底受け入れられなかった

「そんなはずない」と思ったし、「自分がガンになる可能性が高い事」は自分の死をも意識した

世間的に一般的な事を望んでいるだけなのに

女性としての人生どころか、人生自体が終わるかもしれない恐怖まで芽生えるなんて

だけれど、そんな私に更なるショックが降りかかる

到底検査結果を受け入れられなかった私は、セカンドオピニオンを受ける事にした

婦人科系の検査は、女性には精神的な負担がある

だから、女医の婦人科医に診てもらいたかった

検査結果を持って診察

その女医は私が持って行った検査結果を手に取る事もなく、吐き捨てるように言い放った

「そういう結果が出てるんだったら、手術すればいいじゃん」「最近は20代の子もなるんだから、信じられないよね~」

今でも思い出すと涙が止まらない

一縷の望みにかけて、すがる思いで受診しているのに

いろんな不安と絶望に圧し潰されそうなのに

「どうして病気になったかを考えても仕方ない、り患したら治す事だけを考える」それは事実だ

それを気に病んでいたって、治療しなければ治らないけれど、受け入れ難い事実を前に「どうして?なぜ?」と思うのは、人間の心理だ

そしてその病気に対して医者が治すだけとするなら、それに徹してくれた方がまだましだ

どう考えたって、その女医の言葉は軽率な私的感情を含んでいる


ただ私はそんな事にかまってられない

見方を変えれば、腹膜炎になったから子宮頚部異形成を発見する事が出来た

子宮頚部異形成の段階では、無自覚な事が多く、自覚する頃には子宮頸ガンであることが多い

この段階であれば、子宮全摘ではなく、円錐切除で済む

ましてやこれをきっかけに「いつ自分が死んでしまうか、わからない」という恐怖と自覚もある

「このまま子どもを産まないで死ぬのは、嫌だ」と強く思った

もう夫の負担や経済的な状況なんて考えられない

とにかく、「子どもを産む事」が私の目標になった

女性と生まれたら「子どもを身ごもる事」は「当たり前に備わった機能」で「自然の摂理」だと思っていた

だけれど私は「子どもを産める身体にする」ために、いくつかの苦しみを乗り越えなければならなかった

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