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壊れたレコードが止められない

頭の中で、同じ曲ばかり繰り返している、フリーライターのaoikaraです。

たびたびある。自分で能動的に聴いたわけではなく、ラジオで一時期キャンペーン中なのかよく聞こえてきた曲で、とあるテレビ番組で紹介されて、「あ、これ一時期よく聞いたな」と思い、気になって一度だけちゃんと聴いてみた。

それだけなのに、謎の中毒性があって、頭の中でずっと流れている。ちょっとだけ口ずさめるようにもなっている。完璧には歌えないけれど。


壊れたレコードみたいだ、と思った。でも、レコードは持っていないし、どう壊れるのかよくわからない。レコードの針が動かなくて、同じところばかり再生してしまうのかな。

あるいは壊れたラジオ。私のイメージだとラジカセ。カセットテープが伸びちゃったりして、変な音になっているようなイメージ。

その瞬間「壊れている」ものは、そのときリアルタイムで使われているもののはずで、自分がその経験をしたわけでもないのに、壊れているのはいつだって過去のものばかりだ。「サブスクが壊れた」とは言わない。「YouTubeが壊れた」とは言わない。

壊れるのはアナログだけど、当時は画期的でデジタル感があっただろうとか、勝手に思う。


制御できないほど繰り返されるフレーズに、少しうんざりしている自分もいる。楽しい曲ではあるけれど、こんなに何度も聴きたいわけではない。

苦しい記憶を何度も反芻して、そのとき以上にどんどん苦しくなってしまうのに似ている。思い出すことを止められない。でも、その曲には楽しい記憶も、苦しい記憶もない。

そもそも好きではなかったのに、嫌いになりそうというのは、なんとなく理不尽だ。


まるで、最近壊れている自分のようだ、と思った。過食が止められない。とめるタガが欲しい、と思っている。でも、見つからない。このためにがんばろうとか、がんばらなきゃとか、思えない。がんばれない。

レコードの針のように、自分を傷つけてしまうのではないかというほどの鋭さで、いっそのこと自分を傷つけてしまうほどの強さで、それでも止めてくれないかと思ってしまう。自分で止めたいと思っても止められないから、誰か止めてくれと、思っている。


どうしたの?何かあったの?別に何もないんだよな。何もないのに壊れる。何もないのに頭の中の曲は止まらない。

むしろこの曲は好きなくらいなんだ。頭で鳴ってしまうほど。どこにあるんだろうね、私の自尊心も。

2023年1月26日(木)

No.1483

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