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【不登校漫画原作】phaseA #家出

SIDE: 実香子

スマホを取り上げた。
ゲームも隠した。
凛花は自室に篭って出てこない。

その日はそのまま寝た。
昼過ぎに起きた凛花は、明け方まで起きているはずだ。
スマホもゲームも無い状態で何をしているんだろう。

翌朝、予想通り凛花は起きてこない。
実香子は凛花のスマホとゲームを押し入れの奥に隠して仕事に行く。

仕事に集中できない。
凛花は寝ているだろうし、何もしていないだろう。
でも何か不安だ。
凛花のスマホは電源を切って押し入れに入れているから、凛花が何をしているのか、本当に家に居るのかすら確証が持てない。
そして、当然のことながら連絡が取れない。

スマホとゲームを取り上げたからといって、学校に行くわけでは無い。
時間があるからと言って勉強をするわけでは無い。
そんな事はわかりきった事だ。

何度もスマホを取り上げると脅してきたけれど、結局今まで一度も取り上げたことはなかった。
どうせママは取り上げないと思っていただろう。
実香子は一切約束を守らない凛花に腹が立ち、激情のまま行動したのだ。

凛花のことを不安に思いながらも仕事が遅くなってしまい、帰宅は暗くなってからだった。
凛花の部屋の明かりは消えている。

凛花が部屋に居なかった。
家の中のどこにも。
スマホとゲームは隠した場所にそのままあった。

予想していた事態ではあった。
家出をしたのだ。

実香子は家を飛び出した。
近所の友達に電話をした。
思いつく限りの場所に探しに行った。
しかし凛花は見つからない。

それ程遠くには行かないはずだ。
きっと帰ってくるはずだ。
そんなバカなことをすることは無い。
友人からは、凛花ちゃん見つかった?とLINEが入る。

ああこんなことならスマホを取り上げるのでは無かった。
連絡が取れない、所在が分からないことがこれほど不安になる事だとは思わなかった。
警察に連絡するべきだろうか。
でも今それ程遅い時間ではない。

家に戻ったり、外を歩いてみたりを繰り返す。
どうしよう。
凛花が帰ってこなかったらどうしよう。

不安に押しつぶされそうになっていたら、玄関の鍵が開く音がした。
凛花が帰ってきた。

SIDE: 凛花

部屋でずっとぼんやりしていたら、いつの間にか眠っていた。
途中で何度か目が覚めたけど、起きたくなくて何度も無理矢理寝た。

でもさすがにもう眠れなくなった。
仕方なく起きることにする。

とりあえず部屋にある漫画を読む。
内容が頭に入って来ない。

スマホとゲームが無いと本当にやる事がない。
やる事が無いと、嫌な考えとか、怖い考えがどんどん迫ってきて、膨らんで来る気がする。
必死でそれを見ないようにする。
でも今何も誤魔化す手段が無い。

スケッチブックを開いて、絵を描こうとする。
描きたいものも思い浮かばない。

スマホとゲームを取り上げられたら、自分はどうなるのかなと思ったけど、思ったよりはどうにもならない。
取り上げられたら死にたくなるのかなと思ったけどそんなことはなかった。
ただ何もかも、今までよりずっとどうでも良い気分になっただけだ。

やる事もないし、何もしたくないし、何も考えたくない。

自分が空っぽに感じる。

気づいたら夜になってる。
ずっと何も食べて無い。

お腹が空いた。

冷蔵庫の中を見ても、食べたいものが無い。
何か買いに行こうかな。

とりあえずコンビニにでも行こう。

外に出て、スマホを持っていないから、お金も無いことに気づいた。
そうだった。
買い物出来ないんだ。

そのまま散歩することにした。
このくらいの暗さなら、あまり人が見えなくていい。
空は曇っていて月は見えない。

しばらく歩いていたけど、どこにも行くところがない。
公園にはカップルが居る。

やることもない、行く場所もない。

家に帰った。
玄関を開けたら、泣きそうな顔の母が立っていた。

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