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小説家という道

 今年の春、22歳という人生の節目を迎えて、私はうつ病という病気と付き合っていた。すぐに別れる事のできないこの病と付き合いながら「仕事」を探すことが非常に難しかった。

 人に話せば「なに簡単な仕事なんぞいくらでもある。甘えるな」とでも言われるかもしれないが、私の場合はそれができない。昼夜問わずベッドの上で苦悩している私にとって、外に出て働くということは、素人が野球のピッチングで時速165kmを出すのとなんら変わらない行為なのだ。

 しかし、いつかは自立しなければならない。自分の足でベースを踏み進まなくてはならない。

 そんな中、私は「小説家」になるという道を選んだ。それは、小説家という仕事がラクそうだとか簡単そうだとか、そんなふざけたことを考えた上でのことではない。小説家という仕事が生半可な覚悟でできないことは重々承知している。ともすれば、外に働きに出た方がある意味ではラクかもしれない。小説ではないが、今こうして文章を書く事にも、私は一つ苦労をしている。

 ではなぜ、そんないばらの道を選択したのかと問われたら、小説を通して、自分の存在、あるいは世界の真実のようなものが分かるような気がしたからに他ならない。小説という世界は、消費されていく一文明であると同時に、無限に広がる宇宙であるように私は考える。私は、そんな宇宙を探求し、まだ見たことがない美しい世界を見たいと望んだのだ。

 だから、私は「小説家になる」と決断したことに後悔は一切ないし、これからどんな苦しみがあろうとも乗り越えてやるという覚悟をしている。
 もちろん時には落胆することもあるかもしれない。もしかしたら一生デビューできないなんて事も大いにありえる。しかし、絶対に後悔はしない。すべては、誰もまだ見たことがない美しい世界を見るために――。

#自分で選んでよかったこと

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