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ノコギリザメ(K.Yくん)

この記事は2020年7月12日にホームページにて掲載したものです。

教室の再開を、心から楽しみにしていました。
約3ヶ月ぶりの教室の再開。
子どもたちもとても楽しみにしていてくれたようで、久しぶりの教室の雰囲気を、まるで実家に帰省したみたいに喜び味わう姿がありました。

「懐かしい~」だなんて気持ちも、15分もすればすっかりいつもどおり。それぞれが自分の作品に向き合う時間が始まりました。

自粛期間の間、おうちで描いていた絵を見せてくれたり、話を聞かせてくれたり。長いお休みでしたが、子どもたちの中で、絵やモノ作りの気持ちが消えずに灯っていたことを嬉しく思いました。

今日、Kくんが持って来ていたのは、魚の図鑑。まだ買ったばかりの本の真新しいページを折り曲げないように、パラパラと中身を見せてくれた。

「これ見て、ノコギリザメ。鼻がノコギリみたいに長いんやって。」

そのサメのフォルムと特性に興味津々の様子で、たくさんおしゃべりをしてくれた。Kくんは絵を描く前に、まずお喋りをするのだ。とてもとてもとても(もうひとつおまけに、とても)長いおしゃべり。
その後に、そのおしゃべりを表すみたいに、絵を描き始める。彼にとってのおしゃべりは、ある種のスケッチや下書きみたいな役割をするようだ。

「ノコギリザメは1メートル50センチあるんやって。」

図鑑の情報を見て驚いていた。これには僕も驚いた。ノコギリザメのことは知っていたけど、60cmの魚くらいの大きさだと思っていたから。

「1メートル50センチって、どれくらいなんやろ」とのKくんの疑問に、「私より大きいくらいじゃない?」と彼の姉が答えてくれた。
「そんなにでかいんか」と驚くKくん。

1メートル30センチほどの姉を畳の上に寝かせると、となりに画用紙を並べて1メートル50センチくらいの画面を作った。
実物大で描くらしい。おもしろいアイデアだね。

「手伝ってくれ」と僕に声をかけ、あれこれしゃべりながら下書きを仕上げた。立派なものだ。

この後図鑑を見ながら茶系の色を重ねていくのかと思い、アシスタントの僕がなんとなくその色を選んでいると、

「その色は使わん。色は僕が考えた好きな色にするねん」

だってさ。さすが、Kくん。これには僕も、その手があったかと感動した。あやうく、つまらない大人のつまらない導入をするところでした。あぶない。あぶない。


ここからKくんは、ものすごい集中力で、背ビレや体、ノコギリなどをどんどん塗り始めた。こうなったときのKくんは、すごいよ。

それから海の生き物や岩やワカメを描いた。

青と緑を絶妙なこだわりのバランスで混ぜた色を、たっぷりと水を含ませたスポンジで塗り海を描いた。


あっぱれ。サイコーのノコギリザメだね。
大物を釣り上げたときのように、横に並んで記念写真パシャリ。

この作品は、Kくんの心に一生残ると思う。
なんだかそんな気がする。

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