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【詩】 とくべつな絵本 #シロクマ文芸部

 夏の雲、と今年はじめて思ったのは、六月の、梅雨のあいまのペールブルー
 このへんは田舎で高い建物があんまりないんだ空が広い
 絵のほうが似せているから当然だけど、やっぱり思う、絵みたいだ
 夏の雲、とびだす仕掛けの絵本のようで、現実味のないふしぎみたいな立体感

 夏がこんなに眩しくて
 くっきり鮮やかきらきらでこぼこ
 しているのに
 ふしぎに脆くて呆気ないのは
 あの白い
 夏の雲のせい

…だなんて思う八月だ
 とくべつなとびだす絵本の仕掛けから、毎年毎年騙されたまま
 泥水蹴って走り出す、ホモ・サピエンス、同胞はらから
 ほらたとえばさ、今空に、飛行機雲がみっつもかかる
 空からの「頑張れ」エールの大サービスだ
 こんなので元気が出ると思われてるのも癪だけど
 やっぱりその、無邪気な親心に笑っちゃうんだ
 泥水蹴って走り出す、ホモ・サピエンス、同胞よ
 入道雲が紅く染まり、やがて夜がくるだろう
 さあ夏の花が空に咲いた
 空にいるあのひともかのひとも、みんな見ているだろう
 宵闇に影と影とが手を繋ぎ、
 夢のかよい路、遠く歩むひとの影を望み
 僕ら高く、手を振るだろう
 夏が用意したとくべつな絵本のとびだす仕掛けにも
 届いてしまうくらいに、高く

 泥水蹴って走り出す、ホモ・サピエンス、僕は僕たちが愛おしい
 夏の雲がそういうことを思わせるんだ
 人生が用意した、とくべつな絵本の中で





 暑い…
 みなさま体調にはお気をつけてお過ごしください☆彡


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