選択的夫婦別姓に賛同できない気持ち

20代半ばで入籍した既婚30歳女です。
入籍してからは夫の姓を名乗っています。

私は30年間の人生で2~3回ほど苗字が変わっています。

うち1回は入籍によるものですが、他は幼少時の親の都合によるもの。
両親が離婚し、数年後に母が再婚。引き取り手である母が独り身の間は保育園を年単位で休園し、遠く離れた母の実家に預けられていました。
そんな園児時代のため、保育園で配布された絵本には裏表紙に書かれたおなまえが実父の姓のものと継父の姓のものとがありました。祖父母に世話になってた間は母の旧姓を名乗っていたのかどうか、把握していません。(だから30年間で2~3回と曖昧)

だからおそらく入籍時の姓の変更もとい「苗字が変わること」に対して人一倍抵抗がなかったし、むしろ思春期・反抗期に覚えた連れ子という身の疎外感からやっと開放されるのだと喜びしかなかった。
(なお、この疎外感は馬鹿な私の勝手な一人相撲であり、継父はきっちり養子縁組して大学まで学費もしっかり出してくれた。両親はすごい。)

入籍してすぐに、職場で苗字変更の手配と積極的に「新しい苗字でよろしく~」と同僚各位にふれ回った。ルンルン気分全開で。
とはいえこの職場、入籍後の旧姓使用がWelcomeなスタンスであったため「あらそうなの」という顔をされたり「なんで旧姓使わないのめんどくさい」という文句も受けた。(仲良い同僚で軽いジョークである)

しかしまあ、当時の私は入社半年足らずで社外どころか部署外との関わりすらなく、付き合いが所属部署の10~20人程度しかいない身だったゆえ結婚報告が簡単に済んだが、これが社内、社外の関係各所へ何十人に「入籍して苗字が変わりました」のお知らせメールを送るとなれば、ルンルン気分とはいってられなかっただろう。

「選択肢が増えることはいいこと」と思っていた

漫画「もやしもん」で「選べるということは豊かなこと。すばらしいこと。」と学んだ。数年前、選択的夫婦別姓制度の話を知った当初は良いことだと思った。実際、入籍後も通り名として旧姓で働く女性を何人かみてきたし、周囲に混乱がなく便利そうだった。10代の頃に好きな人の苗字に自分の名前を合わせてキャッキャウフフする遊びをしていた自分には解らない感覚であるが、「世の中そういう人もいるんだろう」「そういう人の気持ちが楽になるなら良いことではないか」と思った。

夫婦別姓を求める理由があんまりだ

しかし、ここ最近Twitterなどで目立つようになってきた夫婦別姓主義者の主張をみていると、どうも賛同しかねる内容ばかりだ。

「役所のみならず免許証、銀行口座、クレジットカード、奨学金や保険などの各種契約などの名義変更の手続きが面倒くさい」

(基本的に)一生に一度のことに「面倒くさいから法律を変えろ」というのか。図太いにもほどがある。朝に役所行ったあと警察署と銀行を回れば一日で終わるだろう。
もう少し建設的なことをいうと、法律ではなくシステムを変えるべきという話である。それこそマイナンバーカードに運転免許証機能があれば、警察署での手続きが省略できるようになる。銀行もいい加減にオンライン手続きの検討くらいはしていると思いたい。そもそもソニーや楽天などのネット銀行にしておけばアプリ申請と書類郵送で済む。
重ねて言うが、こんな「面倒くさい」は理由にならない。小学校からやり直せ。
そして、どちらかといえば入籍のために戸籍抄本を入手する方が大変である。
(勝手ながら、この面倒くさい主張してる人のほとんどが結婚入籍に関する手続きの全貌を把握していないエアプ民であると踏んでいる)

「離婚したら姓を変えた方(ほぼ女)だけがすぐ周囲にバレる」

言いたいことはわかるが、親の離婚を経験した身からすればなんとも腹が立つ無責任な主張だなという感想である。
この主張の行き着く先は「昔みたいに苗字変わらないから気軽に離婚再婚できる~♪」というカレカノ気分で戸籍を書き換えていく人間が増えるんだろうなという危惧しかない。

「当たり前のように女が氏名変更しなければならない屈辱」

これは私が最初に想像した「世の中そういう人もいるんだろう」のそういう人の主張だと思う。正直、共感も理解も難しい。しかし、だからこそ法律改正を求めるんだろうと納得できる。

真に求めていることは別にあるのではないか

この夫婦別姓を求める主張をざっと見てきて思ったのは「本当にそれでいいのか?」という疑問である。
これらの主張の本質は「どうして女ばっかりが」という不満のようだ。であれば、現在の日本の法律にはとくに問題がない。だって「夫か妻のどちらかの姓を選べ」となっているのだから。
「どうしても自分の姓を変えたくない」のならば、パートナーに自分の姓になってもらえば済むのである。法律は十分に選択肢を与えてくれている。

本当に望まれているのは「結婚したら妻は夫姓を名乗るのが一般的」という世の中から、「夫姓、妻姓どちらを選んでも一般的」という世の中になってほしいということではないだろうか。
そして、これはきっと令和生まれの子が結婚するころには多少そういう世の中に進んでいると信じている。あまり嬉しい話じゃないが、偉そうにできるほど稼ぐ男子がどんどん減っていて、じきに20代に限れば年収の男女差はなくなりそうだし、いまの若い女の子が割り勘傾向であるなら、そのあたりの意識も変わってくるだろう。なにより、我々結婚を許す立場にある世代が「どちらの姓にしてもいいんじゃないか」と言ってやれば済むのである。結納省略、共働き上等の我々世代ならば、夫姓に拘る理由もない価値観を持っているはずだ。
もちろん、きちんと結納を交わす由緒正しき家柄の方はその風習をしっかり守っていただきたい。


いま結婚したいのにできないと悩んでいる方には申し訳ないが、私は上記の理由で選択的夫婦別姓を取り入れることに反対している。たぶん、きっとそこじゃないのだ。
これは偏見だが、夫婦別姓を選ぶ夫婦の少なくとも半分は、次に「子どもの姓」で不満を抱えたり揉めるんだろうなとも思っている。

【以下蛇足】
夫婦同姓が伝統的文化だとは思わないが、現在の戸籍はじめ各所の名簿録などのシステムは姓を基準に一家族と括っているはずだ。これを改めるのは大仕事になる。ここ数年で電子カルテから電子戸籍とシステムを構築した病院や自治体がこんな早々に仕様の大幅変更を求められる=めちゃくちゃ金がかかる事態になるのはよろしくない。COCOAアプリのようにしょうもない中抜きくってまた税金上がるぞ。マイナンバーカードや運転免許証に旧姓併記っていうだけでずいぶん頑張ってもらってるぞ、きっと。

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