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史実通りなら仕方ない | 映画「梟-フクロウ-」感想

⚠️ 史実らしいからどこからネタバレかわかんないけど、確信的なところは除いて内容には触れてます。

 なんで見に行ったのか、と自分に問うてみても正直よくわからない。歴史はそんなに興味ないし、全く詳しくない朝鮮の話だし。一つ言えるのは、このキービジュアルの目に針を突きつけられている画像がなんかホラーっぽくて興味を惹かれた。(実際はホラーではない)(ちなみに昔のゾンビ映画で目に尖ったものが刺さるシーンを思い出した)あとは、なんだかんだで韓国映画はレベルが高いから、韓国で色々受賞してるっぽいこの映画がつまらないことはないだろうという感じだろうか。つまり、積極的に見に行った理由はない。本当になんとなく見に行ったんだね。


あらすじ

盲目の天才鍼師ギョンスは、病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。
しかし、ある夜、王の子の死を“目撃” し、恐ろしくも悍ましい真実に直面する。
見えない男は、常闇に何を見たのか?
追われる身となったギョンスは、制御不能な狂気が迫る中、昼夜に隠された謎を暴くために闇夜を駆ける―
絶望までのタイムリミットは、朝日が昇るまで。

公式より

 あらすじにある王の子の死って中盤辺りなんだけど、歴史だからネタバレにはならないのかな。信長が本能寺で死ぬみたいなレベルの話なのかもしれないね。

感想

 面白かったのは間違いないと思う。やっぱり韓国映画のレベルは高いなあと実感させられる。ただ、見終わった後の、カタルシスが足りない感じ、エンドロールを見ていて、もっとスッキリさせてくれという欲求がぽこぽこと沸き上がってくる感じはある。結局のところ、主人公の敗北感が拭いきれないんだね。どれだけ復讐したとしても。

前半は盲目の鍼師の出世物語

 盲目の鍼師ギョンスはすごい腕が良くて、稼ぎたいなあと思っていたところ宮廷に登用される。借金まみれでボロ家に住んでるから、お金を稼いで病気の弟のために薬を買いたいんだね。んで、宮廷に入って頑張ってると、腕の良さを認められてどんどん偉い人の担当になっていく。あらすじで天才って言われてるぐらいだから、すごい有能なんだろうね。

 マジで前半は不穏なところがなくて、宮廷の良い面しか映らなくて、そこで結果を出して、認められていくギョンスの物語なんだよね。このまま進んで、数々の困難に打ち勝って大成する医者の物語と言われても違和感がないぐらい。

 ところが事態はいきなり急展開する。王様の子供が清から帰ってきて王と意見が対立する。王は明の時代の中国と仲良しだったから明派なんだね。王の子供はこれからは明ではなく清の時代だから清と仲良くしなきゃあかんと対立するわけ。その上、第三の勢力であるなんか偉そうな人の集団も現れて、途端にきな臭くなる。政争が始まるわけだね。

 前半と事態が動き出した後では映画のジャンルが変わる。前半は医療人情もの、中盤以降は政争サスペンス。それに巻き込まれる盲目の鍼師ギョンスはどうするのか。って話になる。

登場人物の区別がつかない問題

 みんな役割に応じた服を着ているんだよね。医者とか召使とか警備兵とか、同じ役割ならみんな同じ服なんだ。その上、頭に何かつけていたり、髪型に個性がなかったりするせいで、顔でしか人間を識別できない。いきなり出てきたこの人が誰なのかってのが即座にはわからない。この人誰って瞬間が結構ある。モブだったりすることもあるけど。まあ、髪型やら服装で個性出したりしてたら、それはそれで不自然なので仕方ないといえば仕方ない。

 誰かわからない問題のためなのか、名前とか役割名を言うことが結構あるんだけども、それが覚えられないんだよね。人多すぎるし。頭パンクしちゃう。

中盤から急展開

 王の子供が暗殺される現場に居合わせたお陰で、陰謀に巻き込まれギョンスは逃げながら、事態を打開するために走り回ることになる。

 ここからは物語のテンポが上がって、急展開からの急展開の連続。どんどんヒートアップしていく。前半が舞台、設定、人間模様で見せていくとするなら、後半は刻々と変わる状況の展開で楽しませる形だと思う。

 そういう部分は本当に面白いし満足できる。ただ、最後の着地点が僕としてはすごい不満。

 ギョンスの目的はお金を得て、弟の病気を治すことなのは明らかなんだ。だから、陰謀に巻き込まれても、生き残って帰ることが目的になる。だけど、宮廷の中で暮らしていく中で、自分を認めてくれた人たちがいるんだよね。ギョンスからすれば、その人たちだって守りたいわけだよ。外に出られたのに宮廷に戻ったのが何よりの証拠だよね。でも、陰謀によって全て壊され、奪われてしまう。守りたかったものが全部なくなる完全な敗北なんだ。

 もちろん、主目的である弟を救うってことは達成されたんだけど、映画の大部分である宮廷で得たものは全部失われてしまった。だから、見ている僕からすると、主人公の負けなんだよね。最後の最後には首謀者に復讐を果たすんだけど、それは復讐であって失われたものは戻らない。なんともカタルシスに欠けるなあというのが僕の感想。

史実通りなら仕方ない

 だけど、「これが史実だから」と言われれば反論の余地がない。史実の範囲内で、盲目の鍼師というオリジナルキャラを入れて楽しめる物語にしたというのはもちろん賞賛に値する。すごいと思う。多分、歴史に馴染みのある韓国ならめちゃくちゃすごい映画なんだと思う。だから、歴史知識ゼロの僕には刺さらないのかもしれないけど。カタルシスがあるようにifの物語にするのも違うんだろうね。信長が本能寺で殺されそうになるところに誰かが助けに来たら、それは違うだろってなるだろうし。

 というわけで、僕の不満は不満点としてあるんだけど、史実という高すぎる壁があるので、もうどうしようもない。不満を持っちゃいけないのかもしれない。

 なので、結論としては「史実通りなら仕方ない」

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