極私的体験

まだ家族仲が良かった幼少期、クリスマスの日は晩ごはんをひとしきり食べた後に、キャンドルに火を灯しながら今年一年を振り返る、ということをしていて、馬鹿でかいCDコンポからビートルズの曲が流れていた。超有名な「めりーめりーくりすまーす」というものではなく、青盤と赤盤だった。親が割とサブカル人間で、その点に関しては引き継がれていると思う。何がだ。
Strawberry Fields Foreverの終盤のノイズは私の心をざわつかせ、Revolutionのイントロは私の心を躍らせた。私が初めて出会ったビートルズはそれだった。

特に4人のことについて深掘りするわけでもなく、イエローサブマリンがハイになってた時に作られた曲、Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Bandがインドでの出来事に影響を受けていることを親に教えてもらったくらいで、でも大体の曲はわかる、わかるぞ!という具合にビートルズは日常にいた。

過日、ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インドというドキュメンタリーを見て、上記のことを思い出した。というのも内容が、とある男性が日常に疑問を持ち、インドに行ったところビートルズに出会った、という極私的体験を追想する、というものであったからだ。ビートルズファンの方からしたらビートルズほぼ関係ないやん、というツッコミや、ビートルズが全然かからないやん、というお怒りの声が聞こえてきそうだが、Room237を想起させる、ビートルズオタクによるビートルズオタクのためのビートルズオタク映画だった。

サイドストーリー的に挟まれる、デヴィッドリンチの瞑想はいいぞパートや、マリハシの欧米進出の野望というのも垣間見れてよかった。ビートルズのメンバー曰く、「瞑想はクスリよりキマる」らしく、現在読書中の「もうすぐ絶滅するという紙の書物について」の中で言われた「宗教は民衆のコカインです」という一節を思い出し、薬物からも宗教からも遠い自分はなるほどなぁ、という気持ちで見ていた。

劇中にビートルズ史家が出てきて、インド修行でできた曲数について、48曲か30曲で監督とちょっとした議論みたいになっていて、「好き」という気持ちが強まると衝突は避けられんものだなぁと、よく俗に言う「解釈違い」というのがこれか、と膝を打つ。

蛇足だが、リンチが「創作の源はJOYだ」といったことが一番心に残っている。もはやビートルズと何の関係があるんだ、と言いたくなるが、監督のJOYが詰まったこの作品は個人的にはかなり好きだった。

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