見出し画像

尊敬する看護師O先輩の良い言葉

この記事は看護師を志そうとする学生や、悩む人に向けて伝えたい。興味のない方には必要のないものなので、お時間ムダになるのでUターンお願いします。


はじめに

なぜあなたは看護師になりたかったのか?
多分、理由として「家族、親戚が看護師だから」「昔入院した時に看護師に優しくしてもらったから」「亡くなった祖父に優しくしてもらったから」という憧れの念で入学する人が殆どだ。
しかし、現実は違う。残念だが、憧れを抱いて入学するならばやめたほうがいい。私も以前教師に言われた言葉はあるが、それと違う意味でやめた方がいいと素直に言える。

私がcaseシリーズを残している理由は、看護のリアルな現場を知って欲しいからであり、ここは『女の戦場』だ。
人間関係に悩みドロップアウトする者が9割以上。仕事がついていけないからやめるという人間は実に1割以下だ。
今でこそ、男性看護師の需要が増えて少しずつ増えているが、部署を見るとどこに男性スタッフが配属されているか?
「手術室」「検査室」「内科病棟」が殆どのはず。なぜなら、他は女の戦場なので、辞めていく男性看護師が多いのだ。

ここで男性看護師は自分を偽らないといけなくなってしまう。女の戦場で生き残る為には、ボスに媚を売り、医者からは必要とされ、患者にもそつなく対応し、女性対応の患者さんからの「信頼」を得る事がスタートラインになる。女性対応しか赦されない患者からの信頼を得られなかった男性スタッフは「あの男の人に変なことされた」など変な幻覚を吹聴されることもある。女の戦場に入れなかった者もそうだ。影で「ああ、あいつは使えないから多分そういうミスすると思った」と罵られる
はっきり言おう。私はこの看護現場においての内容は全てノンフィクションしか書かない。脚色した話をここで書いたところでまた幻想を抱いて実にふわふわしたところで中途半端な看護しかしない若者が育っていく。

昔のように『技術を観て覚えろ』という時代からかけ離れてしまい電子化が進みコミュニケーション力は激減。そんな中で、今の私に伝えられるものは何だろう?


自分が尊敬するべき看護師像を持て

我々が看護師になる前に必ず『ナイチンゲール誓詞』を覚えます。戴帽式の時にこ全員で読み上げるのが恒例行事だった。(今は感染の兼ね合いでキャップが廃止になったのでどうだか知らないが……)
フローレンス・ナイチンゲールという人が何をしたか知っている人は何人いるだろうか?少なくとも、これだけ仰々しく彼女の功績を今の世まで伝えられているのに、彼女が具体的に何をした、というのは日常で行っている”あたりまえ"のことしか書かれていない。
看護の基本の基本。これは「空気」「水」「食事」「衛生面」の確保に尽きる。薬も何もない状態で、今も戦争をしている国がある中で、果たして何が出来るか。それは衛生面の確保と生きる為の水と食事。薬なんて無くても人間には自然治癒力がある。ナイチンゲールという人は遥か昔にこの誰でも実践できることを行い、人々を救った。

ただ、私はナイチンゲールをさらっとしか知らないし、実際彼女から言葉をかけられたわけではないので、理想とする看護師像かと言われると違う。
ではここで言う「理想の看護師像」とは何か。


理想の看護師に「なる」ではない。

先の記事で理想の看護師像について触れたが、あくまで理想は目標として必要だが、その人になれるわけでも変わる必要もない。

私が尊敬しているのは「歌って踊れる看護師になれ」と笑いながら最後まで貫いた当時の看護部長H氏と、准看護師と罵られながらも誰よりも白鳥の如く水面下で黙々と勉強した母。そして、姥捨山(うばすてやま)と恐れられていた手術室時代を生き抜かせてくれたOさんのたった3人だ。

ただ、尊敬するひとの数が多ければいいものでもなく、理想の看護師に出会えなければそれはそれで仕方がないことだと思う
ただ言いたいのは、理想の看護師像があればその人が偶然放った言葉が腑に落ちたり、ちょっとした時にその言葉を振り返り自己をもう一度見つめなおし分岐点からやり直しできる中継地点になる。
なので、先輩から得た心に安らぎをくれたいい言葉を抜粋してここに残す。


・「歌って踊れる看護師になれ」


亡くなったH部長が新人で入社した時から常日頃言っていた言葉のひとつ。
最初はこの人頭おかしいんだろうか?と全く理解できなかったが、これはあくまで喩えのひとつであり、自分にスキルが多ければ多いほど、それは人を笑わせることにつながる笑顔はひとの心を豊かにする。歌でも踊りでも何でもいい。ひとりの患者を笑顔にさせるサービスを提供しろという部長のメッセージと思い、今も私が続けていることの一つである。

・「かたわ(使えない)になるから、急性期に最低7年はしがみつけ」


母が最初から言っていた言葉のひとつで、私達は命を預かる仕事をしている。視野が狭ければ狭いほど仕事への慣れで動いてしまい、ひとの命を預かっているという肝心の事を忘れてしまう。
最初から医者と看護師が少なく、ただ患者を眺めているだけの仕事ではなく、まずは辛くても血を吐いても最低限「人体解剖をしっかり勉強」してから偉そうな事を言えと言いたかったのだと思っている。

・「恥じはかいてなんぼのもの。聞かない事が一生の恥じ」

ことわざでありそうなものだったような(うろ覚え)
これも母から何度も言われたことで、聞かない方が恥じ慣れてから聞くと「今更?」という顔をされる。とはいえ、分からないことが分からないのだから、「今の自分に何が出来ていないのか分からないことが分からないと聞きなさい」と言われた。勿論、言われた通り先輩に同じことを言ったが、ものすごく困惑された。
多分、聞き方が悪かったのかもしれない。ただ、新人は何も分からないし、何を聞いていいのか分からないのが事実。なので、先輩になった今は相手から聞き出すのではなく、「これは分かる?」「これってだれかに教わった?」と逆提示してあげる方法をこの言葉から学んだ。

・「あんたは組織の為に働いているわけじゃない」

仕事をしていて、私は自分で「看護師に向いていない」とぐちぐち言うことが多かった。元々望んでいないから、という理由をつけてはじゃあやめたら何が出来るの?と聞かれる負のループに突入する。
ここでうちの母が言うのは「やめたいんだったらやめれば?でも働かないなら家には必要ないから出ていきな」と突き放される。
ただ、野垂れ死ぬのは嫌だったので、結果的に仕事に従事していたわけだが、ふと母が言う。
「私達は生きる為に働いているのであって、働かないと生きていけないんだよ。あんたは向いてようが向いてなかろうが、組織の為に働いているわけじゃないんだから、趣味だのやりたい事の為に働いていると思ったら?」


・「私はXXさんじゃないし、私は私だから」


ここからは私の尊敬する先輩の語録です。よく器械だしをしているOさんは医者からあれこれ話を振られるが、全部こうやって返している。

・「ここは1分1秒の戦場だから。器械出しが早くスムーズに進んだら、それだけこの人の麻酔投与時間が減る。ということはわかるよね?」

手術室を私が1分1秒の戦場と言うのには理由がある。手術は患者さんの麻酔が投与され、効いてから初めてスタートする。執刀します、からタイムカウントされるのだ。つまり、この医者の介助をするメインスタッフが阿吽の呼吸がしっかりしているとそれだけ麻酔時間が減るのだ。それだけ術後の経過も良くなる。たかが1秒、されど1秒の世界。それをOさんは厳格に守っていた。

・「自分の大切な人が適当な扱いを受けたら嫌でしょう?あんたの親、兄弟、恋人だっていい。子供でもとにかく大切な人がさ、こんな裸で適当な姿にされたら嫌でしょう。私は嫌だな」


よく外介助に入っているOさんは記録にだけしか集中しない若いスタッフにこのような事を言っていた。手術の時は内視鏡で患者さんの体位が変わるので、かけている布(腕部分だが)がはだけることがある。手術の体位によっては布が落ちたりすると全部丸見えになるからだ。

・「あんたはお母さんじゃないから。お母さんがどんなにすごい人だろうと、私はお母さんのこと知らないし、私は今のあんたしか知らないから」

母と比較する看護師が多い中で、Oさんだけは私を見てくれていた。家族のだれが一緒に働いていようともわたしはわたしでしかない、という気持ちを再認識させてくれる。

・「昔付き合ってた男に、『お前って俺のこと見てくれないよな』って言われたけどさ、何で自分の子供でも何でもないのにあんたの面倒みなきゃいけないのさ。私は私の為に働いているわけで、あんたの面倒をみる為に仕事してるんじゃないって別れたよ」

現状から離れる勇気と決断力を持つOさんの力強い言葉。

・「私達はさ、病棟の人みたいに24時間状態看ているわけじゃないけど、術後訪問に行って、元気に回復している姿を見るとあの時大変だったけど、頑張って良かったな、って思えるよね」



術後訪問に同伴した時に見せたOさんの大手術後の患者さんに見せた笑顔。

・「ひとりでも欠けたら手術は成立しないんだよ。自分を必要ないと思い込むな。自分の役割を立派に果たしている。それだけでいいじゃん。別に医者の為に仕事してるんじゃないんだし」

一緒に飲みに行くと酔っぱらったOさんはよく喋る。そんでいい言葉をタバコの煙と共に吐き出す。

・「私はさ、年取ってまで頑張りたいと思わない。今、この時を楽しく生きられたらそれで充分。明日には死ぬかもしれないでしょ?だから後悔しないように一日一日を生きる」

Oさんはタバコと酒さえあれば十分、そして可愛い甥っ子の成長ぶりを楽しそうに語る姉御だった。

・「(器械出し)やりたかったらいくらでも教えるけど、やりたくない事をやる必要はないよ。だってストレスたまるじゃん?別に他の人もできることは他の人に任せていいんだし、あんたは面倒くさい記録書いてくれてるから助かってるよ」

他の人は中堅のくせに器械出しもできないのか、とあきれている中で、Oさんだけはやりたくないもんは無理しなくてもいいと避けてくれた。

・「好きなことに時間を使った方がいい。私は早く帰ってタバコ吸ってお風呂に入って寝たい。趣味に時間が使えなくなったら、働いている意味もわからなくなるよ」

Oさんは休憩室でもガチで寝るので、本当にお昼寝命の方だ。

・「わからない事がわからないんだから、わかれ、って言われても困るよね。あんた(※医者に対して)の説明方法が悪いんだよ」

医者に対しても対等に文句を言い放つ。昭和の時代を生き抜いた方とは思えないくらい、医者と実に対等だった。

・「移動したらそこに従えって言うけど、慣れるまでは大変だし、比較したい気持ちはわかるよ。私も外科からココに来た時、一か月働けるかな~と思ったもん。でも、ここでは自分が必要だから、って考えると踏ん張るしかなかったね」

自分の立ち位置を受け入れて、それでいてすぐに前をみている。

・「子供欲しいなって思った時期もあるし、昔彼氏から言われたこともあったけど、お前が産めよって言ったら『何バカなこと言ってんだ!?』ってあきれられたよ。なんで女だけ子供産まなきゃダメなんだろうね」

甥っ子が可愛くて仕方がないO先輩がふと言った言葉。

・「ここに来てくれて、ありがとうね」

ありがとう、という言葉は一番ひとの心にすっと馴染む。
実は、私が移動してきた時に当時のD主任と、Oさんのたった二人だけが「ありがとう」と言ってくれた。当時の私は緊張しっぱなしで、その言葉の温かさに全く気付いていなかったが、この場所に必要なんだ、と認識してくれた素晴らしい言葉だと思う。


おわりに

長くなったが、看護師を目指したい人、または無関係な仕事に従事している人でも、ちょっとした言葉一つでその人のこころをほっとさせることが出来る。あくまで実際に変化するのは「自分の力でしかない」が、そのきっかけ作りとして小さな言葉かけ一つでも本当にほっとさせることができる。

新人が入ってきた時は褒めるでも貶すでもなく、見守る。

最近、テレビで近頃の若者は褒められるのが嫌い。という結果が出て驚いた。それは多分、褒める側の人間が、褒められた側よりも上位にいると思っている
もしも褒められることが、その人の自己肯定感を下げていくことにつながるのであれば、褒めるのではなく「感謝する」ならばどうだろう?
誰でも「ありがとう」「ごめんね」と言われて悪い気がする人はいないはず。

私は今日もちょっとした事を見つけては「ありがとね」と言うようにしている。新人が早々と人間関係の悩みでドロップアウトすると、教えた側の時間もムダ、そこにかけた人件費もムダになる。
看護師の職場の離職率は「人間関係」にある。人事部も経歴だけに目を向けるのではなく、しっかりと自分の質問で相手の反応を見てこの人はきちんと仕事が続くかを確認してから選ぶべきだと思う。
余談だが、頭が良かろうと悪かろうと、病院だろうと施設だろうと、『看護師免許』は一緒であり、現場に出ると一切の経歴は関係ない。
そこで必要とされるものは、その人間の「コミュニケーションスキル」のみに限定される。それ以外は新人はみな同等なのだ。

いかに頭が悪くても、教師から向いてないと罵られても、大学に行くお金も頭もなくて勉強も真面目にやってこなかったけど、それでも21年間一度もドロップアウトせずに仕事を続けている一般看護師から伝えられるメッセージです。

これからの看護国家試験は頭でっかちな問題ばかりで、どんどん頭脳だけを求められる世界になりました。しかし、いくら勉強しても現場で活かされる知識はほんの基礎部分だけ。後は現場で全て吸収していくしかないのです。
個人的に、頭でっかちな看護師を育成するくらいならば、もう少し精神看護論と看護倫理に重点を置いて授業を組むべきなんだろうけど、カリキュラム的に終わらないし、国家試験で活かされる部分では点数も殆ど取れないので仕方がないのかな、と現代のシステムに疑問を抱いてます。

ついでに、全部教科書が電子化って言うね……。目が悪い子はどんどん生きづらい世の中になってきたと思う。

ここまで長いものにお付き合いありがとうございました。

#看護の現場
#看護師
#看護師を目指す人へ
#看護観
#ナイチンゲール
#先輩の言葉
#未来への展望
#蒼龍葵

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?