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創作大賞2024感想「赤き月は巡りて」
今回真面目に(いやいつも真面目に書いているんですが・・・)、結構以前に拝読させて頂きましたプロの方の作品に感銘を受けたのでオススメをば。
「赤き月は巡りて」
作者様・霜月透子 様
まず、あらすじが「たった二行」しかない事に衝撃。パンチ力がありすぎる。キーワードは想いあうふたり、夜空なのに真っ赤に赤い月、輪廻転生のたった3つです。
基本、私は興味をもったものしか読まないかなり癖のつよい読者なのですが、これだけのあらすじでどう引っ張るんだろう?とプロの技法が気になったのが最初のきっかけです。
まず、一話をよく心に覚えておいてください。(次のテストに出るよ)
二話で別の主人公が出てきますが、赤い月がポイント。そのまま三話の描写、まるで戦争の追体験状態です。描写がとにかくリアルで先生に伺ったところ、祖母から伺った話を文字に起こされたそうです。これを読むとやはり語り部は必要です。今も私の職場にいる90歳以上の方々は口々に「貴方達は戦争を知らないから今は幸せよ」と話します。
疎開の話、爆撃、防空壕、火の海を逃げ惑う話、トラウマ、家族との離別。私にはどれも想像の世界ですし、やはり文字に起こす力はない。自分が書くとどうしても陳腐な嘘っぽい話になってしまう。
挙げるとキリがなくなりますが、先生がこうしてこの重大なシーンを残してくださったことに、勝手ながら感謝申し上げます。
四話で戦争後になり、カヨさんがあの方の家を訪ねるんですが、時すでに遅しでした。ここが本当にこの時代背景ながら口惜しい。義之さんに「月があんまり赤かったから……」と話すカヨさんの気持ちを思うと生まれ変わってもうまくいかない二人の様子にやきもきします(が、お国の為に!の時代なので致し方なく「いつかまた、どこかで」
五話から突然介護老人ホームの話になったので、「あれ?うちの職場か?」と困惑しました(笑)
しかしここがまたポイントで、カヨさんがでてきます。お相手は少年、涼くん。決してボケばあちゃんではなく、カヨさんはまっすぐに涼くんを通して義之さんを見てます。視点がどうしてものぞき見している気分になってハラハラします。六話で彼女の話をした瞬間、カヨさんは黙ってしまい赤い月を、何か思い出したら会いにきてねと伝えてお部屋に帰ります。
・・・しっかし、カヨさん、しゃべり方が若い(笑)品の良いおばあちゃんって感じですね。
打ち上げ花火とサーチライトの掛け合いが凄まじく絡まりあった描写で頭の中に出てきました。
いやあ・・・せっかくの綺麗な花火を彼女と見ていて、なぜか他人の記憶が混同して戦争の時代がフラッシュバックとは涼くんも災難な・・
そのあとのカヨさんのお手紙をいただいたのですが、内容が手紙というよりめっちゃ小説だった😨普通、手紙に「説明しましょうね」とは書かないような・・うーん。ご高齢の方の書き方なのかな???
もっと手紙らしさを出しても良いような気もしますし、こんなに長い手紙を若い子がおばあちゃんからもらったら軽く引いちゃいますね(;´Д`)
でもそう思わせないのが多分、カヨさんという方のお人柄なんですけどと思っております。
こんなに簡単なことだったのだ。心のままに行動すればいいだけだったのに。様々な事柄に囚われて自ら道を閉ざしていただけだったのだ。
ふたりを取り巻く環境はこんなにも変化してしまったけれど、ふたりはなにも変わらずここにある。ふたりは日々それをかみしめる。
最終話でやっとユキとイチタが出てきます。しかし彼らの姿に驚愕!
この伏線回収の仕方がすっげえなあと思いいい意味で裏切られました。ひととしては結ばれずすれ違いや互いの記憶を思い出さないことが多かったものの、最後にここを持ってくるとは・・・!
内容が内容なだけにせっかく文章能力や纏まりが良くてもハッキリ言って読者を選ぶ作品だと思いました。多分、ジャンルが個人的にウケないとなかなか読まれにくいかもしれません。
輪廻転生と随所に出てくる月の描写がすっごい綺麗なのと、時代の流れに沿ったそれぞれの人物のストーリーが単純にすごくよかった。
登場キャラが少ないのでするっと入ります。まあ・・・涼くんの彼女はぽっと出感が否めませんでしたが、あまり重要じゃないからいいか←コラ
個人的に題名が「廻りて」ではなく、「巡りて」ってなっている事にあえてわかりやすい方を取られたのかな、と思いました。
単純に良い作品なのにどうオススメ文を書いて良いのかわからず結局がーっと思いを綴りました。
これはあくまで、ただの一般市民Aの感想なので、この作品についての感想は当たり前ですが、ひとそれぞれかと思います。
かなりリアルな戦争のシーンだけでも必見。作者様が語り部としてこちらの難しいジャンルに着手して頂いたこと、非常に有難いと思います。
最後はハッピーエンドでよかったです!!素敵な作品をありがとうございました。
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