はじめてのお洗濯
初めての一人暮らしはとてもエキサイティングです。
とりあえず生活できればいいかなと、最初は寝具だけを買いました。
引っ越し初日、届いたベッドをロフトで組み立てた23時過ぎ。
作業音に邪魔されないようにとラジオは大音量で流していました。
翌朝、誰かの咳払いで目が覚めたのですが、おかしい。
だってこの家には私ひとり…………おばけ!?
のはずもなく、隣人の咳払いでした。
前日うるさくしてごめんなさい。
まさかそこまで壁が薄いなんて思ってなかったんだもの。
でもよく考えればそれもそのはず。物件は安さ重視で選びました。
秘密基地みたいにこじんまりした部屋で、寝るのはロフトで。
バス・トイレは別だけど浴槽がないシャワールーム。毎度ゲストハウスを思い起こしながら身体を洗っています。
ちっこい冷蔵庫がついているのでとてもありがたい。
洗濯機は重要だけど、買うお金はないから後回し。
そんなこんなで2週間ちょい、呑気に生活をしていました。
自分がおかれた状況に気がついたのはつい数日前。
やっとこさ家計簿をつけ始め、給料から家賃・生活費・その他諸々どれくらい引かれるんだろうと計算した結果、
やばい。やばいでしかない。やばいしか出てこない。
缶チューハイを買っている余裕なんてないし、ましてやタバコなんか論外。
即座にコンビニに行くのをやめてスーパーに通うようにしました。
でも、スーパーがド貧乏の味方であるなんて幻想だったのです。
どこに行っても卵がバカみたいに高くて買えないし、
調味料を揃えるのにもお金がかかるから味付けはいつも同じになるし、
牛乳さんだって豆乳さんだって野菜ジュースさんだって飲みたいけど……
全部我慢。卵かけご飯が食べれない生活、人生最大の修行です。(そもそも炊飯器ない)
誰の力も借りることができない状況の中、どうしたらもっと生活費を確保できるのか。
「(食費抑えて、しばらくは友達との予定を入れず家に引きこもって勉強して、あとは何が……あ、その前にコインランドリー行かなきゃ…………あれ?)」
コインランドリー代やないかい。
一回で1000円以上も消えるのは私がしたいお洗濯じゃない。
でもいますぐ洗濯機を買えるわけもないし……
1週間ためてしまった洗濯物は、秘密基地サイズの部屋で圧倒的な存在感を放っていました。
私はその時すぐにお洗濯がしたかったのです。
覚悟を決めて、使用前のゴミ袋を手に取りました。
そこに洗濯物を放りこみ、人ひとりはいるだけで精一杯のシャワールームへ。
洗剤と柔軟剤を入れつつ、ぬるま湯が溜まるのを待ちます。
空気が入らないようにきつく縛り、もみもみ……
「(私まじで何してんだろ)」
自分の間抜けさにため息をつき終わった頃にもみもみを終えて、しばらく放置しました。
ご飯を作って食べているうちに、お洗濯の途中だということをすっかり忘れたニワトリのような私。
シャワーを浴びて寝ようと扉を開けた瞬間、たぷたぷのゴミ袋と再会しました。
「(もう寝たいよ……誰だよこんなこと考えたやつ……)」
流すのはいいのですが、しぼる、という一番面倒な工程が残っていたのです。
案の定、手のひらは痛いし水が落ちるにも限界があるし、バスタオルなんか一方の端をしぼったらもう一方の端に水がかかって一生終わらないし……
「知らん!!まじでもう知らん!!」
物干し竿すらない私は、カーテンレールという備え付け物干し竿にハンガーを並べました。
どでかい窓はスモークガラスなのでカーテンもまだありません。
バスタオルがいい感じにカーテンの役割果たして一石二鳥じゃないか?なんてアホなことを考えていると、雨が降ってきました。
頑張ってもしぼりきれなかった水滴たち。そりゃそう。
間違っているかもしれない、いや、たぶん絶対間違っている方法だけど、なんやかんや無事いい匂いになった洗濯物たち。
これが昨夜のお話。
干してから16時間目、まだ乾きません。
はやく洗濯機買わなきゃな。
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