カンボジア研修備忘録

はじめに

 8月17日~27日の期間でカンボジアで日本食の販売活動をしてきました。大学4年の夏に自分の将来もいまだに定まってない中、このプロジェクトに参加することは正直、勇気が要りました。一種の賭けでもありました。それでも、大学に入ってからの自分のモットーでもある「迷ったらやる。」に従って、10日間の実践に挑戦してきました。僕は文章力がない(自分の感情や思考を素直に表現するのが苦手)ので、小学校のころから感想文や小論文は忌み嫌ってきたのですが、今回は、記録に残さないとまた前の自分に戻ってしまいそうな予感がするので、自分のリフレクションも兼ねてnoteに書き記したいと思います。


何かを変えたかった

 このプロジェクトを知ったのは、6月12日月曜日。当時、教育実習期間中であったが、6月10日が土曜授業だったため、その日が振替休日で、実習中確認できていなかった大学のポータルサイトに掲載されていた情報に目を通していた時にこのプロジェクトを見つけた。しかし、記載されていた申込締切日は確か6月15日で、教育実習は16日までだったので、そんな余裕はないと参加は諦めていた。それから教育実習を終えてして、実習後の書類の作成等も済ませ、実習におけるすべての課程をひとまず終わらせたのが、6月下旬。改めて、このプログラムの情報を確認してみたら、6月いっぱいまで申込延長してるやんって気づいて検討した。当時、実習を終えて、教員にはならないなって思っていたけど、かといって将来やりたいことも分からない状況で今から就活するのも気持ちが乗らなくて、もっとじっくり自分の将来について考えるために卒業を一年延ばそうかなと思っていた。でもただ一年延ばしても意味はないし、せっかく延ばすならこれまでやらなかったことをやろうと思って、申込締切日に滑り込みで申し込んだ。正直怖かった。費用もかかるし、卒業を一年延ばすことに関して、親は快く思ってなかったし、来年の就職に向けて夏のインターンも始まっていたし、こんなことしていていいんだろうか、結局去年と同じで就活に乗り遅れるんじゃないかって不安だった。でも、今のまま日本で自分の人生を考えていても自分のやりたいことは見つからない気がして、新しい環境に身を置けば、自分のやりたいことが見つかると信じていた。

タフな事前研修

 それから二週間後、事前研修が始まった。本当は一週間後(7月8日)が初回の事前研修だったが、もともと予定が入っていたので、第二回目の事前研修が自分にとっての最初の研修だった。事前研修は毎週土曜日に約2時間行われ、渡航前の最後の土曜日まで全7回行われた。申し込み時点で分かっていたけど、やっぱり多いなって思ったし、自分にとっての2回目の研修でチーム組まれて、商材を決定して、3回目にはカンボジア人にオンラインで販売してって言われて、想像以上の展開スピードに焦った。その時期は大学の期末の時期でもあって、それなりに忙しかったが、最年長である自分が模範であらねばと思ったし、事前研修にはカンボジアの日本食品商社(Daishin)の社員、インターン生、カンボジア人スタッフも参加していただいたので、可能な限りの時間と労力を注いだ。

翳り。

 渡航までの期間が約1週間に迫った頃、プロジェクトに対する不安が大きくなってきた。というのも、自分以外の参加者全員が年下で、事前研修の出席率もまばら。正直、知識も能力もさほど高くないと感じていた。渡航前に自分のチームメンバーと対面で顔を合わせる機会を設けたが、どうやら自分の方が視野が広そうだし、総合的に最適案を出せるのは自分だろうなという印象だった。そのため、自分は最年長ということで自分がチームのリーダーを任命されていたが、おそらく自分はチームを引っ張っていくような立ち回りをするのだろうと思ったし、それが一番効率が良いと感じていた。決してトップダウンの組織が悪いとは思わないが、自分はこれまでもいくつかの組織でリーダーを担ってきた中で、割とトップダウン型の組織形態になることが多かった。しかし、結局、最終的に組織のメンバーを駒にして、自分の権威を誇って終わっていた感覚だった。そして、一つのプロジェクトが終わったころには、そこからの学びを言語化できずに思い出で終わっていた。僕は今回も同じことになるのではないかと心配だった。

カンボジアでの10日間

Day 1

 他の参加者と初めて顔を合わせる。みんな色んな個性を持っているのが面白い。

カンボジアでの最初の晩餐の様子

Day 2

 AEON MALL Phnom Penhとボンケンコン市場を視察。
 AEON MALLは3階建てで、専門店街も併設されており、かなり広い。顧客層はカンボジアでもかなり高所得者層らしいが、日本人からするとあまり価格帯が高いとは感じなかった。AEON MALLということで日本企業の商品も多く、日本語表記のパッケージで売られている商品も多かった。カンボジア人にとってはその方が、安心感と高級感があるのかもしれない。

AEON MALL Phnom Penh。思ったより広くてびっくり

 ボンケンコン市場は、生鮮食品、衣料品、生活雑貨、床屋、ネイルサロンなど、生活に関するものすべてが一か所に集まっており、まさに東南アジアのマーケットという感じがした。観光客は別に歓迎されてなく、現地民は自分の生活のためにそこにいるという感じだった。店員はそれぞれ思い思いのスタイルで販売しており、横になって寝ていたり、スマホに夢中になっていたり、商品を売ろうという気概は感じなかった。生きることと仕事をすることの区別がほとんどないように感じた。

ボンケンコン市場。the現地市場。五感の刺激が強い。

Day 3

 ボンケンコン市場近くのおにぎり屋さんrice ball Phnom Penhさんのご協力を頂き、店前のスペースをお借りして、卵焼きの調理、販売をした。その周辺の相場を考慮して、とりあえず、価格は低めの2000リエル(0.5$)で販売し、市場に浸透させようとした。結果、目標の倍以上の55個が売れた。僕らは、初日は売れないだろうと思っていたので、予想以上の結果に嬉しかった。実践後、チームで振り返りを行い、感想を共有したところ、同じチームの中でもそれぞれ見ている世界が異なり、自分が持っていなかった視点をそれぞれが持ち合わせていたことが分かった。市場調査の時からなんとなく気づいていたが、彼らはちゃんと自分自身の目的をもってこのプログラムに参加していたし、自分にはない素敵な視点をたくさん持っていた。僕はそれが一番嬉しかった。

とうとう実践開始。一人目のお客さん。嬉しかった。

Day 4

 初日の結果を受けて、価格を4000リエル(1$)に引き上げた。そして、新たにお好み焼き味も追加し、店の装飾も改善した。午前はチーム全員で販売し、午後は販売はチームの中高生に任せ、私含めた大学生3人は新たな提携先を開拓しに行った。新たな提携先は見つからなかったが、その間に中高生ペアが奮起して、売上を伸ばしてくれた。結果、売上個数は37個となり、初日の利益額を大きく上回った。異国の地で中高生2人だけを残して、移動することは不安もあったが、その間に彼らが自分で考えて行動し、大きく成長していてすごく嬉しかった。

Day 5

 初日、2日目と順調だった販売だったが、順調だったがゆえにチーム内のすれ違いに気づかず、それがこの日に顕在化する。そこで、当初の予定ではこの日も朝、昼、夕と販売する予定だったが、販売は午前で切り上げ、午後はチームの方向性の認識を揃える時間に突如予定変更した。その日は、カンボジアに来てからこれまで何を感じて、これからどうしていきたいのかを話したが、グループの溝は埋まらなかった。

荷物を運んでくれたストリートチルドレンに卵焼きをプレゼント。

Day 6

 プノンペンでの販売最終日。ひとまず、午前は販売し、午後は4日間の振り返りを行った。結局、昨日の溝は埋まらず、夜、弥晨さん(主催者、メンター)を含めて話し合いを行った。誰も誰かを責めているわけではない。みんな続けたいと思っている。でも、ほんの少しのずれでグループが分裂した。

お世話になった楠川さんのお母さん

Day 7

 プノンペンからバスで6時間かけて、シェムリアップに移動。そして、アンコールワットへ。巨大な建造物に施された、細やかなデザインに感動した。当時の人々はどのように巨大な石をあの高さまで積み上げ、そして、どのように石にデザインを彫ったんだろう。当時の人々の信仰心凄まじい。

アンコールワット
僧侶と記念撮影

Day 8

 まず、販売戦略の立案から。プノンペンでの販売経験をシェムリアップでどう生かすか。どこで、いつ、どのように販売するかを話し合い、初日のうちに販売行動に移すことができたが、手ごたえはなかなか厳しい。観光地のシェムリアップと都市のプノンペンでは、住む人の国籍も所得層も、街の作りも全く違う。そのような状況で自チームだけで成果を出すのは厳しいと感じ、他グループと合同で販売することに決めた。

他チームと情報共有

Day 9

 タイガーモブチームとして、全4グループ全体でJAPAN FESと称して、店舗を構えることになり、私が全体チームの指揮を執ることになった。これまで5人規模で進めていたのが、一気に17人体制になり、使えるリソースも4倍になった。一人一人本当に素晴らしい個性を持っているし、強みを伸ばし、弱みを補える仲間たちだった。しかし、その一方で、それまで独自のやり方で動いてきた人たちであり、一人一人の趣向、価値観は全く異なるため、共通のビジョンを一人一人に浸透させ、全体の統制を保つことは難しかった。その日の実践後、全員で一日を振り返り、「今の自分たちは文化祭状態になってはいないだろうか。自分たちは何のためにカンボジアに来たのか。より深い学びを得て、帰るために何が必要か」を改めて考えた。

シェムリアップでも売れた!みんなで協力。

Day 10

 「カンボジア、楽しかった!」で終わらせないためにこの日は販売実践をせず、これまでの活動を振り返った。全員の合意の上で決まったことであり、誰も販売しないことに対して不満を言う人はいなかった。カンボジア初日の時から全員顔つきが全く違う。それぞれの成長を大きく感じられ、仲間として誇らしく、そして、嬉しかった。

カンボジア、最後の晩餐。

10日間で得られた学び、気づき

ストレッチゾーン
 人間には、コンフォートゾーン、ストレッチゾーン、パニックゾーンがある。ストレッチゾーンに居続けることで、私たちは成長し続けることができる。
リフレクションの重要性
 この10日間、自分たちで販売場所、時間、方法を0から考え、仮説検証のサイクルを常に回し続けた。失敗も成功も丁寧に振り返ることで、何が原因で売れて、売れなかったのかが分かり、経験から教訓や知恵を得ることができた。これは、マーケティングに限ったことではなく、人生においても同じ。自分の行動、一日に対して、必ずリフレクションを行うことで、すべての現象に意味を持たせ、そこから学びを得ることができると実感した。
目標の重要性
 常に目的、whyを意識して行動することは自分の行動に一貫性を生み、迷いをなくす。そして、自分の行動の評価軸となる。特にチームで動く時にそれが重要となり、組織の目標やビジョンを設定し、一人一人に浸透させることで、個々はやりがいを抱き、個性を発揮して、主体的に行動するようになる。
「押し付け」と「すり合わせ」
 
「浸透」とは全員の賛同だけでは不十分であり、そして「押し付け」でもない。一人ひとりと対話し、価値観とのすり合わせを行うことで、初めて相手は理解できる。
リーダーシップ
 リーダーシップには2種類ある。自分で引っ張るリーダーと個を活かすリーダー。自分は後者でありたい。そのために必要なものは明確なビジョンと個を重んじる姿勢。
「命令」と「抜擢」
 期待をかけて、言わせて、やらせる。これで個人は勝手に伸びる。
自分の物差しで測らない
 自分が見たもの、言ったこと、感じたことは主観に過ぎない。同じものを見て、同じ解釈をするとは限らないことを前提に置く。
5W1H
 
人と話すとき、議論をするときは5W1Hを丁寧に扱う。そこを疎かにすると、自分たちの気づかないうちにすれ違いが生まれる。
適材適所
 人は好きなこと、やりたいことに最も力を発揮する。その人の個性、強みをよく観察し、その人に合った役割を配置することで、組織は動く。
傾聴
 目を見る、相槌を打つ、うなずく、メモを取る、自分の表情。聴くという一つをとってもにもいろんな聴き方がある。どんな聴き方をするかによって、相手から引き出される言葉が違う。
「思い込み」を活用する
 人間、できると思ったことはできる。


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